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アルファヴァル~ゴダールを観て

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昔見たときは機械がしゃべるおどろおどろしい声と、長く縦に伸びる薄暗いライトの廊下が印象に残っていました。それからモノトーンいいえ、モノクロの何ともエキゾッチックな映像全体の雰囲気も。

SFなのか探偵ものなのか分からないが、近未来のマスター・コンピュータ(アルファ60)による統制で「記憶」と「演算」によって全てを管理する世界を舞台として展開していきます。
SF的な舞台や特別な仕掛けやオブジェなどなにもありません。
主人公も他の惑星”アルファビル”に来るのに、自動車で最後まで走ってきます(帰りもまた)。
すべてこの映画制作当時のままの地球のパリ街そのものです。
建物も室内も、生活様式もほとんど同じ様子です。
そういった意味でもこの映画は実験的です。
ひょっとして革命的かも知れません。

面白いのは、ホテルの各部屋には必ず、「聖書」と称した辞書が置かれており、その辞書はどうやら毎日更新され、消されていく言葉と、新しく付け加えられる言葉があるのです。
ヒトを完全に操るには、言論の統制ではなく、必然的に言語の統制となります。
ここでは、感情や心理や芸術・詩的な言語が最初から「聖書」にはないようです。
「意識」も削られていました。「愛」も勿論ありません。
2級誘惑婦とか3級~とか言う職業の女も必ずホテルには完備されています。
挨拶も完全に型に嵌っています。

ここでは有名な「祭典」というものがあり、プールでヒトを銃殺刑に処するのですが、すべての罪人は思想犯や「聖書」にない言葉における行為をした者たちです。
そのプールにはフランスでも大変力を入れている競技のシンクロナイズド・スウィミングの選手が水中に控えていて、撃たれた罪人の息を止める役をします。
ある死刑囚は妻が死んだとき涙を流したという罪です。
彼は最後に自分の訴えを叫びます。が、話し終わる前に撃たれて水中に落下していきます。
スウィマーがすぐに落下地点に泳ぎ着き、まだ叫ぼうとする罪人を水に沈め息の根を止めます。
すると首脳陣や来賓たちの観客が拍手喝采が谺します。

主人公は新聞記者と偽り、この惑星に乗り込み、この惑星の支配者とされるフォン・ブラウン博士を連れ戻すことが目的のスパイです。
銃撃あり、殴り合いありのハードボイルドな場面もあり、コンピュータから尋問を受ける場面もあり、ナターシャ(アンナ・カリーナ)というブラウン博士の娘と出会い恋に落ちたり、ゴダール映画の中では最も筋を追いやすい見やすい映画となっております。
それにしてもこの映画の~街などについている名前は著名な科学者か哲学者の名前ばかりでした。
フォン・ブラウンはロケット開発者の代名詞ですが。

さて、この映画は失われた言葉を自ら探し出し人として救われようというものがテーマとみて良いでしょう。
主人公は仕事を果たすとナターシャを助け出し、車で逃走します。
アルファ60が壊れたのか、フォン・ブラウンが射殺されたためか、皆動きがおかしくなっています。
ナターシャもそうですが、主人公が言葉を思い出せ、と促します。
車はそのままアルファヴァルを後に2人を乗せて走ってゆきます。

ナターシャは「あなたを、、、」
と「聖書」にない言葉を主人公に向けて放ち、救われます、、、。
人らしい表情を取り戻します。


カメラワークとライティングもお洒落で簡潔で無駄のない、ポイントを押さえた映像で統一されています。
例えば、マイクロフォンだけでアルファ60の全体像(イメージ)を感得させたり。
このようなnー1の手法がゴダールの洗練した手法なのかも知れません。
そうこの対話する男女を交互に正面から映す手法は、ハリウッド版”ソラリス”でも使われていました。これはゴダールの発明した手法でしょうか?しかもゴダールはライトを交互に当てます。斬新です。
不確定性原理や文化人類学、ヴィトゲンシュタインの論理学等の用語は道具立てのひとつに過ぎず。
ゴダールのこだわりはヌーベルバーグ、新しくしかも色あせない映画をいかにして作るか、という問題意識に絞られるように見て取れます。


見終わって感じるのは、この映画は少なくとも思想とか何かの想いを表明しようなどというものでは全くなく、ともかく新しいカタチのスタイリッシュな「映画」を撮りたい、それだけで出来た映画だと思いました。
それから、ゴダールが映画作りが好きでたまらない人なのだということ。




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THEME:art・芸術・美術 | GENRE:学問・文化・芸術 |

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