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萬鉄五郎

yorozu005.jpg『裸体美人』(萬) nobe kuroda『野辺』(黒田)
芸大入学時(主席入学)には、師である黒田 清輝の作風を強く意識した、フランス外光派(印象派の亜流)風の作品を描いていた萬であったが、卒業制作では師の「野辺」からは程遠い「裸体美人」にまで進展している。
彼のモットーは、「未だかつて出来なかったことを、なし遂げんとする」ことである。
この芸大卒業制作は、19人中16番であったそうだ。
萬は卒業式をボイコットする。

確かに野獣派的で挑発的な作品である。
(マチスっぽい)。
完全に、黒田的裸婦像の「美」の約束事の外にある「裸体」であろう。
その即物性は何と言うか、プリミティブで太々しい生命力を発散している。
ゴーギャンのタヒチでの現地の女性像に近い迫力を感じるものだ。
ありきたりな美はすでに捨て去っていることは、はっきり分かる。
ラファエル・コラン(黒田の師)の絵などをこんな時に見ると到底、萬が満足できるはずはないと思う。
萬の野心丸出しの絵という感じだ。
「雲のある自画像」

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彼は自分を見つめ常に自分の殻を破って創造を続けた芸術家であると考えられるが、自分を見つめるという意味でも、自画像が多い。レンブラントもその意味での自画像が多いが。
自分をモチーフにすれば、その作画の変遷も分かり易い。
そう、萬の場合は、自画像が実験結果という感じで、残って行く。
これと、赤と緑の補色関係の二つの雲が頭上に浮かぶ自画像が有名である。
この雲と彼との関係はとても緊迫した関係にあることは分かるが、恐らく内面を象徴する形態・色彩であろうが、何故かわたしには漫画チックに見えてしまった。
ギャグマンガに転用される危うさをも秘めている。

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「赤い目の自画像」
新しく「原始時代を始める」と宣言したころの絵である。
萬は故郷の土沢に戻り、ひたすら作画の実験に没頭していた。
純粋な自分だけの作画を「土沢」で極めようとしたのだ。
赤土と神楽の面に象徴される故郷の地で、それこそのたうち回って新しい絵を探っている。
(こののたうち回って新たな独自表現をものにしようという姿勢は小林秀雄の姿にも重なる)。

そうした結果、この自画像は、更に変容する。
顔は神楽の面にも通じる呪術的な形に変容し、敢えて共振する絵を探せばピカソのアビニョンの娘たちに見いだせる「顔」である。
彼はピカソは知っていても、その作品は知らない状況にあったという。
彼が試行錯誤の果てに、独りで独自に行き着いた表現法であった。
「それ」はもうヒトではなく鬼の頭部と見紛うほどの異様な形態を獲得している。

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「土沢風景」から「丘の道」に至っては、赤褐色に数種類の緑色以外にはほとんど色はなく、形はもう地形を感じさせないほどに抽象化されてゆく。
ダイナミックな色の動きによる構成に近い。
この赤は謂うまでもなく、故郷の土の「赤」~「丹の色」であり、一種の土着性(アニミズム)が彼独自の表現を強調している。

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「もたれて立つ人」
そして極め付けである。
キュービズムの見事な作品だ。
マルセル・デュシャンかと思うほどの絵であり、やはり彼も形体のとる運動(力学的な形態)に注目している。
同時性と謂ってよいか、彼が独自に創造した成果であろう。


晩年は、肺結核を患い、茅ケ崎に療養を兼ねて移り住む。
この時期から「南画」にも取り組み、墨で自分の境地を風景になぞる様に小気味よく描いている。
とても病人とは思えない、活き活きとした楽し気な筆である。
南画はリズムが肝要と言い、そこで試したリズムをまた油絵に活かしてゆく。
最後は、「宝珠をもつ人」を描き始めるが、未完のまま終わった。
16歳の娘の病の快癒を祈る絵であったと言われるが、甲斐なく娘は他界し、彼自身も翌年41歳で娘と同じ病で病死する。


ここのところ夭逝する天才画家を取り上げ過ぎた感がある。
画家は一方で、非常に長生きする人も少なくない。
そういうヒトも取り上げたいものだ。

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絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
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