ブレードランナー2049

Blade Runner 2049
2017年
アメリカ
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督
ハンス・ジマー、ベンジャミン・ウォルフィッシュ音楽
ハンプトン・ファンチャー、マイケル・グリーン脚本
ロジャー・ディーキンス撮影
ライアン・ゴズリング 、、、K/ジョン(ブレードランナー)
ハリソン・フォード 、、、リック・デッカード(元ブレードランナー)
アナ・デ・アルマス 、、、ジョイ(ウォレス社製のホログラフィーの恋人)
シルヴィア・フークス 、、、ラヴ(ウォレスの懐刀、ウォレスからは天使と呼ばれるレプリカント)
マッケンジー・デイヴィス 、、、マリエッティ(フレイザの配下のレジスタンス)
ロビン・ライト 、、、ジョシ警部補(マダム)
レニー・ジェームズ 、、、アナ・ステリン博士(記憶の制作者)
ジャレッド・レト 、、、ネアンデル・ウォレス(発明家、新世代レプリカント開発者、ウォレス社社長)
デイヴ・バウティスタ、、、サッパー・モートン(旧型レプリカント)
ヒアム・アッバス 、、、フレイザ(レプリカントのレジスタンス指導者)
『ブレードランナー』35年ぶりの続編。
前作を正統に引き継ぐ完全な続編となっていた。
圧倒的なスケールと稠密なディテールの芸術的映像美。
演出として説得力ある音。(ヴァンゲリスのサウンドの継承もなされている)。
キャストも全員強烈な個性と色濃い存在感を湛えている。
特にジョイという新鮮でミステリアスかつ魅惑的な存在には驚かされた。
アナ・デ・アルマスは要チェックである。
一方クールで最強のレプリカント、マッケンジー・デイヴィスは『鑑定士と顔のない依頼人』の美しいヒロインである。
更にレイチェルが当時の姿そのもので出てくる。これアーカイブから引っ張って来たものか。まさにVFXの勝利である。
どこかプリス(前作のレプリカント)を彷彿させるマリエッティことマッケンジー・デイヴィスのスーパーモデル級の存在感も目を引く。「オデッセイ」でNASAの衛星制御エンジニアを演じていた。
そして、引退したデッカードにも逢える。75歳を迎えいまだアクションも熟し若々しい。
ある意味、驚異である。
ライアン・ゴズリングとハリソン・フォードの共演はとても重厚でしなやかであった。
ライアンの物語の展開と共に深みを増す人格表現も秀逸である。
超大作(超重量級)の風格充分の続編であることに間違いない。
Kは、旧型レプリカントを解任するブレードランナーであり新世代レプリカントである。
高性能(高機能)ホログラフィージョイという恋人もいる。
kにエミッターをアップグレードさ物質化し自由に彼と外に出られるようにもなる。
(魂を得たホログラフィとも謂える存在と化す)。
2036年、新型レプリカントがウォレスにより開発される。人に従順で寿命に制限をなくしたタイプである。
彼はレプリカントの反乱により潰れたタイレル社の資産を引き継ぐ。
レプリカントは相変わらず過酷な環境下での労働の為に生産されていた。

kは自分がレプリカントでありブレードランナーという事から、ジョシ警部補(マダム)に絶対服従して働いていた。
サッパー(惑星から脱出したレプリカント)を解任(殺害)したときに、彼は大きな木の根元に箱が埋まっていることを発見する。
その箱には帝王切開した女性レプリカントの骨が綺麗に収められ(葬られ)ていた。
それを知ったkの上司ジョシ警部補は、レプリカントが生殖能力を持つことによる世界~秩序の大混乱を危惧し、すぐにその隠された子供を探し出し殺すことを命じる。
だが彼は「生まれたもの」は魂を持つはずだと、引き受けることに躊躇する。
レプリカントがもはや「にんげんもどき」ではなく、人と同格の生命体の地位を占める事への脅威からジョシはkに任務遂行を急かす。
どうやら死ぬ前にサッパーの言った「お前は奇跡を見たことがない」という事が大いなる意味を持ってくる。

2022年ブラックアウト(大停電)を経験し過去のデータは紙データ以外は吹き飛んでいた。
しかしデータ収集マニアであるウォレスの元にブラックアウト以前の復旧されたデータが僅かに残っており、kはそこに例の骨の正体を探り当てる。(骨のシリアルナンバーから)。
そしてその女性レプリカントをよく知る、元ブレードランナーのデッカードを探す。
ウォレスはレプリカントに生殖能力が備わる事で社の生産性が上がる期待をかけて開発していたが未だに成功を見ていない。
彼もデッカードに、その子供の居場所と仲間の存在について聴き出そうとしていた。
レプリカントの子供を探す闘いを通して、人間とレプリカントの存在そのものに焦点が当てられてゆく。
kは、例の骨の埋まっていた木の根元に掘られた数字「61021」が自分の少年時代に隠した木馬の足の裏の数字と一致していたことに驚く。それは誕生日であった。その符合に戸惑いつつも、実際に自分の少年時代の記憶が生きられたものであることを感得する。
それは感情を伴ったものであり本物の生きられた記憶であることが記憶制作者であるアナ・ステリン博士によって確証される。
(しかしその時アナの流した涙には、深い意味があり後程kもそれに気づく)。
kは自分がデッカードとその恋人のレプリカントのレイチェルとの間に生まれた子供ではないかと訝っていた。
自分も「生まれた存在」なのだ。もはやレプリカントという枠を超えた「存在」としての戸惑いと不安に苦悩する。
そう実存としての苦悩であると同時に希望でもあった、、、。
この間のkに対するジョイの支えはとても大きい。kにジョンという名も付け、名前をそう呼んで励ます。
kにとって完全にこころの拠り所となっていたことは間違いない。
愛らしくも直向きな人格を彼女も有していることがよく分かる。
ここまでくると何を持って存在の序列を付けようというのか。
人間、レプリカント、はたまたホログラフィーであるにせよ、、、
(しかしAIの発達がここまで進むだろうか、、、身体を持つに及んで魂も生じたと謂えるか)。
ジョイはkに深手を負わせたラヴによってエミッターごと踏みつぶされ儚くも消滅する。
ラブはジョシも殺害する。邪魔なものはいとも容易く葬り去る。
また、デッカードはレイチェルとの生殖能力を試すためのレプリカントであり、タイレル社社長の思惑で作られたものであることをウォレスから明かされる。
そう謂われれば、前作を想い受けべても全く符合するところだ。(実に納得できる部分だ)。
自分が人間であることを疑わなかったデッカードの落胆と虚無感が伝わる。
前作でもデッカードがレプリカントではないかという噂はファンの間で取りざたされていたが、、、ついに真相が明るみに出てしまった。
終盤レジスタンスに囚われたkが、指導者フレイザから孤児院に預けられたデッカードとレイチェルの子供は女の子であったことを知らされる(デッカードは子供を追跡から守る為に孤児院に入れていた)。
彼女は出産に立ち会い、レイチェルは彼女の腕の中で産後の合併症により息を引き取ったのだった。
データ上は、女の子は死亡し男の子が疾走したとなっていたのだが。
kはフレイザからレプリカントの子供と生殖能力について、ウォレスに知られないためにもデッカードを抹殺するよう指示される。
しかし、捕らえられて護送中のデッカードを深手を負いながらも何とか助け出し、アナ・ステリン博士の元に連れてゆく。
kはそこで雪の階段の上に横たわり、生々しい記憶が自分のものではなかったことを振り返りつつ意識が遠のいてゆくのを感じる。
デッカードはそこで娘と思しきアナと初めて出逢う、、、。
kがデッカードを救ったのは、前作でロイが彼を救ったのと同様の気持ちからだろうか。
「お前たち人間には信じられぬものをおれは見てきた。オリオン座の近くで燃えた宇宙船や、タンホイザー・ゲートのオーロラ、、、
そういう思い出もやがて消える。時がくれば涙のように雨のように。その時がきた、、、」(ロイ:「ブレードランナー」)
いやでも想い出してしまう、、、。
(デッカードは二度も彼らに救われている)。
この続編が観たい。

この映画、ライアン・ゴズリングとハリソン・フォードの共演も頗る強力であるが、女性キャストの厚みが尋常ではなかった。
皆、ヒロインを張れるような面子であった。
キャストだけでも相当な金がかかっていることが窺える。
明らかに次を期待させる内容であり終わり方であったが、、、。
今度は人類対レプリカントとの全面戦争となるか。
(次作を引き継ぐ監督などいるだろうか、、、それが心配である)。

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