殺したいほど愛されて

UNFAITHFULLY YOURS
1984年
アメリカ
ハワード・ジーフ監督
プレストン・スタージェス原案
プレストン・スタージェス監督の「殺人幻想曲」(1948)のリメイクということ。
この映画は観ていない。
「殺したいほど愛されて」という邦題、もう少しナスターシャ・キンスキー側から描かれていれば、とてもピタリな題だと思う。
ダドリー・ムーア 、、、クロード・イーストマン(世界的指揮者)
ナスターシャ・キンスキー、、、ダニエラ・イーストマン(イタリア女優、クロードの妻)
アーマンド・アサンテ 、、、マクシミリアン(プレイボーイの若手バイオリニスト)
アルバート・ブルックス 、、、ノーマン(クロードのエージェント)
キャシー・イエーツ 、、、カーラ(ノーマンの妻)
リチャード・リバティーニ、、、 ジュゼッペ(イーストマン家の料理、世話役)
リチャード・B・シャル、、、ジェス(私立探偵)
ジャズピアニストで作曲家でバイオリンも上手い、ダドリー・ムーアのドタバタ・ラブコメディである。
指揮者役は様になる。
ピアノ伴奏も軽くこなしている場面もあったが、自然で如何にも決まっていた。
彼とマクシミリアンとの”モンティのチャルダッシュ”のバイオリン同士の演奏バトルはちょっと、鬼気迫るものがあった。
バイオリン格闘技か!
やはり楽器を弾かせたら迫力あるひとだ。ダドリー・ムーア!
それ以外はひたすらコミカルだが。
そしてそれがほとんどであった(苦。

妻が自分より20以上歳下で、絶世の美女、しかも周りにはプレーボーイのイケメンが目に付くとあっては、落ち着いて演奏旅行にも行けない世界的指揮者クロード、、、。
家を空ける間、妻を頼む~目をかけてくれと謂ったつもりが、使用人のジュゼッペは勘違いして妻の行動をヘッポコ私立探偵を頼み調査させてしまう。
しかし素行調査とはとても言えない、単にマンションホールに入って来る姿の備え付けVTR画像を調べただけ。
しかもノイズが尋常ではないというお粗末なものである。そこで探偵がクローズアップしたアーガイル模様の靴下。
指揮者と第一バイオリンの間柄のマクシミリアン愛用の靴下らしかった。まさか、とびっくりするクロード。
何故かマクシミリアンがクロードの家で寛いでいた時、絨毯に妻にプレゼントしたカボチャ型のブローチが落ちていた。
ヴィデオをもう少し後まで再生すれば、マクシミリアンの後にマンションに入ってきたのは、ダニエラではなくカーラであることが分かるのだが、探偵の実にいい加減な推測であり煽りである。
しかも、カーラもハロウィーンパーティに向け、同じカボチャ型のブローチを買って身に着けていたのだ。
ここで冷静にマクシミリアンの部屋を使った弁明を聞いておけば、そこで話は落着なのだが、クロードはもう意識~知覚が完全に妻の浮気の枠組みで作動している。それ以外の話~事実は受け付けない。更に元々嫉妬深い性格も災いしている。
アーガイル模様の靴下やカボチャ型のブローチだけで、日頃、引け目を感じているクロードの妄想は悪い方向に膨らむばかり、、、。
ついに嫉妬と怒りに狂い、妻殺しを決意する、、、?こういう方向性もあるのか、、、。
妄想で突っ走る人なのだ、、、芸術家にはいそうであるが。
コンサートで「チャイコフスキーのバイオリン協奏曲ニ長調作品35」のオーケストラ指揮をしながら、指揮の方は上の空で妻を殺害しその浮気相手と勝手に決めつけたマクシミリアンをその犯人に仕立て上げ、死刑にしてやろうという妄想に耽り、不気味な高笑いをする。
マクシミリアンは明らかにそれを見て不可解な顔をしている。
客は立ち上がって熱狂的に拍手を送っている。流石に名指揮者である。
それがクロードの計画~妄想としては、完全犯罪で高笑いなのだが、実際に実行に移すとなると、全く上手くゆかない。
マクシミリアンを眠らせるつもりで出した睡眠薬入りのコークは自分で飲んでしまうし、、、。
ミスタービーンか?と言いたくなる。
その後の手際については、ミスタービーンの方が数段上である。
何をひとつやるにしても、ズッコケぱなしで笑わせるが、これで完全犯罪など100年早い。
ひとりでドタバタしている間に、真相が分かると同時に悪事がばれクロードはダニエラにこっぴどく叱られる。
結局、マクシミリアンがイーストマン家を借りてカーラと浮気をしたことを、クロードがダニエラとの浮気と誤解したのだった。
とは言え、ひとの家を浮気場所に使うこと自体、誤解を生む可能性の大きい迷惑行為だ。
まして、この家の妻は、一際目を引く美貌の持ち主、夫は人一倍嫉妬深い男で、大変危険ではないか。
他でやれというところだ。
観終わってみれば、ダニエラ以外、みんなどうなってるんだというひとばかりであった。
最後は自分で飲んだ睡眠薬のおかげで呂律も回らない夫を美貌を誇る若き妻が背負って家に連れ帰るという、かなり痛い何とも言えないハッピーエンドのコメディ、であった。

ダドリー・ムーアがピアノのプロとしての腕前を封印して、指揮者に専念していたが、ちょっとは、見事なピアノソロなど聴いてみたかった。(勿論、クラシックで、、、ジャズではなく)。
バイオリン演奏は聴けたのでそこは、得した気分であるが、、、(お相手は、吹替だろうな)。
ナスターシャ・キンスキーは確かに類を見ない美しさである。が、わたしは思わずあのお父さんの顔を思い浮かべてしまった(爆。
物凄い怪優(クラウス・キンスキー)であるが、何故かこの天下の美女に似ているのだ。
何故か似ている。
不思議だ、、、。
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