次女と公園に

春休みで天気も良い。
3年生も終わる。
ちょうど姉妹の大喧嘩ついでに、次女が家出するというから車で送ろうということで、公園につれて来た。
長女と公園を訪れることはかなりあるが、次女と来るのは久しぶりであった。
勿論、ふたり一緒に連れ立って来ることが、一番多い。
しかし最近は友達との約束などあって、社交的な次女がわたしと来る機会が減ってきたことは確かだ。
(親離れの傾向である)。
長女はわたしと座るとき、ピッタリ横に腰を落とすが、次女は空間を開けて隣に座る。
だから水ボトルを渡すときにも、手を伸ばして差し出す。
この距離感がそのまま、わたしと次女の距離感である。
長女とは明らかに違う。
暫く、あちこちで買い食いをしてから、熱帯植物園のいつもわたしが読書する公園の噴水の見渡せる椅子に座る。
ちょっとコーヒーを飲むのに適したコーナーだ。
そこで、わたしのメモノートを差し出し、彼女に自分の考え、気持ち、興味などを書かせることにした。
するとすんなり集中して書き始めたのだが、その内容は彼女自身の創作した「怪奇譚」なのだ。
小さい文字で普段使い慣れないボールペンで書いたものだが、自分が友達との遊びの中で経験した「怖い噺」が元になる。
実体験という、昔あるところではない、地続き間~臨場感があり、幼いながら面白い噺であった。
(詰まり、不可思議な出来事ではあるが、特に恐怖感はない(笑)。
わたしがかなり興味を示すと、調子に乗って今度は一作目の二倍以上の分量の噺を書き込んでゆく。
これも実際、友達と経験した怖い噺だという。
「怒らないでね」というからどんな内容だろうと思って読んでみると、、、
ああ、こんなことして遊んでるのか、とちょっと強めの炭酸を飲んだときのような気分になる。
呪いとか御呪いとか都市伝説などから彼女らなりに収集した情報~結束をそれによって強めるというような秘密~から恐る恐る取り出したルールを元に、エレベーターのボタンを決まりに従い順に押していき、途中の階で、誰が入ってきたらどうだとか、女の子が最後に入って来ると自分が死ぬこともあるとか、ホントに死んでしまったら困るから、その前にこうしようなどと葛藤する話が拙いながら臨場感をもって伝わって来る。
結構、それなりに面白いのだ。
噺としては、最初に書いた柳田國男の集めた民間伝承みたいな風合いを感じるものの方がよかったが。プリミティブという面でだが(笑。
一話目の方が好きだというと不服そうであった。
彼女らが真剣に(かかりポゼッション的に)、マンション(10階以上でないとダメなそうだ)のエレベータの前で密談している様子が目に浮かぶ、、、。
学校の隣の公園に集合してから、公民館で遊んでいるとばかり思っていたのだが、そんなところを遊び場にしているとは今まで気付かなかった。
彼女ら固有の濃密な空間が恐らく街のあちこちに点在しているのかも知れない。
そう言えば、長女も秘密基地がどうのと喋っていたことがある。
異次元がまだ残っている場に暮らしている彼女らが羨ましい。
一度、等質空間・線状的時間にくくられてしまうとそこを超脱するには、何らかの理論・御呪いを必要とする。
それでじたばたしているところもある。
いやまさにそれで苦労しているのかも知れない。
まあ、それはともかく、喧嘩はいい加減にしてもらえないか、、、それが一番の頭痛の種である。

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