アトラクション 制圧

ATTRACTION
2017年
フョードル・ボンダルチュク監督
イリーナ・スターシェンバウム、、、ユリア、ロシア軍の司令官の娘
アレクサンドル・ペトロフ、、、ヘイコン、異星人
オレグ・メンシコフ、、、ユリアの元カレ
わたしは、体調が今ひとつのときは、元気付けにSFを観ることもある。恋愛ものなどは見切れないが(爆。
実際、ここのところ最悪のコンディションなのだ。
何とか「気」から回復を試みる必要があった。
そこで散歩がてら、CD・DVDショップに買い物に行く。
「乃木坂46」のCDでも娘に買ってゆくかと思いつつ、SF映画のコーナーに。
もう「ブレードランナー2049」最新作も並んでいるではないか、、、と、棚を横へとゆっくり観てゆくと、ちょっと凄そうなパッケージが、目についた。
何と、そこには、ロシアのSF超大作とあり、またまた何と、「エリジウム」、「第9地区」の製作スタッフが関わっているなどと書いてあったため思わず舞い上がってしまった。(これだけで少しばかり元気になるのだ)。
タルコフスキーの「ソラリス」にブロムカンプの「第9地区」というふたつの大傑作が融合・昇華した作品だったら、もう映画史上に燦然と輝く金字塔だぞ。
しかもロシアはニコライ・ゴーゴリやアントン・チェーホフ、ドストエフスキー(余り読んでいないのだが)、トルストイはよく映画にもなってきた、、、の国である。
いやが上にも期待は膨らむ。
パッケージ写真は紛れもなく、「第9地区」スタッフでなければ作れない絵である。
これは。大袈裟な宣伝ではなく、ホントにSF超大作なのかも、、、。
と思ってしまい、危うく買うところだったが、(何故か嫌な予感がして)踏みとどまり、、、借りた。
予感は大当たり。
借りてもお金の惜しい大作であった、、、(哀。
何よこれ、、、、。
邦題に「制圧」と余計な文字をくっつけたのがどういう意味かさっぱりである。
ただ、間抜けなUFOが地球近傍で撃ち落とされてモスクワにビルにぶつかりながら墜落しただけなのだが。
水を貰って元気になり~修復して去って行くという物語だ。
何故か船が直るまで、異星人は街をぶらぶらしてモスクワヤンキー娘と恋に落ちてみたりする。
だが、元カレが焼きもちを焼いて、宇宙人から地球を守るぞ~と暴動を起こしたりする。
これどう見てもローカルな、彼女を巡るゴロツキ同士の喧嘩ではないか。

確かにVFXは、彼のスタッフの製作に間違いない、飛んでもなく高水準の完成度である。
重厚で威圧感のある独創的なUFOの造形と奇想天外な動きといい、エイリアンのスーツの細部に及ぶ精緻な出来栄えとその敏捷かつ特異な動作など、目を見張るものだ。
水の扱いも他のSFには見られないダイナミックで繊細な表情豊かな表現に驚かされる。
だが、これ程、表現技術とストーリー~内容・本が乖離したものも珍しい。
よくこんな映画作りに、そのスタッフたちが協力したものだ、、、。
はなしは、全く持って他愛もないと言うより、気分が悪くなるような筋書きなのだ。
有り触れても既視感すらもないくらい、陳腐で愚劣で趣味の悪い内容であった。
確かにチープでステレオタイプなシーンも寄せ集められてはいる。
(各国首脳のニュース演説をだしてみたり、やたらと演出面でも風呂敷を広げて大作めいた体裁にしようとする)。
コミカル青春ラブストーリーに徹すれば、このVFXなので奇想天外なギャグ映画として楽しめるはずだが、妙にシリアスな問題に能天気に関わってみたりする。永遠の命より愛を選ぶとか何とか、、、ギャグに昇華しないとどうなるのか?
ヒロインが何と言っても異様だ。どういう精神構造なのか分からないが、ひとりで何か勝手に納得して悦に入っている。
何か認識を得たようなのだが。
それで彼女が充足したのはよいが、こっちは置いてけぼりなのだ(と言うより最初からついてゆけないのだが)。
一体どういうつもりだ。
ここに決定的なのは、一人のブロムカンプがいないということだ。
それが決定的なのだ。
タルコフスキーはわたしの勝手な思い過ごし(思い入れ)であり、先に挙げた作家も別に関係ないと言えばそれまでだが。
決定的欠如があった。
決定的欠如の上に成り立ってしまった(製作してしまった)映画である。

ロシア藝術(文学)と「第9地区」の幻想に躓いた。
民衆は、これ程軽いのだ。みんなゴロツキ。異星人もゴロツキ(爆。
映画の登場人物のだれひとり共感できる者はいないし、ご都合主義と言うよりあり得ない話の運びだ。
流れは変だし、キャラクターの設定がどれも異星人みたいで、そもそも何で異星人が普通のロシア人なのか?
ゴダールの「アルファヴァル」みたいな映画であれば、自然に観れるのだが、これには説明が欲しい。
よく謂われる、低い文明にむやみに高い文明が接触するとその文明を破壊してしまう為、極力違和感のない姿で現れたとかいうものか。
自分の宇宙船のなかでは、元の姿に戻ってもよいのではないか、、、と思うのだが。

この高い文明社会から来たロシア人異星人も結局何しに地球近傍までわざわざやって来たのか分からないし、、、。
一体どういう監督なのか、、、。
それが最大の疑問となってきた。
VFXだけ途轍もない、空っぽ能天気映画という以外に評し様もないものに時間を費やしてしまった。
勿論、体調が上向きになるはずもない。
もう、、、明日から養生しないと、、、。
これからは、ロシア映画には警戒したい。
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