ユトリロ~ロートレック

今年の冬は例年よりも寒く、雪も大分降ると言われています。
雪の絵と言えばブリューゲルをまず想いつくのですが、確かに空気はキリッと冷え、寒むそうですが、そこにいる鳥や犬や狩人たちはみな活き活きしていて元気そうなこと。
空も澄みきっていて、深呼吸すると、とても気持ちがよいです。
みな一仕事終えれば家族の待つ家へと帰ってゆきます。
鳥も一羽、また一羽と。
街頭に雪が残る中、人影もほとんど絶え、冷え冷えした心を持てあまし立ち尽くす画家のほうにむしろ想像を向けてしまう画家にユトリロがいます。
ユトリロの眼前の建物はみな重い扉をしっかり閉めきっており、誰一人として彼を迎え入れようとはしません。
中にいる人々は暖房の熱に包まれ楽しく食事をしているのでしょう。
子供たちに絵本を読み聞かせているのでしょう。
あそこの、ムーランルージュでは、きっとロートレックが闊達な筆さばきで踊り子を描きあげ、人々の賞賛を浴びているのかも知れません。
酒を呑んで。
ユトリロも今街頭で凍えながらキツイ酒をグッと呑み干しました。
同じものは酒だけです。
いや、孤独も?
確かに。
孤独でない画家なんているものか?
どこかで"Happy Birthday"を祝っています。そのイントロでルーリードの“ベルリン”の通底する、キンと冷えた夜がきます。よく晴れた夜空にグラスの甲高い音が響き合い、今日はことのほか華々しく淋しいパーティが始まります。
シュザンヌ・バラドンは帰って来ません。
そもそも今日は何処の家にいるのかも分かりません。
でも彼女はユトリロに絵だけは教えてくれました。
彼にとって、だからこそそれは、何よりも自然な、呼吸よりも身近な生きる術でした。
ユトリロはただ描くだけです。その間生きながらえます。
何も考えず、何も感じず。
もちろん孤独等というナイーブなロマン派的概念などこれっぽっちも持ち合わせてはいません。
そんな心の余裕もありません。
ただ乾くのです。
とてつもなく乾くのです。
それは水などでは到底満たされない。
とりあえずほんのひと時、彼を満たすのはアルコールでした。
キャバレーの中でも、ロートレックが一本呑み干しました。
そして、二人とも
次の絵を描きはじめます。
![lautrec7[1]2](https://blog-imgs-59-origin.fc2.com/e/r/i/erishiho/20131227022215c06s.jpg)

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