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砂の器

suna001.jpg

1974年

野村芳太郎監督
松本清張原作
橋本忍、山田洋次脚本
芥川也寸志、菅野光亮音楽

丹波哲郎、、、今西 栄太郎(警視庁捜査一課警部補)
森田健作、、、吉村 弘(西蒲田警察署刑事課巡査)
加藤剛、、、和賀 英良/本浦 秀夫(ピアニスト・作曲家)
緒形拳、、、三木 謙一(亀嵩駐在所巡査、和賀の育ての親)
加藤嘉、、、本浦 千代吉(秀夫の実の父)
春田和秀、、、少年期の本浦 秀夫
島田陽子、、、高木 理恵子(クラブ「ボヌール」ホステス、和賀の情婦)
山口果林、、、田所 佐知子(前大蔵大臣・田所重喜の令嬢、和賀の婚約者)


何と言っても、丹波哲郎である。彼の映画である。出張の旅で、詩も書くし風情もある。
彼にピッタリ寄り添う形でこちらも、自然にのめり込んで行く。
相棒の森田健作、若い!如何にも普通の青年という感じで好感持った。
彼の言うように、日本海の波は確かに濃密であった。(青春だあ~っとか言わないのでホッとした)。

今西(丹波)は、事件の僅かな手掛かりを見つけ、一つ一つ出張しながら聴き取り捜査を続けて行く。
鉄道を乗り継ぎ、ジープを走らせ目的地を巡る。
見る方は旅気分と今度、誰が出て来るかもワクワクで楽しめる。
何処のロケーションもよいが、わたしは、笠智衆に出逢えて得した気分になった。
渥美清の場末の映画館責任者も贅沢である。菅井きんもとても地味に登場してきた。
やはり遠方への聴き込み捜査は、こういった楽しみがある。

しかしここで、かなり最初の方から、偶然にホシにそれとなく絡んでいるというのがちょっと気になるところだ。
不自然とまではいわないが、、、ちょっと興ざめである。
ホステスとの接点は早すぎる気がした。(紙吹雪の事件との関連についても)。
捜査はなかなか粘り強く、言語研究家を訪ねて、東北と出雲の音韻の共通性から場所を詰めてゆくところなど、唸る。
今西警部補はやはり言語に拘る人のようだ。

今西の和賀 英良逮捕状請求前の会議室での事件総括シーンはやはりこの物語の要である。
和賀の舞台上での、ピアノ協奏曲「宿命」発表(準備含め)シーンとクロスさせてゆくコントラストが緊張感を高めてゆく。
三木 謙一が偶々立ち寄った映画館に飾ってあった写真の発見が事件の発端となったことから、、、一気にこの数奇な物語をドラマチックに語り尽くす。
それは徹底した調査の結果、、、資料~住民票や供述や聴き取りで得た説得力ある流れであった。
警察側の想像と和賀の回想がひとつに溶け込んだ父子の悲痛で孤独な先の見えない旅が切々と騙り伝えられてゆく。
そのバックで今現在の和賀の演奏する曲が流れる。
この音は、はっきり言って聞くに堪えない。大変邪魔である。
出来れば音楽ミュートでセリフと映像だけで見たい。

和賀 英良~本名本浦 秀夫は6歳で父千代吉のらい病のため、村にいられず放浪の旅に出る。
その旅は差別や迫害、衣食住に渡って想像を絶する過酷なものであった。
父の病の悪化した頃、新たに赴任した三木 謙一巡査に手厚く保護され、父は国の施設に入所する。
しかしそれは、秀夫と父との決別を意味した。
ここで秀夫は天涯孤独の身となる。
誰もその父の病気を理由に子供の引き取り手が無かったため、三木は自分の子供のように彼を大事に育てた。

この語りで一番興味を覚えた部分は、秀夫が三木巡査夫婦から深い情愛を掛けられ育てられたにも関わらず、或る夜家出して失踪してしまうところである。
父との決別をあれ程、子供として嘆いた秀夫が、三木と別れる際のある決意を感じさせる涙。ここには大きな飛躍がある。
これは人間的な情愛との永遠の決別も意味した。
全ての過去を消し去り、貪欲に生きなおそうという力を秘めた目である。(子役上手い!)
目指す(願う)ものは、もはや異なる願望~欲望であろう。
形振り構わぬ上昇志向で突き進んだ様子が窺える。
空襲で死んだ夫婦の戸籍を利用し自分の戸籍として創作する。
自分の出生、自分の初期に当たるもの全てを抹消して新たな名前の人間として生まれ変わる。
そして天分を活かした地位と名誉の獲得か。音楽家としての野望の実現か。
婚約者も権威の後ろ盾~ステータスに過ぎない。
愛人との間に出来た子供は捨て去りたい自分の過去そのものである。
三木も父もすでに捨て去った過去の象徴でしかなく、実際に会うべき者ではなかった。
それらは全て作品~藝術の中に昇華され定着されるべき想いなのだ。
(藝術の本来の目的はそれである。秀夫はだから作曲家を目指したのだ)。

偶然、音楽家として成功を収めている秀夫のことを知った三木が余命幾ばくもない実父に逢うことを強要したため、秀夫は三木を殺害した。その時の心境も場面も一切描かれない。
「彼は音楽の中でしか父とは逢えないんだ。」(今西)
もはや日常の現実の世界には生きてはいない。
今西も詩を書く人であり、その胸中共感できるのだ。

加藤剛の冷徹で独特な厭世観が、数奇な宿命を生きる孤独を際立たせていた。
共通の磁場に捕らわれたかのような、島田陽子の儚さは綺麗である。
流産での出血死のうえ、身元不明の行倒れとは、余りに哀れではないか。
やはり幸せとは無縁の強力な磁場であったようだ。
時として相手を追い詰めるしかない正義感と思いやりを示す人格を緒形拳は巧みに演じていた。
(しかし物事全てに真摯に向き合う姿勢はとても大切な姿である)。
加藤嘉の文学的な重く悲痛な演技は、確実に物語を重厚にしていた。
少年期の秀夫のかなり際どい表情がとても印象的であり、後に開花する資質が窺えるものだ。


音楽さえ無ければ、かなりの名作なのだが。
エンニオ・モリコーネにでも依頼したらよかったかも、、、。
まてよ、それでは地中海の哀愁になってしまう。日本海と言えば誰か?



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