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ダンケルク

Dunkirk001.jpg

Dunkirk
イギリス、オランダ、フランス、アメリカ
2017年

クリストファー・ノーラン監督・脚本・製作

フィオン・ホワイトヘッド、、、 トミー(英国陸軍二等兵)
トム・グリン=カーニー、、、 ピーター(ミスター・ドーソンの息子)
ジャック・ロウデン、、、 コリンズ( 英国空軍。スピットファイアのパイロット)
ハリー・スタイルズ、、、 アレックス(英国陸軍「高地連隊」の二等兵)
アナイリン・バーナード、、、 ギブソン(トミーと行動を共にする無口な兵士)
ジェームズ・ダーシー、、、 ウィナント大佐(陸軍将校)
バリー・キオガン 、、、ジョージ(ミスター・ドーソンに同行する青年)
ケネス・ブラナー、、、 ボルトン中佐(海軍将校)
キリアン・マーフィ、、、 謎の英国兵(ミスター・ドーソンに救出された英国兵)
マーク・ライランス、、、 ミスター・ドーソン(小型船の船長。ピーターの父親)
トム・ハーディ、、、 ファリアー(英国空軍。スピットファイアのパイロット)


隊が殲滅してひとり残ったトミーとDunkirkの海岸にふと入ったとき、夢のなかに滑り込んだようだった。
のっけから、美しい。
未来派宣言のように。
または、キリコの白い絵のように。

Dunkirk005.png

Dunkirkの海岸が夢の入口だったのか、どんな場面~時間も美しいのだ。


1940年5月26日から6月4日第二次世界大戦初期に当たる。
フランスのダンケルク海岸でドイツ軍に包囲されたイギリス、ベルギー、カナダ、フランスから成る連合軍将兵の壮絶な撤退作戦を描く。「ダイナモ作戦」と呼ばれているものだ。

何と謂っても物語の構造が重層的にスリリングに構成されたものである。
独り生き残ったトミーが合流して敵から逃げ救援を待つ”陸”の一週間、ドーソンらの民間船が勇敢に将兵の救援に向かう”海”の一日、陸の兵士に容赦なく襲いかかるドイツ軍の戦闘機を迎撃するファリアーら”空”の一時間が同時に交錯して描かれる。
最後にそれらの時間系がひとつの空間”陸”の闘いへと収束して息を呑むほど静かなカタストロフを迎える。
一瞬も目の離せない、稠密な夢をみているかのようである。

スピットファイアの臨場感が凄い。
これ程かつて、戦闘機のコクピットからパイロットに寄り添い(パイロット視線ではない)対メッサーシュミット戦を堪能出来る対空戦映画があっただろうか!
その尺も長い。

ファリアーの操縦するスピットファイアが燃料計を壊されてしまい、燃料の残量を気にしながら戦うところが緊張感を高める。
何と相棒のコリンズから後どれくらいあるか遂次教えてもらいながら飛ぶのだ。
スピットファイアはガス欠がポイントの戦闘機であったらしい(ゼロ戦と違い長距離が飛べない)。
最後には、空中で燃料が切れ、プロペラの回らない状態で空を無音で風に乗って飛びつづける。
それまでの空中戦から静かな遊泳に切り替わって空を暫く漂い、白い砂浜にフワッと着地するまでが特別な時間系であった。

このような戦闘機というものは、軽量化をギリギリのところまで図られており、揚力によってかなり飛べる。
ゼロ戦しかり。グライダーみたいに飛べる。
こういった空中戦に寄り添っていると自然に非現実的ないや、超現実的な気分に浸ってしまう。

Dunkirk003.jpg

イギリス政府の呼びかけに応じ集まって来た民間人ボートや小型船も素晴らしい。
その心意気も良いが、ここでのドーソン船長が軍人よりもしっかりしているのが面白い。
そしてマニアだ。
「ロールスロイス製エンジンの至高の調べ」と、スピットファイアを背に感じ、目視する前に呟いている。
丸腰なのに勇敢で、的確な指示で海に投げ出されている兵士を次々に拾い上げて行く。
重油塗れで息も絶え絶えの男たちが藁をも縋る勢いで泳いで集まる。
(この時、皆下の船室には行きたがらない。魚雷が怖いのだ。外が常に見られるところにいたがるのだ)。

コリンズも海上に着水するも風防が開かず、コクピットで溺れかけているところを全速でその場に駆け付けて救い出している。
「メッサーシュミットは攻撃の際に急降下する。その時に舵をとる。わたしの指示に従え!」
ドーソン氏程の指示を小気味よく出している将校はいなかった。
このまま戦艦の指揮が執れそうな民間人だ。

将兵を救出し無事に国に帰す為、危険を顧みず一艘ずつ様々な小舟がダンケルクの埠頭に集まって来るところも感動的だ。
ボルトン中佐も彼らを笑顔で迎え、粋な挨拶を送る。

Dunkirk004.jpg

要するに、この映画その辺を見せたいがために撮っている部分が大きい。
監督の趣味で染め上げられている感がする。
細部に渡りとてもきめ細やかに描き出され質感に拘った映画であるが、それが模型世界のように想えるのだ。
確かにリアリズムである。
ヒーローの活躍する勇猛果敢な戦争娯楽ドラマと比べ、とてもリアルな内容であるが、妙に綺麗な描写によってアーティフィシャルな光を感じてしまう。

Dunkirk002.jpg

 
防波堤ですし詰めになっていたら、上から攻撃を受けたらおしまいではないか、、、。
船を待つのは分かるが、何で長時間に渡り、こんなところで固まっているのか。

ある意味、象徴的でもある。
このような状況に甘んじるしかない情勢というものが在る。
例えば現在で謂えばテロだ。
爆撃を受けて飛び散る若い兵士たちが人形のように映る。
このような脅威はわれわれの住む世界に地続きなのかも知れない。
(実際にイギリス、フランスの無差別テロである)。


基本、敵の何処かを攻め落とすとかではなく、ただ撤退するだけであるが、それが困難を極める奇跡的な作戦であったようだ。
その分、胡散臭いヒーローもおらず、敢えて言えば空を舞うスピットファイアと海を横切る小さな民間船の活躍で若者たちが国に戻って行く、虚しくも晴れやかな場面に終わる、、、。

わたしにとっては夢から覚めるような奇妙な映画経験でもあった。


ジャンギャバン似のボルトン中佐(ケネス・ブラナー)とミスター・ドーソン(マーク・ライランス)が実に渋くて良い味を醸していた。






そろそろ所謂、SF映画が観たくなってきた(笑。

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