犬神家の一族

1976年
市川崑 監督
横溝正史 原作
小杉太一郎 箏曲「双輪」作曲
石坂浩二 、、、金田一耕助
島田陽子 、、、野々宮珠世
高峰三枝子 、、、犬神松子
三条美紀 、、、犬神竹子
草笛光子 、、、犬神梅子
あおい輝彦 、、、犬神佐清/青沼静馬
地井武男 、、、犬神佐武
坂口良子 、、、那須ホテルの女中・はる
小沢栄太郎 、、、古館恭三弁護士
加藤武 、、、橘警察署長
大滝秀治 、、、大山神官
寺田稔 、、、猿蔵
岸田今日子 、、、琴の師匠
三国連太郎 、、、神佐兵衛
川口晶 、、、犬神小夜子
川口恒 、、、犬神佐智
金田龍之介 、、、犬神寅之助
小林昭二 、、、犬神幸吉
今日は画家の噺でもと、思っていたらタイムリーにこれがBSで入っていた。
「犬神家の一族」は、”無責任シリーズ”と共に、観たいと思っていた映画であったので丁度よかった。
石坂浩二主演による”金田一耕助シリーズ”の第1弾となる。
(無責任シリーズに一族シリーズともに大ヒットした)。
お釜帽とトランクと絣の単衣の着物と羽織によれよれの袴で、ぼさぼさ頭と飄々としたスタイルは最初から確立されていたようだ。
(フケ症はちょっとやり過ぎかなとも思う)。
「わたしが全部作ったの。何が一番美味しかった?」(はる)と聞かれて普通に「生卵」と答えるところなどよい。
そして何より若い。走る姿も軽快だ。
(ちなみに、中原中也がお釜帽を好んで被っていたみたいだ、、、写真を見ても)。
他のキャストも豪華な顔ぶれである。
所謂、オールスターキャストというものか。三国連太郎があまりに勿体ない使われ方であったが。
島田陽子や坂口良子は実に瑞々しい煌めきがある。
特に最初の頃、犯人と疑われるなかでの野々宮珠世(島田)の毅然として凛とした姿は美しい。
身の危険もありながら湖の真ん中に単身ボートで出て行き、昼寝をしている余裕も素敵だ。
恐らくこの頃が一番女優としても良い時期だったのでは、、、。
女中・はる(坂口)もとても初々しく金田一に協力を惜しまない気さくで一途な姿に好感をもつ。
ただの女中にしては出番も多く金田一との掛け合いなどで映画のよいアクセントになっている。
そして何より「マスク姿の佐清」と「水面から突き出た足」である。
これは当時、色々な場面で使われたようだ。単なる真似やパロディで。
かなりのインパクトがあったことは想像がつく。
怖くて不気味で面白い。
受けるはずだ。(プールで真似した人が多かったらしい)。

あくまでも金田一耕助は、探偵であり刑事ではない。
人を捕まえたり裁くことには興味はない。
捕まえるのは、ここでは「よし分かった。奴が犯人だ。」とすぐに早合点する橘警察署長であり、誠に頼りない。
単純で粗暴で暴力的である体制~世間の象徴的存在でもあろう。
ここで、風来坊(アウトサイダー)の彼が見事な推理で風穴を空け、颯爽とというよりそそくさと帰って行く。
(依頼者からのお金の受け取りシーンを丁寧に描くところも面白い)。

基本、金田一耕助は人受けがよく、知り合う女性からは誰からも好感を持たれ、この物語で強面の猿蔵にも好かれてしまう。
母性本能を刺激するというか、どことなく頼りなげで人懐っこく、誰をも和ませる身体性がある。
そんなパーソナリティであるから、彼にはあなただけには喋りますがと、気を許してペラペラ大事なことまで語ってしまう。
あの口の堅い(自分で謂っている)大山神官でさえ、そうである。
彼が優秀な探偵であるのは、この辺がベースになっているところは大きい。
勿論、事件の謎解きや殺人のトリックを明かすことを無上の喜びとしている結果ではあるが。
(一族の相関関係図をとても丁寧に筆で書いている姿が全てを表している)。
ちなみに、わたしは犬神家の一連の殺人事件の犯人は皆目見当がつかなかった。
犯人が分かった後でも今一つ、実感はなかった。
そこまでやるか?という違和感は残った(爆。
ただ最後に野々宮珠世がしきりに犬神佐清に疑いの目を向けていたのは、彼の事を愛していたからだという事はよく分かった。
そこは成る程、と納得した(笑。
一度見ておいて損はない映画だと思う。
わたしとしては、島田陽子と坂口良子を発見した作品であった。
- 関連記事