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記憶の棘

BIRTH001.jpg

BIRTH
2004年
アメリカ

ジョナサン・グレイザー監督・脚本

ニコール・キッドマン、、、 アナ
キャメロン・ブライト、、、 ショーン少年
ダニー・ヒューストン、、、 ジョゼフ(アナの婚約相手)
ローレン・バコール、、、 エレノア(アナの母)
アリソン・エリオット、、、 ローラ(アナの姉)
アーリス・ハワード、、、 ボブ(ショーンの兄、アナの義兄)
アン・ヘッシュ、、、 クララ(生前のショーンの浮気相手)
ピーター・ストーメア、、、 クリフォード(クララの夫)


何というか、イメージ映像で押してくる監督である。
一見、淡々としているようで、意味を込めたイメージのアップをかなり押し付けてくる。
映像で魅せるぞ、という姿勢はよく分かるのだが、、、。
小気味よく展開するサスペンスとは違い、徐々に濃密に重層して来る物語である。
「生まれ変わり」という特異(象徴的)な立ち位置を主張する子供を台風の目として深まってゆく、、、。


10年前に最愛の夫を亡くしたアナの前に、10歳の少年が「僕だよ君の夫のショーンだ。」と突然現れる。
アナについて色々詳しく知ってはいるが、その情報にはムラがある。
荒唐無稽な主張には当然、疑念は残すも次第に彼が生まれ変わりなのではないか、と真剣に受けとめ始めるヒトも出てくる。
(彼はショーンではないと確信する亡くなったショーンの兄やその妻もいるが、、、)。
特に、虚を突かれ、衝撃をじわじわと受けてゆくのはアナである。
アナ自身、亡くなった夫の想いが未だに強く胸の底に生きていたことを実感する。

その少年は、アンの母の誕生パーティのとき出席者のひとりクララの後をつけて、彼女が土に埋めた封を切られていないショーン宛のアナのラブレターを堀り出し、アナのことを知ったのだった。
ショーンの愛人であったというクララの妬みから、婚約して幸せをまた手に入れたアナにこれをプレゼントしたらどういう顔をするか確かめようとしたが、結局やめたものだ。
しかしこの噺もクララがでっち上げようとすれば出来ないことではない。
(実はショーンに来た手紙を彼が見る前に盗んでおいたとか、、、)。

しかしよく分からないのはその少年ショーンである。
10歳でも大人の雰囲気がある。
分かった様なことを堂々と述べ、ジョゼフとは結婚するなと平気で言い、生意気な態度や口を慎まない。
当然、ジョゼフはその無礼に激怒する。(大人気の無さに周囲の人間は引くが)。
勿論子供なのだが、アンの入浴中に普通にバスタブに入って来る、、、「どういうつもり?」「僕の妻を見ている、、、。」ハリウッド版クレヨンしんちゃん実写版という感じではない(念を押す必要あるか?
そもそも何故、大人びた表情で彼は、ショーンの生まれ変わりで君の夫だと、強く主張する(出来る)のか。
(それを咎められたら床に崩れ落ちたりして、イタコみたいである)。
つまり生まれ変わりというのは、前世の記憶を引き継いだ者を指すとすれば、、、
少年の場合、非常に強い確信というか前提でモノを言っているのだが、アナについての知識は手紙で得た範囲なのだ。
外から得ただけの覚束ない情報量で、この揺らぐことのない確信に充ちた態度がどうにも微妙なのだ。
つまりどういう精神状態なのか、、、一種の病気か。それともその核心を支える内的な確かな実感を伴ったうえでのものか、、、。
どうやら、それはアンをこころから愛している、という感情のようなのだ。
すると、、、ショーンは、、、浮気していた(勿論、クララの言う範囲であるが)とすればそれはどっちみち少年独自の純粋な感情なのだ、、、。
ここが何ともはっきりしない。

最後まで本当に彼が生まれ変わりなのかどうか、など分からない。本来分かることでは、ない。
また、彼が実際どうであってもそれは本質的なものではない。
だが、彼の出現が、彼らの本当の愛情の姿(在処)を曝け出だす。
アナは、長年に渡るジョゼフの求婚にやっとイエスを出したが、やはり彼女のこころを占めていたのはショーンへの愛情であった。
アナの姉や母があからさまに少年に拒絶反応を示し義兄やその妻が否定しても、アナはその少年を本気で信じてゆく。
結局少年はアナから、一緒に逃げて11年後に結婚しましょう、とまで告白される。

ちょっと、ここまでくると飛躍というより、突き抜けた純粋な想いを感じ取れる。
アナがそういうフラジャイルな精神状態に追い詰められ昇まってしまったことは分かる。
再婚を控えたタイミングでの謎の少年の出現は、アナの抑えていた意識の活性を図る触媒として働いたとも言えよう。
アナの本当の愛が顕となったのだ。

BIRTH002.jpg
ショーン少年は、亡くなった夫ショーンがアナからのラブレターを封を切りもせずクララに渡していたという話を、クララ当人から聞かされる。「あなたが本当のショーンなら、まず最初に本当に愛しているわたしのところに来るはずよ。」これはショックであった。
生まれ変わり少年ショーンは、アナへの愛を貫くため彼女から身を引き、歳相応の小学生として生きることを選ぶ。
「僕はショーンじゃない。」とバスタブに浸かって彼はアンに告げる。
アナは「騙したのね。」と怒り動揺する。

その後アナは気を取り直し、一旦離れた婚約者ジョゼフのところに戻り、今回の騒動はわたしのせいではないのよ、わたしは単に混乱に巻き込まれただけなの、仕方なかったの、と謂い許してもらう。
二人は結婚式をあげるが、海辺の波打ち際を彷徨う花嫁の不穏な表情で幕を閉じる。


全てがそのまま受け取れない、そうとも取れるがどのようにも受け取れる話だ。
真実の愛が一時の間、何をも押しのけて噴出したが、少年の退場に従い、元の秩序~あやふやな日常世界に戻ったというところか。

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絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
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