この世界の片隅に

In This Corner of the World
2016年
監督・脚本 片渕須直
原作 こうの史代
音楽 コトリンゴ
主人公のすずの声~喋り方がとてもよかった。
これまでにみたヒロインの中でもっとも親近感をもった。
意味(役柄)の上ではなくその身体性において。
実写よりも現実感を感じた。余りない体験である。
(もし実写でやるなら、有村架純であろうか?)
実写はやらない方がよいが、、、。
戦時中の市井のひとに焦点を当てた(そのひとの視点で描いた)映画は幾つか観ているが、そのなかでも特に生活の臨場感が響いた。
おっとりした絵の上手なすずの人柄。
買い物から始まる料理場面のきめ細やかな描写。
(わたしも毎日料理は作っている為、一番目がいった)。
すずを取り巻くひとたちの自然な息遣い。
様々な感情の活き活きした交錯。
ディテールまで稠密に描き込まれた日常~広島の光景。饒舌な自然の情景。
そこに交じって行くすずの奔放に踊る絵筆が美しい穏やかな(永遠の強度をもった)世界を生成する。
きっとこうなのだ。
どんな過酷な社会状況にあろうと、このような詩情が現実に溶け込み、、、
ではなく、彼女の心象風景の拡がりがこのような日常~表象を形作っていたのだと想える。
すぐ隣に、次の一瞬に、死が控えていても、禍々しい恐怖も不条理な悲劇も、同時にたまらなく愛おしく美しい絵でしかないのだ。
未来派の絵の幾つかを想い浮かべるが、それらのあくの強さはなく、印象派的な柔らかな光に充ちている。
それでいてすずの身体性を通して社会の過酷さ無情さ生きることの困難さは充分に語られてしまっている。
(呆気なく失う絵を描く右腕、、、)。
そのため、特有の緊張感が常に漂う。
そしてわたしの今いるこの世界に地続きに接続している感覚が強いのだ。
この点において、ポスト宮崎駿と評される映画(監督)らしいが、すでにそれを超える作品に成り得ていると思う。
コトリンゴの曲、ヴォーカル、ピアノも世界観の表現において秀逸であった。
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