アフリカの女王

The African Queen
1951年
アメリカ・イギリス
セシル・スコット・フォレスター原作
ジョン・ヒューストン監督・脚本
ハンフリー・ボガート、、、チャールズ・オルナット(アフリカの女王号船長)
キャサリン・ヘプバーン、、、ローズ・セイヤー(宣教師)
この辺で過去の傑作名画を観たくなってくるというものだ、、、(笑。
ドイツ領東アフリカの奥地で布教活動をしていたセイヤー兄妹であったが、第一次世界大戦が始まりいきなり村をドイツ兵に焼き打ちされてしまう。住民は皆兵士として働かされるべく連れ去られてしまった。
ローズの兄はそのショックでこころを病み死んでしまう。
チャールズに頼みローズは彼の古ぼけた小さな蒸気船「アフリカの女王号」に乗せてもらう。
何処に逃げるというものではなく(包囲されていて逃げ場もない為)、ローズの提案でドイツ軍に対する報復攻撃を仕掛けにゆくのだ。
ローズの案は、敵の戦艦を魚雷で沈めるというもの。
チャールズは最初は、ドイツ軍の砦が途中にあり、急流、激流、大瀑布が続き、最後に湖に出たところに砲艦ルイザ号が控えていることを訴えその無謀さを訴えるが、結局その計画を呑むことになる。
酸素ボンベと爆薬90㎏に弾包と釘と木片を使った手製の信管でチャールズは魚雷を作りあげてしまう。
ローズのチャールズを見る目も変わってくる。彼はかなり優秀なエンジニアであり手先も器用で信頼できる男だ。
ただその過酷な川を抜け湖まで達することが、どれだけの苦難の連続であったか。
これは今思い返すだけでも、しんどくなるものだ。
大変な急流を降りてチャールズはてっきりこれで、ローズは懲りて計画を撤回すると踏んでいたのだが、その体験をかえって面白がり、その先に進もうと譲らない。川をよく知るチャールズは、それに続く激流や大瀑布では到底船ももたず命が10あっても足りないことを言い聞かせる。だが、ローズは全く怯まない。
彼は川下りを辞め酒を呷り不貞腐れるが怒ったローズの無視に耐え兼ね、結局意を決する。
それからは、ドイツ軍砦で遥か上方から銃撃を受け船のボイラーが損傷する。
応急処置と、逆光で船が見定め難くなったところを何とか逃げ出し命拾いする。
ローズはここでも銃撃戦を面白がるような事を言い、事態を前向きに捉えひたすら進めてゆこうとする。
しかし窮地を脱したかに思えたときに、大瀑布である。
これにはふたりとも大いに肝を冷やすが、何とか船は持ちこたえ沈没からは免れる。
だが、異音に気付き船を水中から確認すると、スクリューの羽が一つ欠け軸も曲がってしまっていた。
これではまともな航行は不可能になる。
最早万事休すと諦めるチャールズに対し、ローズは船から羽と軸を取り外し、陸で熔接などにより直せばよいと、また提案する。
この具体的で実現可能な前向きな案に半ば呆れかえりながらも、その通り実行したら本当に直ってしまった。
チャールズのローズに対する姿勢も変わってくる。まさに大したものだという目つきだ。
知性と企画力と実行力である。船の舵取りもこの間にマスターしてしまった。これぞ理想的な女性管理職の姿であろう。
しかし折角大苦労して船を動かしたのに沼に迷い込んでしまうのだった。
この物語でもっとも絶望的な悪夢のシーンだ。
船を櫂で漕ぎ、水に入ってロープで引っ張り、どれだけ努力しても沼地獄を抜けられない。
蛭にたかられたりしているうちに、ついにチャールズは力尽きて倒れてしまう。
さすがに二人とも冗談も強がりの言葉も尽きてしまう。
とうとうふたりとも死を待つだけの状況に行きついたかという時に、にわかに大雨が降りだす。
朝ふたりが起きると増水したお陰で船は湖に浮かび出ているではないか、、、。
それを知ったふたりの安堵感と朝の光景の希望に輝く美しさには共感を覚えるに充分なものがある。
すると水平線から目標としてきたドイツ帝国砲艦ルイザ号が120ノットでやって来るではないか。
ふたりに元気が戻る。
船を葦の叢に隠し、信管をセットして「アフリカの女王号」に二機装備する。
船は有終の美を飾らせるため綺麗に磨き、イギリス国旗を高々と掲げる。
そしてルイザ号が120ノットで戻って来る時間を狙い「アフリカの女王号」にふたりで乗り込んで行く。
(その前に自分だけ行けばよいと散々やり合ってからの、あなた無しに生きる意味はないと、二人乗りに決定)。
だがここで、最大の挫折が二人を待っていた。
また突然の暴風雨により敵戦艦を目前にしての船の転覆である。
結局、ふたりはルイザ号に捉えられ、絞首刑と判決が下る。
だがその前に、チャールズが船長に自分たちの結婚式を挙げさせてくれと頼む。ローズはそれにいたく感動する。
ドイツ軍指揮官も神父の役を引き受けることとなり、絞首刑ロープの下で式が執り行われる。
そんな時に、まさにジョーズの如く転覆した「アフリカの女王号」がルイザ号向けてヒタヒタと近づいて来るではないか、、、。
実に面白い映画である。
戦争が舞台であるが、ふたりのスリリングでハードなアドベンチャーを通したラブストーリーであった。
当時アメリカは、強烈な赤狩りの時代でもあり、キャサリンも”言論自由の会”に名を連ねていた関係上、かなりの逆風に晒されていたことは想像に難くない。
この映画での前向きに立ち向かい現実を切り開いてゆこうとする凛々しいローズの姿は、彼女自身の生き方にピタリと重なっていると感じられた。
後から感動がやって来る。
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