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ムーンライト

Moonlight001.jpg

Moonlight
2016年
アメリカ

バリー・ジェンキンス監督・脚本
タレル・アルヴィン・マクレイニー"In Moonlight Black Boys Look Blue"原案
ブラッド・ピット製作総指揮


アレックス・ヒバート、、、子供シャロン
アシュトン・サンダース、、、青年期シャロン
トレヴァンテ・ローズ、、、大人シャロン

ジェイデン・パイナー、、、子供ケヴィン
ジャレル・ジェローム、、、青年期ケヴィン
アンドレ・ホランド、、、大人ケヴィン

ナオミ・ハリス、、、ポーラ(シャロンの母、薬物依存)
ジャネール・モネイ、、、テレサ(フアンの彼女、シャロンの擁護者)
マハーシャラ・アリ、、、フアン(子供期シャロンの擁護者)


キャスト全員が黒人である。
監督もそう。
3章で構成され、主人公たちも大きく年齢が変わってゆく。

しかし彼らには一貫した流れ、ひとつ筋が通っていて変化していても彼と分かる。
特に成人したシャロンは筋骨隆々で金歯まで嵌め一見フアンかと思う程の精悍さだが、幼い頃の彼らしさ~そのレイヤーが容易に重なって見えるところがある。
その何とも言えないアイデンティティの保持が凄い。

ジャンキーのたまり場の街で彼らは育つ。
黒人同士でも当然、差別やいじめは存在するだろう。
シャロンは薬物中毒の保護能力のない母親に愛されもせず、歩き方が他人と違ったことでいじめのターゲットとなる。
さらに思春期になってからも体が華奢で、リトルとあだ名でその階層に嵌め込まれていたと言えよう。
自分の外に出ようにも性的マイノリティーでもあり(であることに気付き)、内向は深まり、孤立と孤独は増すばかりであった。
ほとんどいつも、無口でうつむいて独りでいる。
とてもひりつく。神経だけは過敏となりひりつく。
まるでルー・リードの歌詞のように、、、。

Moonlight002.jpg

マイアミという舞台のせいもあるのか、、、
かなりコントラストの強く色相も彩度の高いものとなっている。
カメラワークも対象の周りをクルクル回るような撮り方や被写界深度の調整も含め、特徴的な視覚効果が気になった。
肌の色への拘りは特に感じる。
「月明かりの下では黒人は青く見えるんだ。」
音楽の(禁欲的な)入り方、使い方、センスも素晴らしいものであった。


魅惑的なキャストばかりであったが、、、とりわけ、、、
わたしにとってフアンはとても羨ましい存在であった。
シャロンがいじめっ子たちから逃げて隠れている時に、幸運にも彼に見出されたのだ。
「黒人は世界で初めて誕生した人類だ。」「おれはキューバから来た。」
彼は黒人であることに誇りを持っている。

彼はそれから度々、精一杯シャロンに接触して励まし、気持ちを解放させようとする。
食事も頻繁に作って食べさせる。この時期の食事は何より大切だ。
薬浸りの母と荒んだ生活に悩んでいるシャロンに対して「おれもお袋は嫌いだった。みんなそうさ、、、。」
共感的環境で硬直して内向したこころを打ち解けさせて行く。
しかし、彼自身薬の売人(元締め)で良い生活を送っていることに後ろめたさを感じており、陰りを纏っている。

或る日シャロンから「薬を売っているの?」「、、、ああ、そうだ。」「ママにも薬を売ってるの?」「(結果的にはそうなのだ)」と問われたときの彼の悲痛な表情が焼きつく。
もしかしたらフアンの生きている時の最後のシャロンとの会話であったのだろうか。
あれだけの関係を築いてきて、最後の肝心の記憶がこれでは、、、。
無念なんてものではなかろう。

幼い頃、あのような人が身近にいたらどれだけ自分がもっと自分らしく生きれただろうかと想う。
勿論、本来の自分などというフォーマットが予め在るはずもないが、まさにそう想えてしまう自分になることが出来る気がする。
あのような擁護者に憧れるのは、安易な欲望であろうか、、、。

ただ、あの海がたまらない、、、。
あの海のシーンは何度も見たい。
何故なら、自分がかつて経験したことではないのに、無性に懐かしく思えるシーンだからだ。
わたしもこの宇宙の無限の時間のどこかであんな風に浮かんでいたことがあったのだから、、、。

わたしのもっともこころ惹かれるシーンである。
「そのときがきたら将来の事は自分で決めろ。他の誰にも決めさせるな。」

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フアンの彼女テレサも彼が亡くなった後もシャロンを無条件で受け容れてくれる大変特別な人であり続けた。
「ここは愛とプライドの家よ。」母に邪険にされる度に何度もシャロンはその家に泊まりに行く。
うつむくシャロンを彼女は励ます。
この隠れ家が無ければ、到底やっていけなかっただろう。
母が客を連れ込み家を追い出されて、どこで寝るというのだ。


長じて、彼も結局、薬の売人となる。
フアンみたいに良い車を乗り回す身となっていた。
自分で選んだ道であったのだろうか?師匠に諭されたように自分で決定したことなのか。
わたしは、人が自分で何をか選択できるということ自体が疑わしい。
全て必然に流されてくるのでは、、、これはフアンも語っていたことだ。
矛盾するが彼の認識もそうであった。

そして、シャロンにとってもっとも特別な存在であったケヴィン。
唯一彼に触れ得た同世代の人間~男であった。
幼い子供のころから、二人は何故か馬が合う。対等に接しそれ以上の繋がりも持ってしまっていた、、、。
他は、恩師フアンだけか、、、。彼は本当の親代わりであった。テレサは優しい姉であったか。
(フアンは何故、死んだのだろう。葬式を上げたという事実以外彼については何も語られない)。

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他の人間~黒人は、シャロンを殴るか罵るだけだった。
勿論、母親もそのなかの1人だ。
無口なシャロンに対しケヴィンは詩的に接する。彼はシャロンをブラックとか呼んでいた。
「風を感じようとしてシンと静まりかえる。」
何気ない会話の文脈に自然とこんなことばが溶け込んでくる男だ。
やはり、、、ルー・リードだ。(ルー・リードが少しだけ入っている(笑)。

時が経ちシャロンはケヴィンの経営する店に招待される。
ケヴィンには息子がいて、裕福ではないが安らかな生活を手に入れていた。
シャロンはケヴィンのシェフ特製料理を振舞われる。

夜も更けてシャロンはケヴィンを自慢の車で家まで送ってゆく。
その月明かりの部屋で、思いつめた表情のシャロンの悲痛な独白の重みに、わたしは耐えられないものがあった。
(精神的にも生理的にも)。

単なる問題作を超える強度をもった作品だ。





巨額を投じればよい映画が出来るというものではないことを、見事に立証した映画である。
最近、SFXのド派手な大味の映画が多すぎる。

、、、それより、父親の役割の大切さを実感した。

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