カッシーニ・グランドフィナーレ Ⅱ

Cassini Huygens
今朝気付くと、余りに美しくも哀しく愛おしい映像~カッシーニ・グランドフィナーレが入っていた。
NHKの「コズミック・フロントNEXT」、、、この番組では、これまでのなかで一番良かった、、、。
本当に涙なくして、到底観れるものではなかった、、、。
結局、人工衛星で居続けることは許されなかった。
土星初めての人工衛星カッシーニ。
全くトラブルなくミッションをことごとく遂行し続けてきた。
1997年に打ち上げられ、7年かけて土星の周回軌道に乗り、2017年9月15日(11:55:46)消滅するまで、、、
45万枚もの写真、635Gに及ぶデータを地球に送ってくれた。1時間半かけて。(高速で70分かかる距離なのだ)。
木星~タイタン~エンケラドス~土星、、、そのほかの衛星、ミマス、イアペトゥス、、、。
-180℃のタイタンに日本列島より大きな湖もあった。その数100以上。
液体の正体はメタンであった。タイタンの水は液状メタンなのだ。
タイタンには傾きがあり季節の変化があり、メタンの雲とその循環があった。1.5気圧。
それは、生命が生まれる前の地球の姿にそっくりだという。

すでに太陽系外に去ってしまった先輩探査機ボイジャーの残した宿題をカッシーニは次々に解いていった。
大きな発見ばかりであった。
カッシーニの探査によって判明する事実は送られたデータの今後の解析によって更に明らかにされてゆくだろう。
その中には驚くべき事実がまだたくさんあるかも知れない。
カッシーニには、ヨーロッパ(ESA)で開発された6つの観測機器の装備されたホイヘンスが搭載され、直接タイタンの地上に耐熱シールドと3段階パラシュートにより軟着陸して、地表写真と風を切る音も送って来た。
接近した地表の姿は、地中海のコートダジュールに酷似していたようだ、、、。
石は氷、砂は有機物の粒であった。
ホイヘンスの収集したデータはカッシーニのその後の観測に役立てられる。

地球を離れて20年、、、わたしは、これまでに、、、
土星の30万キロにも伸び渦巻く巨大な嵐を観た。
土星の輪の正体にもギリギリまで迫った。
輪と土星本体との間を22回、タイタンとのスイングバイでダイブした。
そこが”Big Empty”であることを身をもって知った。
タイタンとはずいぶん長い付き合いとなった。彼女とのスイングバイはわたしのメインエンジンの代わりでもあった。
タイタンにメタンの広大な海と秒速1mでゆっくり注ぐ1㎝の大粒な雨とそれを集めて流れる河と、、、。
窒素とメタンが宇宙線に晒され高分子有機物となって積り生まれた砂丘に疾風が鋭い直線を抉ってゆくのを観た。
エンケラドスの極地点で漆黒の宇宙空間に丈高く噴射し続ける塩水の蒸気も観た。
そして土星軌道上から遥か彼方に煌めく故郷の地球を観た。
それは小さなラピスラズリの光点のひとつであった、、、。
わたしは惑星間の諸地球を観て周った。
いつしかブレードランナーのロイ・バティーの最期の言葉~回想にも重なって逝く、、、。
タイタン、エンケラドスに生命体の発生(存在)可能性が高い為、それらの衛星に影響を与えることを危惧したNASAは土星大気圏に突入して燃え尽きることをカッシーニ最後のミッションとした、、、。
使命のひとつである地球外生命体の探査を全うし、その成果の為に自らの消滅を選ばざる負えなかったのだ。
生命の探求とはこれ程デリケートなものなのだ。無菌状態で組み立てられ発射されたにも関わらず万が一、細菌が付着していたら関与する環境にある生命系への影響が生じる可能性がある。
しかし実際はどの星も外部からの隕石や宇宙線(太陽風)の影響は多大なものとしてあるのだが、、。
地球人の影響~痕跡は残したくなかったのだ。
(確かに、これまでにも征服に来た民族の運んだウイルスにより相手国が壊滅した例もあった)。
土星に突入の為のタイタンの重力を使った最期のスイングバイをNASAでは「さよならのキッス」と呼んだ。
確かに、13年間にも及ぶ付き合いである。
カッシーニのCGがとてもよく出来ていた。
スピード感と質感が特に良い。
最期のミッションに臨むカッシーニの気高く神々しい姿には胸の詰まる思いだ。
あの流れ星となって消滅する数秒間の光の粒の美しさ、、、。
真にレアルだ。
SF映画で、こんな瑞々しいものが作れたら、素晴らしいと想う。