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長谷川潔

hasegawa kiyoshi

「時 静物画」彼の至高の作品、到達点か、、、。


暑いので画集や写真集を午前中見ていたら、長谷川潔の版画の画集に見入ってしまった。

彼は27歳でパリに渡り、60年間フランスで創作をし続け日本には戻らなかった版画家である。
フランス政府からレジオン・ドヌール勲章やフランス文化勲章などを受章している。
日本人では、葛飾北斎、藤田嗣治、長谷川潔の三人がフランス造幣局から肖像メダルが発行された。
ヒトラーの台頭によりパリからの脱出を余儀なくされたが、疎開先の南仏レ・ボウで創作を続ける。


彼は日本で版画を始めた当初、木版画家からスタートしたが、文芸雑誌の表紙にはすでに大胆で簡潔な構図の非凡な作品が見て取れる。
そして友人の詩人、堀口大学の実家で見た「達磨図」の何よりも美しい黒の地から白で削り出された線描の鋭さと厳しさに強い感動と感銘を受け、その後の彼の作品創造の際の基準~基調となる。
その後パリに立ち、当時廃れていた「メゾチント」を華麗に復活させる。
初めは交差する線を残したまるで布地に形体を削り出したかのような独自なマチエールの銅版画を作って行く。
このオリジナリティにパリは瞠目し彼は多くの称賛を得る。

また、レースの編み物を上手く銅板上に設置し、絶妙の圧で見事に版画との組み合わせに成功を収めている。
つまり、メゾチントによる版画作品とレースの編み物模様が連続性をもって調和した作品として生み出されているのだ。
このプレス機、ローラー部分が木で出来ており、薄い厚紙を抜き差しして圧を変化させるものである。
しかも何とゴッホが使っていたものなのだ(驚。
ここでもう一回、その繊細極まりない至芸に人々は驚き、称賛の声をあげている。


だが、それに満足せず彼ならではの「黒の美しさ」の際立つメゾチントの制作に突き進む。
恐らくここからが彼の真骨頂と言える。
わたしが最も好きな彼の作品もこれから以降に作られたものばかりだ。
はっきり言って人間業を超えた到達点である。

メゾチントは銅板にベルソーで細かい目を穿ち、全面を凹凸で埋めてしまう。
この時点でローラーでインクを塗りプレスすれば、真黒な色面が刷り上がることとなる。
そのインクが入り込む細やかな凹凸の下地面をバニーシャとスクレーパーで繊細にこそぎ取り、無限のグレーの諧調~グラデーションを作り出して形体~図にしてゆく。
長谷川のメゾチントの特徴は非常に鋭いフィギュアではあるが、何よりそれを際立たせる黒の美しさにある。
これは絶対的なものであろう。間違いなく彼はこの「黒」をとても大切にしている。
初期の手業が分かるクロスステッチ風の背景ではなく、澄み切った漆黒とも謂うべき黒の世界にくっきりと写実を極めた形がシンプルに浮かぶ。

不本意ながらパリから南仏レ・ボウに疎開した長谷川であったが、そこで描かれた風景の素描も版画さながらの静謐で鋭い写実あった。

彼は写生をしている際に、啓示を受けたが如くの経験をする。
楡の木に「ボンジュール」と声を掛けたら彼も長谷川に「ボンジュール」と返してきたという。
「万物は人も楡の木も同じなのだ。すべてのモノは、理によって作り出され、理によって生きている!」
という恐らく雷に打たれたかのような認識を得た。

彼にとりそれを写し取ることは、写実を極めることと同義なのであった。

写実から入って写実へ出る、と謂えるか。
それにより、写実以上の何かが~神聖な何かが、静謐な漆黒の内に浮かび上がる。
優れた写実家、例えばフランツカフカの写実が神秘的でシュールな世界を表してしまうように、世界は只ならぬ実相を開示してしまう。
彼にとっての写実は次の言葉に如実に現れている。
「この地球上の無数の存在のなかから、たまたまある一つのものが特別なものとなって自分に話しかける。自分はその言葉の真実を出来るだけ確かに聴き取ろうとする。、、、それを描き彫りつつ何時しか自分は草となり木となり胡蝶となる、、、」

技術だけでなく、この境地に至る精神の流れに感動する。
確かにこの頃の作品には初期の頃は見えていた手業が見えない。
宇宙の秩序と調和そのものが表出されている。
神業である。


彼はメゾチント以外の銅版画にも素晴らしい成果を残している。
「森羅万象を描く デューラーから柄澤齊へ」



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