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アメリカ アメリカ

AmericaAmerica002.jpg

America, America
1963年
アメリカ

エリア・カザン監督、脚本、原作、製作
マノス・ハジダキス音楽

スタティス・ヒアレリス、、、スタヴロス(ギリシャ人青年)
フランク・ウォルフ、、、バルタン(アルメニア人、スタヴロスの親友)
ハリー・デイヴィス、、、イザーク(スタヴロスの父)
グレゴリー・ロザキス、、、ホハネス(肺病のアルメニア人、スタヴロスの親友)
ルー・アントニオ、、、アブドゥル(悪質なトルコ人)
リンダ・マーシュ、、、トムナ(金持ちの娘)

エデンの東」のエリアカザンである。
赤狩りでのトラブルが尾を引く監督でもある。

彼が幼い頃に聞かされた話を基にした映画であるという。

トルコは20世紀初頭、国土に住むアルメニア人やギリシャ人を弾圧していた。
そんななかでアメリカに多大な幻想をもつ者も多かった。

この主人公も親友から得たアメリカの情報から大きな憧れを抱くようになり、それはアメリカへの移住という壮大な計画に膨らんでゆく。しかしその親友は政府への犯行の為、殺される。それがアメリカを実際に目指す彼のトリガーとなる。

とても人の好い性格で、いつも人懐こい微笑みを絶やさぬ青年であったが、アメリカへの脱出を企てた過酷極まりない旅路のなかで、人格も大きく変わってしまう。取り憑かれたような飢えた鋭い目つきの男と化してしまうのだ。

まさに家族の命運を背負い、全財産を抱えてコンスタンティノープルの叔父の事業に加わるところから始めようとした。
だが、叔父のところに辿り着くまでに、人がこれ程悪辣に冷酷になれるものか、と呆れるような酷い仕打ちに逢い、ほとんど裸同然に身ぐるみ剥がされてしまったのだ。

叔父の商売も予想と異なり細々としたもので、助けてもらうどころかまた搾取されそうになり、そこを飛び出してしまう。
手っ取り早い金策か、叔父は金持ちの家の見栄えの優れぬ娘との結婚を画策したのだ。
だが、港の荷運びの仕事ではその過酷さに見合う賃金など得ることも叶わず、アメリカへの渡航費など到底目途は立たない上に身体を壊すのも目に見えて来た。
しかも世間知らずのお人よしである為、娼婦に又しても貯めた金を全て盗まれてしまう。
更に仕事の良き相棒に反政府組織の集会に誘われて行った際に、警察に銃撃され相棒を含むほとんどが殺されるなか這う這うの体で逃げ出す。
意に反するが、計画の為、叔父の店に戻り、勧められるままに富豪の不憫な娘との結婚に踏み切る。

娘だけでなく富豪の父も彼を直ぐに気に入り、持参金も言われるままに用意し、将来の優雅で安定した生活を約束し、二人の豪華な新居までプレゼントしてくれた。
もし彼にアメリカという幻想が無く、単に裕福な生活が目的であれば、ここで達成とも言えよう。
彼自身も彼女とその家族をとても好ましく感じてはいた。
だが彼の場合、富だけでなく自由と解放を欲しているのだ。
その象徴こそが「アメリカ」なのだ。
鳥の雛みたいにアメリカが刷り込まれているのだ。
主人公にとってアメリカとは、どれだけ好条件を提示されてもそれが霞んでしまう程に光輝く場所であるに違いない。
常にアメリカの事ばかりに拘っている為、彼の呼び名も「アメリカ アメリカ」となった。

ただ、これまで須らく被害者の立場でいた彼であったが、ここでは反転してしまっている。
目的の為には手段を選ばない者たちに彼は泣かされ続けてきたが、彼を愛し息子同然に思っている富豪の父と彼を愛し慕うその娘を自分の目的の手段として見事に彼らを裏切っている。
流石に彼も良心を咎め彼女に本当の気持ちと計画を打ち明ける。
それでも彼女は「わたしがもっと美しければ(キャストは美人であり妙なメイクで対応している)とか、あなたの言うとおりにします。でも一年したら帰って来て。父にも黙っているから、、、待っています」などと健気に懇願する。
だが、彼は渡航費だけせしめて乗船する。「ぼくを信用するな」と言って、まさに自分を騙して来た悪人の場に自覚的に立っているのだ。
もう人相~人格も変わっている。

AmericaAmerica001.jpg

船に乗り込むところで、かつて彼が自分の靴を差し出したホハネスに邂逅する。
足を引き釣りながら徒歩で彼もまたアメリカを目指していたのだ。
但し、スタヴロスは渡航費用は払っているが、アメリカで就労する権利は取得していなかった。
ホハネスは靴磨きの就労者としての渡航である。
スタヴロスはここまで来て強制送還を言い渡されてしまう。
しかし、ホハネスは肺病の悪化もあり先がない事を感じており、かつての恩に報いるかのように海に飛び込んで自分のIDをスタヴロスに譲り渡すのだった。ここでもスタヴロスは親友を犠牲にしたと謂えよう。

スタヴロスは晴れ晴れした顔で、税関でホハネスと名乗り、更にアメリカ人としての新たな名前を付けてもらい意気揚々と街に出てゆく。
「ここには大きなチャンスがある!」
彼が新天地アメリカで、快活に靴磨きの仕事に就いているシーンで終わる。
ギラギラした表情がとても際立った。


その後、彼は父親以外の家族全員をアメリカに呼び寄せたという。
(敬愛する父は恐らく間に合わなかったのだろう)。
人格の変わった長男を家族はどう思ったことか、、、随分頼もしくなったと感じたのだろうか、、、。


最後の監督自身による製作スタッフとキャストの紹介が入り、ほぼみんなが移民ではないか、と思った。
その辺を強調する意味が監督にはあったのだ。
(監督もトルコ生まれのギリシャ人でアメリカに帰化している)。


抑圧や迫害を受けた者がそれに対抗する姿とその変貌がとても興味深く描かれた大作であると謂えよう。




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