サマーウォーズ

SUMMER WARS
2009年
細田守 監督
奥寺佐渡子 脚本
山下達郎 『僕らの夏の夢』主題歌
(声:
神木隆之介、、、小磯 健二 (高校2年生、数学が得意)
桜庭ななみ、、、篠原 夏希 (高校3年生、マドンナ的存在)
「サマーウォーズ」の感想をほったらかしていたことに気付いた。
これまでに観た細田監督の作品、『時をかける少女』、『おおかみこどもの雨と雪』、『バケモノの子』は、どれもが深く印象に残る傑作であった。
特に場所~取り巻く環界に魅了される。
『バケモノの子』で「渋谷」に重なって活気に溢れる「渋天街」が開けているのにはニンマリしたが、他の映画もそうである。
場所が記憶に残っている。
この『サマーウォーズ』の舞台は篠原 夏希のおばあちゃんの家~本家で、これまた大変様々な人のいる賑やかな場所である。
格式は高く先祖に拘る家柄~陣内家ではあるが、村社会的な押し付けや堅苦しさは然程感じられない。
大きなテーブルを囲んでの、和やかな食事場面が印象的である。
メンバーもそれぞれ頼りがいのある面白い個性の集りである。
牧歌的な環境を拠点に「仮想空間OZ」上でのゲーム対戦を夏希を中心に家族で力を合わせ繰り広げる。
とても楽しくも毒のあるポップでアーティフィシャルな仮想空間で皆の気持ちと頭脳が思い切り弾ける。
その決戦ゲームが「花札」なのだ。
「花札」を知らないわたしは、世界中の支援者のひとりといった立場か。
(これがもしチェスや将棋・囲碁であれば、これまでの膨大な蓄積データから、どんな人間が挑んでも勝ち目はないだろうが、「花札」というのは、うまいチョイスであった)。
「あなたのアバター~アカウントを貸してください」と謂われて世界中の人たちが篠原 夏希を応援する。
その数は膨大なものとなってゆく、、、。
陣内家とIT空間と宇宙・地球(諸外国)が端末上でシームレスに繋がる。
スケールはともかく、わたしの場所にもそっくりでもある。

「仮想空間OZ」とは、ウェブ上で世界中の人々が、「ショッピングやゲームだけでなく、納税や行政手続きなどの様々なサービス」が利用できる身近な日常空間であり、セキュリティも極めて高く安全に管理されていた。
そのシステムの保守点検のバイトに就ていたのが、(もうひとりの)主人公、小磯 健二である。
数学が趣味で得意でもある、高校生で夏希の一年下の後輩である。
ちなみに夏希は学園のマドンナ的存在の人気者。誰もが憧れる存在である。
ひょんなことから、 健二は夏希に頼まれたバイトで、彼女の田舎に一緒に出向き彼氏として紹介され、おばあちゃんを安心させるという役を引き受ける。ここはまさに萌え系少女漫画世界の導入だ。ちなみに、おばあちゃん90歳の誕生パーティへの出席となる。
そんな折、OZ空間に「ラブマシーン」というAIが侵入し、OZが乗っ取られてしまう。
丁度、健二が陣内家に泊まる晩に彼の携帯に数字の羅列が送られてきて、その得意分野の問題を解いて送り返す。
彼はそれを何かのクイズだと思っていたのだが、実はその答えがOZ空間の管理権限のコードであった。
乗っ取ったAIの暴走の影響で世界中のインフラが大混乱に陥る。
人々の生活が脅かされる深刻な事態を呼んだのだ(彼の他にも十数名が問題を解いていたそうだが)。

晩年にこんな境地になっていれたら、それは素敵であるが、、、。
陣内家のおばあちゃんは、政治経済界の実力者と懇意であり、そのパイプを生かして電話を通し大混乱を鎮める舵取り(陣頭指揮)をする。
あり得ないスーパー指導者だ。しかし実際の効力が現れて来た矢先に突然亡くなってしまう。
後を託された陣内家の面々が夏希を中心にまとまり、それぞれの専門分野の力を集結して、AIとの頭脳戦が開始される。ここで数学の得意な健二が大きな活躍の場を与えられ、「キングカズマ」という格闘ゲームチャンピオンのアバターを持つ夏希の又従兄弟の佳主馬とタッグを組み激しい攻防を見せる。
これによってビジュアル的にド派手でコミカルな戦闘がIT空間上で繰り広げられてゆく。
無数のアバターを取り込み巨大化する悪魔的姿の敵など、まるでプリキュアの闘いを見ているような気にもさせられる。
これまでのアニメの戦闘場面の様々な要素が散りばめられたかのごとく華やかで多彩なバトル光景だ。
しかし話は実際、尋常ではない危機を迎える。巨大な力を得たラブマシーンは、小惑星探査機・「あらわし」を世界に散らばる核施設の何処かに落とす計略を練っていることが判明する。その阻止の為、夏希は決死の花札勝負に出る!
これは何というか陣内家の家芸(家学というのは聞くが)のようなものらしい。
「花札」によるアカウントの奪い合いの勝負は、一時は劣勢になるも、世界中からの多くの支援アカウント(アバター参戦)により勢いをつけ、「こいこい」の声援の下、ついに夏希が「ラブマシーン」を打ち倒し、一件落着にみえた。これってかなり運による勝負なんだな、、、。
しかしその矢先、ラブマシーンは「あらわし」を陣内家に落下させる最後の仕返しに出た。
ここで、一進一退の攻防が続くが、鼻血と共に健二の計算能力が炸裂し、すんでのところで落下軌道を逸らすことに成功する。
陣内家は半壊しかなりのダメージを受けたが、邸敷地内の落下場所から源泉が噴き出しメデタシとなる。
おばあちゃんの葬儀が和やかに行われる中、、、
大活躍でみんなを救った健二は、夏希の方から愛を告白され、再び鼻血は吹き出るがお熱いカップルに。
一族からの祝福を受けてのエンドロール。
と、こう書くと他愛もないラブコメみたいであるが、これが実にこれでもかという程にスリリングでカラフルで面白いのだ。
つまりCG~絵の勝利でもある。それこそアニメーションならではの醍醐味と謂えよう。
しかもSNSなどを日々自らの身体性に繰り込んで生活しているわれわれにとって、ほぼ地続きの噺~環界でもある。
アニメならもっとリアルだが、、、。

やはり日本は、アニメーションがいける。

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