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ジンジャーの朝 ~さよなら、わたしが愛した世界

GINGER ROSA003

GINGER & ROSA
2012
イギリス・デンマーク・カナダ・クロアチア合作

サリー・ポッター監督・脚本

エル・ファニング、、、ジンジャー(16歳の多感な少女)
アリス・イングラート、、、ローザ(ジンジャーの親友、父がいない)
クリスティーナ・ヘンドリックス、、、ナタリー(ジンジャーの母)
アネット・ベニング、、、ベラ(女性活動家)
アレッサンドロ・ニボラ、、、ローランド(ジンジャーの父)


エル・ファニング繋がりで(笑、、、。
アリス・イングラートは『ピアノレッスン』、『 ブライト・スター いちばん美しい恋の詩』のジェーン・カンピオン監督の娘。

それにしても「ジンジャーの朝」って何のつもりだ?まさか「レナードの朝」にあやかろうとか、、、?
向こうの映画には、シンプルに誰と誰という題が多い。そのままではだめなのか?二人の物語である。


まず、いきなり「1945広島」の原爆の光景が映し出される。
その年に生まれた、「ジンジャーとローザ」の物語である。
母親同士が産院で隣り合ったベッドであった。
それから二人は姉妹のように育つ。

思春期に差し掛かった時期に、キューバ危機である。
再び「核」の脅威が現実味を帯びた。
ジンジャーは「核兵器」の使用による全的崩壊に恐怖する。
そこに不安定で、外界に対しひりつく思春期特有の感性が更にそれを増幅した。
「こうして世界は終わる」と謂う終末観に日夜、浸り込む。
彼女は詩人で活動家でもあったが年相応の幼さと脆弱さのうちで酔いしれていた。

最初はふたりで核開発に反対する集会やデモに参加する。
ふらふらして高校をさぼり影で喫煙したりヒッチハイクなどしながらではあるが、、、。
二人とも何かに夢中になりたい年頃であり、自分の居場所~存在意義を見出したいと考える。

GINGER ROSA002

親友だと信じていたローザとの間が徐々に溝が生じてくる。
方向性がズレてきた。
ジンジャーはボーヴォワールを読み(フェミニズムに関心を深めて行ったかどうかは分からないが)世界と言う枠は意識化してゆくが、ローザは異性にそしてローランドのアナキストぶった言動や雰囲気に呑まれ惹かれて行く。
ローザがやけに大人びてお洒落になっている。
反核運動にも参加しない。しかし、ローランドと意気投合して共にいることが増えた。
ジンジャーはとても居心地が悪くなり、彼女と以前と同様には関われなくなる。
そして決定的となったのは、彼女がよりによって自分の父ローランドの恋人関係になってしまい、どうやら身籠もってしまったらしいのだ。

ジンジャーの父は、娘にお父さんとは決して呼ばせず、”ローランド”と呼ばせていた。
「お父さん~パパ」とは、彼にとって堕落した姿(の象徴)のようだ。
とは言え、リベラル路線で体制に反抗して投獄経験もあることはともかく、娘の親友と恋仲になって妊娠させるとは、自由をはき違えてはいないか、、、。一番大事な基盤となる信頼と愛情を踏み躙って自由も何もあるまい。
ジンジャーはこれまでローランドを尊敬していたのだ。
そのショックは、途轍もない。
彼女にとって丁度、核が炸裂したのと同等の衝撃で、世界の終わりを意味した。
親友と父を失ったことになる。
基盤が失せた。

しかし、親友のローザも彼に自分と同じ傷を見出し共感し、慕っていたのだ。
そこまではよいが、問題はその先の飛躍である。
法~集団幻想のレベルと対関係における幻想は次元が異なる。
体制からの自立~反抗が必要で運動~活動に身を投じるべきときもあろう。
ベラのように。
ローランドの場合、自己幻想ばかりが肥大し、全ての欲望を抑圧に対する反抗と自由として位置付け正当化している。
ないまぜである。対関係にある人間に対する想像力を著しく欠いていた。ローザも似た者同士であった。

GINGER ROSA001

世界が終わるとは、自分の世界の終わりを意味する。
(通常、誰もが「世界は~」と口にするとき、それは「わたしの世界は~」を意味しているように。キリスト教徒が世界は、と言う時、決まってキリスト教徒としての世界である)。

失意から自殺未遂した母ナタリーの入院する病院で彼女の回復を父と待つジンジャーのこれまでを総括する詩が書かれる、、、。
(ナタリーは文字通り、世界を終わらせようとした。それをもっとも敏感に察知したのがジンジャーであった)。


『夢を見ていた

一生親友でいるって
人によって生は終わりを意味する
今となってはわたしに明日はない
これだけの恐怖と痛みの中でも、わたしは世界を愛する
命を守りたい

ローザは許してと言った
いつか、ママが回復できたら再会するでしょう
そして伝える、愛していたと
残念だけどわたしとは違う
あなたの夢は永遠の愛
わたしの夢は生きること
生きられたらそれでいい

だから許すよ』


その時、世界が壊れていなければ、許すことになるのだろう、、、。

昨日のスタイリッシュで、思わせぶりなメタファーの重奏でイメージ作りをしてくる映画と異なり、騙っていることには説得力がある。
ゲイの紳士(サルトルに似ている)や活動家のベラも良い味を出してジンジャーを支えていた。
彼女は、彼女の「世界」を依然、愛し続ける宣言をし、そこにいることを選ぶ。
さよならなどするつもりは、ない。

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COMMENT

ありがとうございます。

〉世界が終わるとは、自分の世界の終わりを意味する。

そうですね
確かに、そうしたところありますね。

学びの多い作品ですね。
GOMA様のレビューが
そうさせて下さっている
と言う方が正しいかもしれませんけれど。

〉あなたの夢は永遠の愛
わたしの夢は生きること
生きられたらそれでいい


誰より
お母様に
誰より傷付いたであろう
ジンジャーの詩は
沁みますね

深く、深く…。

こちらこそ、ありがとうございます。

お忙しい中、本当にありがとうございます。

わたしもタイトロープの上を歩く毎日で、この作品の登場人物たちと似たようなものです。

ただ、この終始、しんどい閉塞感と不安に包まれた日常において、ジンジャーたちが取り敢えず、窒息せずに生きられているのが、サルトル似のゲイの男性(あくまでも顔が似ているのですが(笑、作者はきっと意識してます)の存在です。恐らく。
包容力があり聡明でしなやかだが控えめな存在。
実は、こんな存在がフラジャイルな魂を支えるのに必要なのだ、と観終わってからじわっと感じました。

地に足のつかない空論を大声で吠えているローランドではとても無理です。
まあ、そういう父だから、娘もしっかりしなければ、というようになるのでしょう。

重い物語でした。わたしにもきつかったです。

また宜しくお願いします。


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GOMA28

Author:GOMA28
絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
基本的に、日々思うことを綴ってゆきます。悪しからず。
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