スイッチ・オフ

Into the Forest
2017年
カナダ
パトリシア・ロゼマ 監督
『森へ 少女ネルの日記』ジーン・ヘグランド 原作
エレン・ペイジ、、、ネル(ネットで受講している学生)、製作
エヴァン・レイチェル・ウッド、、、エヴァ(ネルの姉、ダンサー志望)
マックス・ミンゲラ、、、イーライ(ネルのボーイフレンド)
カラム・キース・レニー、、、ロバート(姉妹の父)
邦題が紛らわしい。ちょっとサスペンス色を感じてしまう。
”Into the Forest”を描く映画であったはずだ。
製作の方針でこうなったか、映画自体も肝心な部分が伝えられていない。
最後に家を燃やす必然性があの流れでは理解は困難だ。
家が黴臭くて子供の成育に良くないとかいうレベルのはなしではなかろう。
大事な部分の描写が雑だ。または抜けている。
この姉妹は森に住んでいるが、基本わたしが普通(平地)の街に住んでいるのと変わらぬ生活を送っていた。
それが発電所のダウンで送電されなくなったことで、電気文明以前の生活に引き戻される。
(こういう事態に見舞われることは、自然災害を一度受ければ誰にも可能性はある)。
スマフォもTVもパソコン(ネットワーク)も全て不通となり、太陽光コンバータも注文したものが届かない。
最初の頃は、危機感も無く、姉妹共々、ダンスのレッスンや宿題や志望校のことで頭をなやましている。
ろうそくとメトロノームでダンスの練習をし本を読む生活が始まる。
すぐにガソリンの供給も無くなり、人心は乱れ、不安と緊張感が漂ってくる。
街に買い出しに行ってもモノはほとんどない状態になっていたが、ガソリンの目途も立たないため移動も実質不可能となる。
更に、ソーラー電池のラジオまで何も流れなくなる。
情報がどこからも入ってこない。
われわれにとって一番恐ろしいことだ。
新しい信頼のおける情報が入らず、噂話が蔓延って来る。
(実際、わたしの身近な環境においても情報は捻じ曲げられ改竄されて沈殿している)。
中央の情報が入らなくなるということは、すでに尋常ではない事態が起きていると受け取るしかあるまい。
これは完全に全体的な(少なくとも国単位の)崩壊を意味しないか。
その辺、その仄めかしも含めほとんど描写はないのだが。
然も、母に次いで父も亡くしてしまい、大きな後ろ盾が失せてしまう。
姉妹間では不安とストレスから諍いや亀裂が生じ、妹はガセネタを運んできたボーイフレンドと8か月かけてヒッチハイクで送電が回復したという東部に逃げることにする。
結局、離れてみて姉妹の絆を感じ取り、妹は姉独りで残る家に走って戻り、そこで共に暮らすことにする。
二人が同調して力を合わせ森での自給自足の厳しい暮らしが何とか軌道に乗ったかにみえた。
国や文明が崩壊しようが、生活は続く。
元々、この親娘、森に入って普通の生活を送っていたわけだが、いよいよ電気が断たれガソリン(移動手段)も無くなり、森の生活に深く溶け込むことを余儀なくされる。
車で街で買い出しに行っていた頃は、全く意識していなかった野草について研究を始める。
そもそもその環境にいて野草を利用しない手はあるまい。
そんな折に、ならず者に姉が暴行され妊娠までしてしまう。おまけに車まで盗まれる。
この辺からの緊張度はかなり高まってゆく。
「もう何も失いたくはない」と謂い、姉はその不義の子を産む決心を固める。
出産の危機もあり必要に迫られ、イノシシを狩って動物性のたんぱく質を摂る(特にB12)。
恐らく、全てはこういうものだと思う。
しかし大雨の続く中、家屋自体が徐々に倒壊する気配を見せていた。
こうなったときに、われわれにはどのような道が見出せるのか。
森へと、彼女らは完全に入って行くことを選択したのだ。
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