プロフィール

GOMA28

Author:GOMA28
絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
基本的に、日々思うことを綴ってゆきます。悪しからず。
必ずパソコン画面(PCビュー)でご覧ください。


*当サイトはリンクフリーです。

PICKUP
レッド・ファミリー
キューブ CUBE
ドント・ハングアップ
キャット・ピープル
パラサイト 半地下の家族 -2
パラサイト 半地下の家族 -1
ヘンリー・ムーア~彫刻に見る普遍性
911爆破の証拠―専門家は語る 前
9/11:爆破の証拠 - 専門家は語る 後
アポロ 11
シャチ~優しい殺し屋~
ハイヒール
お嬢さん
とうもろこしの島
セールスマン
トラピスト1に寄せて
「労働疎外より人間疎外」によせて
カッシーニ グランドフィナーレ
カッシーニ グランドフィナーレⅡ
シチズンフォー  スノーデンの暴露
スノーデン
レヴェナント: 蘇えりし者
透明な身体性
森羅万象を描く デューラーから柄澤齊へ
ヴィデオドローム2 ~イスラム国 ~アノニマス
見えない重力を描く Ⅱ
美の翳りに寄せて
写真についてーⅡ
午前零時の奇蹟(シュル・レアリスム覚醒の時間)
パーフェクト・デイ ~ルーリード ~ローリー・アンダーソン ~スーザン・ボイル
未来派の画家~ウンベルト・ボッチョーニ
Balthus ~ バルテュス展行ってまいりました。
「ゴールドベルグ変奏曲」 バッハ  ~グールド ~P・オトゥール ~ニーチェ
大昔のスケッチ(詩画集のための試作)
すでに世界は終わっていたのか ~ ヒエロニムス・ボスその1
スヌーズレン002
情報リテラシー  ~華氏911 ~不都合な真実
南伸坊「歴史上の本人」
プラトーン
アリータ
カレンダー
03 | 2021/04 | 05
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

いわさき ちひろ

chihiro002.jpg

NHKの日曜美術館で「“夢のようなあまさ” をこえて」と言う、”いわさきちひろ”の特集を観た。
(実は大分前の録画なのだが、直ぐに観ることをしなかった。触手が動かなかったせいだ)。

彼女は自分の絵を評して「わたしの描く子供には夢のようなあまさがただようのです」と言っている。
30年で9000点の絵を描く。
黒柳徹子さんが”ちひろ美術館”の館長であることも知った。
読んだことはないが、「窓際のとっとちゃん」という本の表紙もちひろの絵であったようだ。
その絵と本のイメージがピッタリ合っていて、それを壊したくない為に映画・ミュージカル化の誘いを全て断って来たという。
黒柳さんにとって余程大事な絵であり絵描きなのだと痛感する。


番組では、世間的によく知られる”絵本、挿絵画家”としてではなく、独立した絵を描く画家としてのいわさきちひろを強調していた。
絵本にあってもストーリーとはまた異なる時間を味わえる絵の技法世界がクローズアップされている。

まず、「描かないで、感じさせる」(ちば てつや)彼女ならではの作風。
確かに余白は彼女の絵の特徴であるが、よく見るとかなり過激な余白であることに気づく。
相当な意志(造形的で思想的な意思)で作らないと出来ない余白だ。
その余白が、子供~母子の心情や周囲の雰囲気、季節の光を雄弁に語っている。
そして存在の孤独や不安も、、、。

chihiro001.jpg

番組では彼女の変貌も紹介されている。
丸木俊(原爆の絵を描き続けた画家)に影響を受け、力強い労働者の鉛筆デッサンを描いていたことも知った。
これは黒柳館長の件よりも有益な情報であった(これだけでも見た甲斐がある)。
少女期に影響を受けたものに「コドモノクニ」という雑誌があり、その定型的な子供の姿が少なからず彼女の絵の元型を成していることも確認できた。
本格的に画家を目指し、油彩画、墨を活かした技法、パステル画、、、そして水彩と画材を広げてゆく。
彼女は画材を挑戦的に使った。
確かに使う画材によって描き方は制限を受ける。
それを自分の絵に創造的に活かす。
この方向性であろう。

しかし描く主題は一貫していた。この母子関係とそこから取り出された子供だけの絵。
人の一生に深く作用する愛着関係が昨今問題視されているが、ここで描かれる母子に関しては子供は母に全幅の信頼を寄せている事が分かる。
「スイカの種」(ちばてつや)のような目が満ち足りた表情を雄弁に語る。
しかし晩年の絵には、しっかり瞳が描き分けられている(通常の眼である)。


「薄い絵だ」という指摘には、ハッとさせられた。
決して平面的なのではない。
滲み、暈しによって生成される僅かな振幅を捉えた薄い空間。
稲垣足穂の「薄い街」というのを、読んでずっと気になっていた世界だ。
とてもアーティフィシャルで物理的でもある。
水彩、パステルと水を浸した筆でのみ可能となる煌めく時間をたたえている。
(これは油彩では難しい。構築的になり辻褄合わせとなって煩い絵になるはず)。
つまり、絵本であってもそのストーリーとはまた異なる揺らめきの世界が流れるのだ。
深みのある絵本となろう、、、。

chihiro003.jpg

最後のふたりの子供のいる海の絵には驚愕した。
マックス・エルンストたちのシュルレアリスムの画家は偶然出来た形から現実の何かの形を発見し取り出すことで作品化するが、彼女は自らの技によって技法の偶然性をコントロールして絵の主題に饒舌に嵌め込む。
とても豊かなイメージで海の表情を創り出すのだが、それを意識的に筆などで描けるかと言えばまず無理である。
しかし確かに偶然に生じる滲み技法を海なら海以外の何ものでもない形体に生成・昇華している。

いわさきちひろのそれは、彼女独自の技である。
偶然を操るのだ。
ジョン・ケージのいうチャンスオ・ペレーションでもある。
この点においては、彼女の右に出る者はいないかも、、、。
更にそれに加えて、晩年の横を向いた、こちらからそのこころを凝視せざるを得ない子どもの顔。
ベトナム戦争を題材に描いた絵本の子供のこちらから瞳を逸らせた力強い目。
わたしたちが思わず覗き込むしかない意志を秘めたその目。

chihiro004.jpg

ここに到達点~神髄があるのかも知れない。
“夢のようなあまさ” を超えて、確かな強度(差異)をもつ絵となっていた。


関連記事

COMMENT

No title

いわさきちひろ美術館は、私の実家から母の実家への道の途中にあり
子供の頃毎週前を通っていました。
そのせいか分かりませんが(そのせいではないですね。(笑))
母がいわさきちひろの絵が好きで
私も幼少の頃より彼女の絵をよく目にしていました。
優しい可愛い絵だとも思うのですが
子供の頃の私はどの絵にも物悲しさを感じてしまい
あまり好きでなかった記憶があります。
今も…散っていく桜を見るような気持ちになります。

確かに、淋しさを感じます、、、

> 私も幼少の頃より彼女の絵をよく目にしていました。

その頃も、黒柳館長でしたか?その場に居合わせたら、物凄い勢いで解説されそうな気がします(爆。
冗談です、、、どうも。
わたしは、ほとんど見た経験がありません。
(知らずのうちに避けてきた感があります)。

> 優しい可愛い絵だとも思うのですが
> 子供の頃の私はどの絵にも物悲しさを感じてしまい
> あまり好きでなかった記憶があります。

旧満州で劣悪な環境下に幼いお弟子たちを残し、自分だけ帰国してしまったことからくる慚愧の念から子どもを描き続けたとしたなら、それはレクイエムでもありましょう。哀しい祈りの気持ちで描いていたのかも知れません。
わたしも想念のなかに浮かぶ果敢ない画像に見えます。
彼女の絵は、力強い筆致で描いた労働者のデッサンでも、汗臭さや泥臭さとは無縁な独特なものを感じます。
そういう資質でもあるような、、、。

> 今も…散っていく桜を見るような気持ちになります。
そう、彼女特有の重力なのかも知れません。

また、是非お越しを、、、。ありがとうございます。

EDIT COMMENT

非公開コメント

検索フォーム
ブロとも申請フォーム
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

SF PickUp