大いなる男たち

THE UNDEFEATED
1969年
アメリカ
アンドリュー・V・マクラグレン監督
ジェームズ・リー・バレット脚本
ジョン・ウェイン、、、ジョン・ヘンリー・トーマス大佐(北軍)
ロック・ハドソン、、、ジェームズ・ラングドン大佐(南軍)
ベン・ジョンソン、、、ショート・グラブ(トーマスの部下)
アントニオ・アギラー、、、ロハス将軍(メキシコ革命派)
ロマン・ガブリエル、、、ブルー・ボーイ(トーマスの養子、チェロキー)
リー・メリウェザー、、、マーガレット・ラングドン(ラングドン大佐の妻)
メリッサ・ニューマン、、、シャーロット・ラングドン(ラングドン大佐の娘)
マリアン・マッカーゴ、、、アン(ラングドン大佐の兄の未亡人)
「大いなる男たち」って、、、まずDVDを手に取って見ようとは思わない邦題だ。
かなり恥ずかしい。
最初から気持ちが萎える。TVに入っていたから、そしてジョン・ウェインアレルギーがなくなればそれもよいと思って、観てみた。
結果、逆であったが、踏ん切りがついた一作である(爆。
これ程、紋切り型の使い古しの既視感で塗り固められたイメージしかない映画も珍しい。
一言で謂えば、退廃映画である。脚本・演出面から言っても。
この聊か気色の悪い人間ドラマを見せつけられては、馬が何頭並んで疾走しようが、そこだけでこの作品を買う気になどなれない。
(昨日は牛の爆走であったが、、、彼らは走るだけの出演でもともと牛馬に罪はない)。
自然の~野生の動物なダイナミックな生態や群れの迫力が見たいのならBBCのドキュメンタリーフィルムを観ればよい。
幾らでも凄いものがある。
これだけの数の馬(映画では3000頭)を走らせた手間に感動する為にわざわざこんな映画を見るほどこちらも暇ではない。
実は、ジョン・ウェインやジョン・フォード系監督の作品を見直したい(肯定的に共感できるところなど探したい)気持ちもあり、その手の映画を機会もあり幾つか見てきたのだが(TVで丁度やっていたし)、もう限界これでおさらばしたいものだ。
最も見たくない監督・主演俳優リスト入りと相成った(残。
この全てが予定調和に運び、どのシーンも一体どこからこんな鄙びたネタ拾ってきたかという如何にもという感覚の上なぞり。
頃合いをみてそれらを徐々に小出しに繋ぎ合わせてゆく。
はい、ここ等辺で男同士の友情を育む乱闘を入れましょう、とか尺を決めて配置する。
まるで、昔のドリフのコントを見る思いだ。(あっちの方がずっと楽しいが)。
まあ、そのワザとらしい乱闘部分が最も不快なところだ。
おちゃらけだが既視感たっぷりのお決まり芝居で嫌味がある。
サム・ペキンパーの対極に位置する。
真面目にやれと言いたい。
普通、あれだけ殴り合えば死人が何人か出てもおかしくはない。
勿論、あの部分をバイオレンスで行けという訳ではない。
確かにリアリティなどそっちのけの映画であるのは分かっているが、コメディとして作っているのでもない。
そこなのだ。
恐らく敵同士戦ってきた男たちが、終戦とともに反目しながらも友情に目覚め、相手の窮地を救い互いの信頼を育んでゆくといった気持ち悪い友情物語を真面目に作っているのだ。
南北戦争が終結した後なら、もう大義も何もない。
馬を売る相手など、金さえ入れば誰でもよい。
合衆国だろうがメキシコの皇帝だろうが、どうでもよい。
勿論、合衆国からのエージェントは明らかにそれによって私腹を肥やそうとするのが見え見えであった。
金を約束通り払うというメキシコ皇帝側に寝返る。
要するに、もうトーマスたちは大義は捨てている。個人主義(個人の価値観)で生きる。それはよい。
ここに野蛮な盗賊が介入し元北軍が、どこかで巻き返しを狙いたい南軍を盗賊の襲撃から助ける。
戦争後の空白期(虚無的なところ)に、友情という価値を彼らは新たに見出す。
更にファレス大統領を擁する革命軍に騙され捕虜にされた南軍を、自分たちの集めた馬をロハス将軍に差し出し又も救い出す。
これでは南軍が負けるはずだよと分かるが(笑。
そしてトーマス大佐たち元北軍の面々は、自己犠牲(転がり込むはずの大金を失う)を払い、かつての敵を最後まで助ける充足感に浸る。
一方南軍は、メキシコに入り巻き返す事は諦め、故郷に帰り新たな生活を始めることにする。
もう敵対はしないという決意であろう。
マッチョな友情~隣人愛の物語とも謂えるか、、、。
そう、余りに「物語」なのである。
分かり切った「物語」をどこかで突き破る、または充溢する強度が端からない。
何というかこの基本的な構図は、映画の作り~脚本、キャスト次第ではもっと何とかなったのでは、、、という気がする。
ロック・ハドソンはあまり、このマッチョで粗暴な雰囲気に染まっておらず良かったが、それ以上の何かでもなかった。
知的な怠惰だけを感じるマッチョ映画であった。
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