ロスト・バケーション

The Shallows
2016年
アメリカ
ジャウマ・コレット=セラ監督
アンソニー・ジャスウィンスキー脚本
ブレイク・ライブリー、、、ナンシー(医大生)
サメ
カモメ
「浅瀬」と言った方が何やら意味深げで秘められた禍々しい何かを想像させる。
(イブ・タンギーの絵のような)。
とんだバケーションになってしまったのも事実だが、結果的に悟りも開けたみたいだし、、、。
ワンシチュエーションによる究極のサバイバルである。
満潮までは持つ小さな岩礁に独り取り残され繰り広げられる、「場所と時間の限られた」生死を掛けた闘い~ゲームなのだ。
サメの回遊の習性を観察し、海に入っていられる時間を割り出す。
傷との闘い(波乗りの最中にサメに噛みつかれ重症を負う)もある。勿論、恐怖と不安との葛藤。
ビーチまで精々200m位なのに、人気が少ないことが災いして、救援が呼べないもどかしさ。
(実際、たまたま人が浜にいて、手を振って叫んでも何のことだか理解できないという絶望的な孤立感)。
この様々な過酷な条件のもと精神をすり減らしつつ、最後まで諦めずに果敢にサメと対決する女子医大生なのである。
何より、痛い。とっても痛い。傷を自分でありあわせの針と糸?ピアスとネックレスのチェーンで縫合するのだ!
ああっ血が溢れ出る、その激痛!、、、わたしのもっとも苦手なタイプの噺~シーンではないか、、、。
圧迫包帯をスーツの袖をブレスレットを歯代わりにして割いて作る。
流石は医大生というか女の子というべきか、、、女子は強いというところか?!
その上に、触れるととても痛いサンゴやサメさえ避ける毒を持ったクラゲの群れ、、、。
もう、痛いこと続きで、その度に目を逸らす。
彼女もその痛さに、海中で絶叫するのだが、水の中で叫ぶとどうなるのだろう?
そのまま継続して泳いでいるどころではないはずだが、、、。
サメの造形~質感や動きはリアルで申し分ない。
カメラワークも至れ尽くせり。
ナンシーの視点から、彼女の近傍から、水中から様々な角度で、上空からの俯瞰、そして美しい秘密のリゾート ビーチでの華麗なサーフィンフィルムとしても充分に魅せる。
ビーチまでの森の様子も木々からの木漏れ日の道など、まさにバケーションの導入としてこの上ないシチュエーションではないか。
そして凄いビーチが眼前に開け渡る。それだけ観れば誰でも行きたくなるような圧倒する美しいビーチに違いない。
亡き母から教えてもらったビーチに日頃の勉強疲れを癒しに来たという設定か。
さらに進路で迷っており、医学部辞めようかなとか思っているところ。
確かにそんなときは、人気のない美しい海岸で波乗りして頭をクールダウンさせれば、何かがつかめよう。
そう想うところだ。
だが自然はそう甘くはなかった、、、というところか。経験を通して学べということか、、、にしても代償は余りにも痛かった。

ただ、サメの口の大きさと噛まれた太ももの歯形がどうも合わない気がする。
噛む力も、ブイの鉄骨をへし折ったり、酔っぱらったオヤジさんの胴体を引き千切る破壊力からすると、何と謂うか傷が、、、とても痛そうなのだが、、、浅すぎる気もする。まあ、その時は弱く噛んだのかも知れないが。いや牙が触れ割かれたのか、、、今一つよく分からなかったところだ、、、そうか!余りに痛そうだったので、わたしが目を逸らしていたのだ。
(どうだろう?)
このサメのしつこさは尋常ではなく、クジラを仕留めてその死体も浮かべており、サーファーの若者ふたりと酔っぱらいを襲い、少なくとも満腹のはずなのだが、執拗にナンシーの周囲を回遊し続けるというのも、どういうものか。
サメの習性上こんなものなのか、、、?ナンシーには特別の感情を持っているのか?
確かに憎々しい表情を浮かべて急襲して来るが、考えてみればサメ(ホオジロザメ)はみなそんな顔だ。

そして自然界のタイムリミットを迎え、水没する岩礁からサメの攻撃をかわして如何に逃げるか、という場面であるが、まさかというスーパーマン的な(米軍特殊部隊所属のエリートみたいな)身のかわし方と、車はすぐには止まれない的なサメの動きで闘いの決着はつく!
彼女はこの闘いを通して生きることへの執念と医者として命を救うことの大切さを悟る。
(これを悟らせるための亡き母からのバケーションビーチのプレゼントだとしたら、プロセスにおける学びは余りに痛い)。
一年後、妹と父親と、何でまた同じビーチで波乗り出来るのか不思議でならないのだが、、、。
外傷経験も逞しく乗り越えたのだ。
ただ太ももには、歯形の傷跡がしっかり残っていた。(やっぱり噛まれていたのだ)。
しかし何でアメリカ映画には、サメパニック映画が多いのか、、、。
アメリカ人にとって、サメとは何なのか?
タコではだめなのか?(タコ対サメは観たことあるが)。
日本には、オオダコスダールがいる!
(それがどうしたと言われそうだが、、、)。
これまでわたしが観たサメ映画では抜きん出てよく出来ていた。
(安っぽさが全くない力作であり、主演というかほぼ独り芝居であったブレイク・ライブリーの好演も痛々しいが、光った)。
あのカモメは、動物事務所に所属する俳優なのであろうか?
助演者になっていたが、、、。
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