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ジェーン・カンピオン短編集

A GIRLS OWN STORY

1984年
オーストラリア

”PEEL”
”PASSIONLESS MOMENT”
”A GIRL'S OWN STORY”

ジェーン・カンピオン監督・脚本・製作・撮影


ジェーン・カンピオンの初期短編集である。

学生時代の作品というから確かに初期であろう。
タルコフスキーの「ローラーとバイオリン」が大学の卒業制作という事に圧倒されたが、、、
何よりタルコフスキーが初めからタルコフスキーであったことの驚きが大きかった。
これらが「ピアノレッスン」に繋がる作品かどうか、何とも言えないが、とてもこそばゆい面白さをもった作品集である。
勿論、センス(ユーモアのセンスを含む)や着眼点はとても鋭く感じるが。


”PEEL”(オレンジの皮)は赤毛の頑固者パイ一家のトリオの肖像である(笑。
車が遅れていることに妹が不機嫌となりしきりに文句を言う、運転手の兄は妹のその様子に苛立ち、彼の息子は何故かずっとむくれていてミカンの皮を窓から道路に投げ捨てている。
車のなかは不穏な空気が充満してくる。
兄はついに怒り息子を車から降ろし、投げ捨てた全ての皮を拾い集めて来るように言い渡す。
暫く放って置いてから息子を見つけに戻ると、皮を拾えるだけ拾って座り込んでいた。
兄は息子を肩車して車のところまで戻って来るが、その時妹は、、、。
もう時間の遅れも限界を破っており、怒りを通り越した放心状態で、剥いたミカンを手にしている。
下には皮が捨ててあり、甥が皮を拾えと叔母に突っかかる(爆。
突然、最後に3人の(行ってしまった)目が大映しになり、急いでいたはずなのに車は止まったきりで、何故か息子が車の屋根の上で飛び撥ねている、、、。

~ホラー映画であったことを知る。
(家でもどうしようもないホラー域に追い込まれることは、多い。他人事として苦笑したいところなのだが)。


”PASSIONLESS MOMENT”(無為の瞬間)は短い断片のオムニバスである。
散文詩的な日常の情景の一齣が切り出されたもの。
作為を感じさせない一角~細部が妙に夢の欠片にも思える。

わたしは、日曜日に6枚のワイシャツにアイロンをかけるエドのエピソードが妙に印象に残った。
ビールを呑みながら、ラグビーの試合で活躍した頃を思い浮かべながらシャツにアイロンを1枚1枚かけてゆく。
ひと休憩しているうちに5缶空けてしまう。もうラグビーなど遠い昔のビール腹だ。
それだけの光景なのだが、、、。

ジーンズを洗いながら昔流行ったモンキーズのテーマを唄う男も良い。
「頑張れスリーピージーンズ!スリーピージーンズを洗おう。」
唄いながらハタと気づく。こんな歌詞だっけ?と。こんな歌詞ある訳ないだろうと気付く。
でも気にしないで今日も唄ってしまう。
これも分かる。自分も結構いい加減な歌を唄ってきた気がする(笑。

それから、、、
「キツツキはいない」(これがこのオムニバスの邦題になっている)。
コンコンという木の鳴る音に「日本の拍子木を叩いている音かしら」と思う主婦。
オーストラリアでふとそう感じるというのも、その女性手元を見ると花を活けている。日本流の華道であることで納得。
しかしまだ聞こえるその音が、キツツキの音にも受け取れて、外を観てみるとご近所さんが布団を叩いていただけであった。
布団を叩いた音にしてはちょっと、、、と訝りながらも、オーストラリアにキツツキはいないわね、という日本文化に造詣の深い婦人の御話。わたしには、拍子木を叩いている音にしか聴こえないが。

「スコッティのデザインは世界一」は、VHSジャケット写真につかわれているもの。
「無数の瞬間がある。個々の瞬間は、はかなく 生まれたと同時に消えていく」
女の子が何やらモノポリーの札をスコッティの箱に乗せたりしながらちょっと哲学的な物思いに耽る。
(うちの娘も折り紙などで、黙々と不可思議なことに何やら専念しているのを時折見かける)。

「焦点距離」は男同士のカップル登場。男が相手を睨み何やら(浮気に)腹を立てているようだが、睨まれている方は意に介さないで淡々としている。
何故、2つの物に同時に焦点が結ばないのか、と腹を立てている恋人そっちのけで焦点距離の説明図を頭の中に想いうかべている。
そもそも最初からこの2人、カップル不可能だろう、と思うのだが(笑。

耳鳴りを聴きながら寝転んでいて、「綿ほこりは天使だ」と母親が言っていたことを想いうかべる。
そして、そろそろ結婚しようかな~と迷っている男の噺。
この赤の他人の全くどうでもよい想いに何故か郷愁を覚えてしまう。
別に共感したい気など微塵もないにも関わらず、、、。

その他にも、誰もが恐らく経験しているマメを持って早く家に入らないと爆発するなどという「独り想いこみゲーム」や挨拶されたと思い、愛想良い顔を向けたがどうやら思い違いだった噺とか、これは単なるあるある噺かというようなものまで、、、

このオムニバスは何度か観たくなる微妙な味がある。


”A GIRL'S OWN STORY”これは、構想を練り上げきっちり作られた短編映画と謂えよう。
演出が効果的だし、「間」と「モノ」~ガジェットの使い方がとてもしっくりしており安心して観てゆける。

思春期の少女の性への好奇心、肉親への反発、微妙な友達関係、妄想や恋愛感情、無防備で過激な行為、、など瑞々しくも危なっかしく綴られる。
ビートルズが好きで写真の切り抜きにキスしたり、テニスラケットをギターにしてトリオで”I Should Have Known Better”を唄ってみたり、、、。
キャストが生々しく素人臭い女子ばかりで、臨場感が半端ではない(爆。
特にヒロイン?女子の存在感、、、こういう娘、確かにいる。

高校の文化祭的な雰囲気で、身近な息遣いを感じる。
コミカルでキッチュでむず痒く、、、この時期の戸惑いや反撥、好奇心、憧れに充ちてゆく。
最後の歌が何とも言えない哀愁を湛える。この時期流行ったリリカルなサウンドだ(ビートルズの頃にはなかった)。
「寒いわ 寒いわ
ここはとても寒いわ
溶けてしまいたい」
生きづらさや不安を切々と訴えてはいる。
彼女らのヒリツキがダイレクトに感じられ、どこか爽やかな気分に浸れた。



「神々のたそがれ」を観た後では、生半可な大作を観る気にならない。
このような小品集でそよ風に吹かれたいと思った、、、。
そして、久々にビートルズを聴いてみた。やはりビートルズはビートルズである。


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