エル ELLE

ここ二日間で、4つ映画を観た。
(3つは愚作。一つは手に余る)。
絵はデッサンを少々。
後は読書。
買い物。
昼寝。
子どもの世話と家事。
歯医者、、、が大変キツイ。
そのせいで夜は早く寝る。
2日ブログを空けてしまったので、”エル ELLE”を観たことだけでも記しておきたい。
わたしにとってはもっとも難解な部類の映画であった。
何を書いたら良いか見当がつかない。
(しかし他に観た映画は、もうどうにも書きようのないとんでも作品ばかりであったから仕方ない)。
Elle
2016年
フランス、ベルギー、ドイツ
ポール・バーホーベン監督
デヴィッド・バーク脚本
フィリップ・ディジャン原作『Oh...』
イザベル・ユペール 、、、ミシェル・ルブラン(ゲーム会社社長)
ロラン・ラフィット 、、、パトリキ(カトリックの隣人)
ヴィルジニー・エフィラ 、、、レベッカ(パトリキの妻)
クリスチャン・ベルケル 、、、ロベール(ミシェルの浮気相手)
アンヌ・コンシニ 、、、アンナ(ミシェルの親友、ロベールの妻)
ジョナ・ブロケ 、、、ヴァンサン・ルブラン(ミシェルの自立できない息子)
ジュディット・マーレ 、、、アイリーン・ルブラン(ミシェルの母)
ポール・バーホーベン監督は、わたしにとっては、「スターシップ・トゥルーパーズ」であり「トータル・リコール」、「ロボコップ」、「インビジブル」である。
「氷の微笑」もこの人なのか、、、この線のものも観てみないと、、、。
この作品は、明らかに「氷の微笑」系の作品かと思われる。
「愛・アマチュア」、「ピアニスト」、「8人の女たち」、、、のイザベル・ユペール 主演であるが、「ピアニスト」に並ぶ圧倒的存在感であった(ここでも狂気すれすれの「女」の強靭さがみられる)。
いきなりレイプシーンから始まるが、全体の流れの中で何度も出てくる。
全編にわたり緊張感の濃く漂う映画だ。
警察を頼らず(やはり父親の件もあり)、自分で犯人を探って行く。
気色悪いメールや身辺に嫌がらせのような独特のメッセージを残してゆく犯人。
しかしイザベル・ユペール演じるミシェルは全くおろおろする様子など見せない。

彼女は強くしなやかで凛とした風情でゲーム制作会社社長をしている。
性の意識も自由奔放である。相手には決して依存しない(溺れない)主体として自由を保つ。
経済的にも恵まれているが、息子は精神的にも経済的にも自立しておらず、恋人にいいように振り回されている。
彼女の母親は見たところ、ミシェルに経済面では依存しており、若い恋人を何人か囲っているような様子である。
父親は、はっきりわからなかったがかつて少女を何人も殺害した連続殺人犯として服役中のようだ。
この父は後半に、彼女の面会日時を知った時点でシーツで首をつって自殺する。
ミシェルはこの父との関係が世に知れ渡っているようで~どうやら少女期に父と一緒に撮られた写真が新聞に掲載されたことがあったようで~カフェでいきなり見知らぬ夫人から残飯を、捨て台詞と共にぶっかけられたりしている。
息子は他の男との間に出来た子供を持つ彼女に翻弄されっぱなしで、母親は整形をしながらやりたい放題の生活ぶり、その両者をお金の上でも支えつつ自身も会社経営を成功させ広すぎる家に住んでいる。
不倫関係の男性もいる。親友の夫でややこしい関係だ。
そのような日常環境を生き抜いてきたことも彼女を強くした。
「恥辱なんかどうというものではない」
ピンと張ったプライドがカッコよく、何があろうが誰も決して彼女をへこますことなど出来ない。
というより、周囲が皆、結局は彼女に靡いてゆくしかない。
妥協せず自分をとことん貫く姿勢は、全く共感できる。
わたしもそう生きるつもりだ。

レイプ犯が最後に意外な人物だったことが判明するとかいうものが、よくある噺のパタンだと思うのだが、この映画ではあっさりそれが中盤で分かってしまう(犯人捜しの噺ではないことは端からはっきりしているが)、その犯人との実に奇妙な関係が続いてゆく。
その辺がよく分からない。そこを描くための映画のようだが、肝心なところでついてゆけない。
共感が困難な点においては、犯人についてもそうだ。
夫婦とも敬虔な?カトリックであるが、襲うというシチュエーションなしでは、何もできないという性癖~病を抱えている、、、一種のどうにもならない弱さ~衝動に支配され翻弄される男なのであろうが。
独特の内向は窺える。
そしてミシェル。女性の特異な心理なのか、、、被害者なのに加害者と以後、あんな風に接することが可能なのか、というところで生理的な違和感が付きまとう。
女の性ならでは、或いはミシェルの策略なのか、、、綯交ぜになったものを感じる。
まあ、レイプされた後、寿司の出前を頼み、ハマチもつけてねとスペシャルメニュー頼んで、帰って来たいい歳の失業息子と淡々と
寿司喰っている女性だ。特殊な余裕を感じる。
ちょっと普通の女性とも違うと思う。
だが、それがどのように最後のくだりに繋がって行くのか、今ひとつ分かりかねる。
勿論、相手を断固許していないことは、はっきりした。
(基本的に、彼女は父も母も息子も許してはいない)。
その、息子を使った報復、、、あれは計算なのか?ちょっとわたしの分かる(共感できる)範囲を超えていた。
女性でも、どうだろうか、、、。
彼女のような女性でないと、、、恐らく分かるまい。
イザベル・ユペール、、、凄いことは確かだが、、、。
こうした役が実にはまる女優だ。
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