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自転車泥棒

Ladri di Biciclette

Ladri di Biciclette
1948年
イタリア

ヴィットリオ・デ・シーカ監督・脚本
チェーザレ・ザヴァッティーニ原案・脚色
ルイジ・バルトリーニ原作
アレッサンドロ・チコニーニ音楽
カルロ・モンテュオリ撮影

ランベルト・マジョラーニ、、、アントニオ・リッチ(労働者)
エンツォ・スタヨーラ、、、ブルーノ・リッチ(息子)
リアネーラ・カレル、、、マリア・リッチ(妻)
ジーノ・サルタマレンダ、、、バイオッコ(アントニオの友人)


イタリアの敗戦の痛手による貧窮を極めた事態という限定を超えて、恐らく人の世の続く限りいつどこにでも起き得る噺である。
経済状態がどうであろうと、人が個人として追い詰められる要因はいくらでもある。
(下部構造と謂うより寧ろ上部構造において)。

その時、共同体はどれだけ機能するのか、逆に更に追い詰めるシステムとなっていないか。
そして他者~隣人がどれだけ、気の利いた関わりを示してくれるか、、、。
これが幻想(思想)領域においての事であれば、とても期待できない。
象徴的に謂っても自転車を盗んで警察に捕まるか、その前に精神を病んで病院に入院するかであろう。
そういった類の収容所に落ち着く(誘導される)のが関の山だ。
問題は何一つ変わらないままで。いや問題化すらせずに。
平板な空間が保たれるはずだ。

突然、一家を支える仕事に必須のアイテムである何かを盗まれる。
今で謂えば会社の秘密情報の漏洩とか、、、。
この映画ではなけなしの自転車である。
どれ程大事な自転車であるか。
大半の尺を父と学校にも行けない6歳の息子が、二人して自転車(叉はその解体された部品)をひたすら探し歩くものである。
雨の中も必死になって探す。これは観ている方も辛くなる。だが、自転車一つ探し周るだけでこれだけスリリングな流れを作って行けるのも、リアリスティック(ドキュメンタリー調)な描写であるからだ。
役者も皆、素人であるという。そうした作品の先駈けでもあったはず。

この映画では、戦後の混乱期という事もあり、その法的に半ば放置された空間に、市井の人々の協力関係が良くも悪くもせり出してくる。実際、主人公の人の好い男は、自転車を盗まれ警察に訴え出ても、占い師に縋っても、まるで相手にされない。
反面、仲間の清掃員の男がかなり親身になって一緒に探してくれる。こういうところは、日本で謂えば下町の人情に当たるものか。
しかし盗人の方もチームプレイで、自転車が盗まれたときにそれを追いかけるふりをしてワザと違う人間を追わせて犯人を逃がすことも手際よく行う。
自転車を盗んだ若者を運よく特定したかと思ったら、その男を庇う界隈の人相の悪い連中に絡まれ警官も手は出せない。
この盗人を匿う集団は、そのまま行くとイタリアマフィアとなり、「ゴッドファーザー」のような組織になってゆくものか。
混乱期の貧困を乗り切ろうとする、仲間意識の表れが様々な階層に窺える。

このような時期であっても当たり前だが富裕層は存在する。
彼ら親子が捨て場つけに入った高級レストランで、普通に豪華な食事をしている人々もいる。
二人の父子は、そこで自分たちが注文できる範囲のものを食べるが、少年の近くで同年齢の気取った子が食べている食事に比べて身なり共々貧しさは歴然としている。
このような裕福な層には入れず、しかしギャング~マフィアにもなれない。
貧困と闘いながら真っ当に暮らすことの困難さが浮き彫りとなって行く。

最後に自転車泥棒の犯人を見つけ出しながら証拠もなく自転車も見つからず、盗人の仲間からは罵倒され、息子と項垂れて引き返す途上で、サッカーの試合に興じる人々の喧騒に出くわす。
そのとき、父の視野に一台の自転車が立てかけられている光景が入りこむ。
ここで彼は混乱を極める。
もう全く万策が尽き追い詰められた父は、息子に先に家に帰る様に金を握らせ、咄嗟にその自転車を奪ってしまう。
カタストロフである。充分予感していてもショッキングである。充分に引いたカメラにより息子の視線で見てしまっている為、尚更のこと。
この時も近くの人間が「自転車泥棒!」と叫ぶ持ち主の声に反応し皆で父の乗る自転車を追う。
そして父はあえなく捕まり(自分から諦めたのか)人々に叱責され殴られ警察に突き出されそうになる。
だが、その父の一部始終をバスに乗らずに見ていた少年の瞳の涙に、その持ち主は彼を許し解放することにした。

父子が手を握り二人で泣きながら歩いてゆくところで終わる。
リアリズムの神髄を観た。





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