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Uボート

Das Boot001
Das Boot
1981年
西ドイツ

ウォルフガング・ペーターゼン監督・脚本
クラウス・ドルディンガー音楽
ヨスト・ヴァカーノ撮影

ドイツ海軍Uボート潜水艦「U96」

ユルゲン・プロホノフ、、、艦長
ヘルベルト・グレーネマイヤー、、、ヴェルナー少尉(海軍報道班員)
クラウス・ヴェンネマン、、、機関長
アーウィン・レダー、、、ヨハン(機関士)
マルティン・マイ、、、ウルマン少尉

ヘルベルト・グレーネマイヤーは歌手でもあるそうだ。


人の世の無常をこれほどまでに描き切った作品は観たことがない。
誤魔化しも大袈裟な演出もなく、ひたすらリアルで沈鬱であった。
勿論、生きてゆくためのユーモアや希望は必要である。
しかしその生を一瞬にして呑み込んでしまう絶望~無常の絶対性をはっきり垣間見てしまう映画であった。
それが、ある意味例えようもなく清々しい。


敵国イギリスの愛唱歌「ティペラリー・ソング」のレコードを館内で掛けさせる粋な艦長である。
自国の戦況放送やプロパガンダは信用していない。
そんな覚めた(しかし熱くもある)船長の下、古参の有能な部下と若い活きのいい船員たちで途轍もない困難を乗り越えてゆく。
絶望的な窮地を何度も脱してきた彼らであったが、敵の本拠地とも謂える狭いジブラルタル海峡を突っ切る命令の下、意を決して乗り込んだ彼らに対する攻撃は容赦ないもので、惨憺たる被害を被り潜水艇も耐えられる限界を超える水圧に落下し、今度ばかりは皆が死を覚悟する。

しかしそこで彼らは持てる限りの底力を発揮し、何と海面に浮上し、脱出に成功してしまう。
15時間を越えるメンテナンス作業を水底で繰り広げ、その結果水深を示すメーターが僅かに反応し浮上を開始した時のカタルシスはかなりのものであった。
彼らはナチスドイツ占領下のフランスの軍港ラ・ロシェルへと帰航し、無事見事に戻ってくる。
わたしとしては、もうここでよい映画だったと一息つこうと思っていた矢先であったのだが、、、衝撃のラストである。
このラストあってのこの映画であるのかも知れないが、暫く唖然とする。
映画館で観ていたのなら、なかなか座席を立てなくなる状況だ。


生きて戻るということが、戦争でも日常生活の些細な場であっても基本であり最も大事な事である。
(度合の差こそあれ、そんな場面の連続でもある)。
だが、それを達したと思った晴れやかで清々しい時に、まさに想定していなかった事態で命を落とすことがまた人生でもあろう。
船長は、漸くたどり着いた終着港で自分が生死を共にしてきた船がイギリス機に撃沈されるのを目の当たりにしながら息絶える。
この極端な運命の転換のシーンには、慄然とする。

しかしわたしは不思議に全く後味の悪さや悲壮感に浸る気持ちは生じなかった。
非常に本質的な無常を感じたが、それは人間であることの運命とも言い換えることは可能で、死なない人間はいない、と同義のものであった。
寧ろ彼らは、ほぼ絶望と謂ってよい海底にボロボロとなって沈んだUボートを例外的努力の末、修復して戻ってくるという濃密極まりない生を全うしたのだ。薄っぺらい人生を長く生きながらえるよりずっと生を思いっきり生きたともいってよいかも知れない。

暫く呆気にとられた後は、スッキリした気分に浸ることが出来た。
そんな傑作映画であった。


Uボートがソナーも無く、敵艦を耳で聴き分けたり、ほとんどは浮上しての目視に頼るところなど、実に覚束ない脆弱な形で善戦していたのだということを知った。
合わせて、あの船内の有様である。
むさくるしいなどというレベルを遥かに越えている。
あそこに入った途端、卒倒してしまいそうになる現場だ。
ネモ船長の潜水艦とは、やはり違うのだ。
あんなに狭いのだ。持ち場につくときの船員たちの移動がいちいち子供の遊技場の遊具のトンネル渡りのようだった。
そういう環境に閉塞されて敵に対し身体感覚を研ぎ澄まし、絶えず緊張を強いられる戦いをしていたのだ。
その現実の身体感覚がプンプン匂ってくるような生々しいリアルさであった。

みな個性が活きている無精ひげを生やした汗臭そうなキャストも申し分なかった。
音楽もピッタリ合っていて、よい。
これだけドイツ軍に感情移入して観られる映画も少なかろう。
だがこれは戦争という状況に留まらない、、、。


ここに描かれた世界は、たとえ薄められていようがわれわれの日々の戦いにも重なるところである。
何であろうが、生きる限り徹底的にやるべきことは、やり抜くしかないのだ。



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