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質屋

The Pawnbroker001

The Pawnbroker
1964年
アメリカ

シドニー・ルメット監督
デヴィッド・フリードキン、モートン・ファイン脚本
エドワード・ルイス・ウォーラント原作

クインシー・ジョーンズ音楽

ロッド・スタイガー 、、、ソル・ナザーマン(元ポーランドの大学教授、質屋経営者)
ジェラルディン・フィッツジェラルド 、、、マリリン・バーチフィールド( 社会福祉事業家)
ブロック・ピータース 、、、ロドリゲス (ソルの質屋のスポンサー、スラム街のボス)
ジェイミー・サンチェス 、、、ヘズス・オルティス(ソルの質屋の店員)
セルマ・オリヴァー 、、、メイベル(ヘズスの恋人、娼婦)


ソルは金は光の次に絶対的なものだ、と言い放つ。
「わたしは神、芸術、科学、新聞、政治、哲学を一切信じない」
それらは、ホロコーストからわれわれを救うことが出来なかった、ということか。
最愛の妻と二人の子供を失い大学教授の職も追われ、彼はニューヨークのスラム街で質屋を営む。
自分から他者との間に関係を築くような事は全くなく、自分の殻に引き籠っている。
アウシュビッツのフラッシュバックに感情は乱れ、生き残ってしまったことに対する罪悪感に蝕まれてはいる。
(亡き友の妻とその父との関係や経済的援助を続けていることもあり)。
彼自身、亡き妻の妹家族と取り敢えず一緒に暮らしており、経済的には問題ない。

息苦しい程に貧しい人たちの吐息が充満する硬質な夜の質屋。
ニューヨークのスラム街の一角の小さな救命ボート。
だが、彼は誰にも心を開かず、自分のこころに踏み込んで来る者は例外なく排除する。
ヘズスが腕の認識番号のことが何であるか知らず、秘密結社か何かに入っているのかと尋ねる。
ソルはそれに答えて言う。「水の上を歩ける者しか入れない」

物でありながら物ではないモノ~メタレベルの物=価値の秤である金、に対する関わり方でその人間の人生も決まるところはある。
カフカの小説に出て来る会計士みたいな感じに思えたが、、、。
ドライであるようで意外にナイーブな人でもあった。
娼婦の館で稼いだ金の援助はいらないと断りにボスに逢いに行ったりする。
「腐敗と恐怖の生んだ金」であるからと。金の金であることを忘れている。
彼はいとも容易くロドリゲスにねじ伏せられる。「君の懐に入る金は全て出所は俺だ。売春宿の収益は大きい。ボーリング場、駐車場、貸家からも。その事実を知らなかったとは言わせない」「知らなかった、、、」で泣き崩れる。

葬り去っていた記憶が堰が切れたように押し寄せてきて、ソルは恐怖に慄くようになる。
(わたしもあるきっかけから、こんな状況を経験した)。
彼はあっさりと誘いを断ったマリリンのアパートを自ら訪ねてゆく。
自分でも何故だか分からない。これまでの固い自我が崩れてきたようだ。
しかし、彼の絶望は深く、彼女の差し向ける手に触れることもなくそこを立ち去ってしまう。
それからは、商売にも(お金に対しても)執着が無くなり自暴自棄になる。


彼は基本的に周囲の人々から慕われている。
特に店員ヘススからは神のように尊敬されている。
スラム街のボス、ロドリゲスからもプロフェッサーと呼ばれ一目置かれている。
マリリンからは、明らかに思慕の情が窺える。

The Pawnbroker003

彼と話したくて質屋に来る人も少なくない。
ほとんど金にならない物を持ってくる。
(恐らく彼らには何も残っていないのだ。それでも彼に逢いに来るのは何故か、、、)。

だが彼にはもうこの仕事に意味や価値は無くなっていた。
彼は再度、ボスに逆らい、手下から暴力を受ける。
自分の記憶~本当の自分を封印するものであった商売~金、それは決して彼にとって理想でも希望でも心地よくもなかったが、ここで完全にどうでもよい無価値なものとして崩壊する。自己欺瞞を止めると同時に彼に死を意識させる(死を半ば決意する)。


スローモーションとフラッシュバックによる封じ込めたはずの記憶の溢出。
クインシー・ジョーンズの音楽がストリングスと混じって演出を超えている。


最後、ソルを師匠と仰ぐ店員ヘズスが彼を凶弾から身を呈して守り、倒れる。
死ぬ間際にヘススは、「あなたを撃つなと言ったんだ、あなたを傷つけてはならない」と言い残し息を引き取る。
彼はヘズスの遺体に呆然として近づき縋って慟哭するのだが、実際に声は出てこない。
これまで彼に関わって来た(彼の質屋に救いを求めてやって来た)人々の顔がフラッシュバックされる。

だが、それらに応える瑞々しく迸る感情が彼には枯渇していた。


The Pawnbroker002

亡き親友の父が「お前は痛みを感じたか、血を流したか」と彼に病床で問うていた。そして、、、「ない」
「生き延びた代償は大きかったな。愛も情熱も憐みの情も失った、お前は生きる屍だ!」


ソルは手に長い針を刺し、血を流す。
その痛みで精神の均衡を辛うじて保つかのように、、、。
また生き残ってしまった。
生きる屍のように街に出てゆくソルの姿で終わる。


ロッド・スタイガーの前半の淡々とした客あしらひがとても面白かった。
この映画の生理的な感触がそこにある。
それに加えてクインシー・ジョーンズのジャズである。






名作だ。

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