イーオン・フラックス

Æon Flux
2005年
アメリカ
カリン・クサマ監督
フィル・ハイ、マット・マンフレディ脚本
シャーリーズ・セロン、、、イーオン・フラックス(反政府組織モニカンの女戦士)
マートン・チョーカシュ、、、トレヴァー・グッドチャイルド(ブレーニャ政府議長)
ジョニー・リー・ミラー、、、オーレン・グッドチャイルド(トレヴァーの弟)
ソフィー・オコネドー、、、シサンドラ(モニカンの女戦士、改造人間)
フランシス・マクドーマンド、、、ハンドラー(反政府組織モニカンの司令塔)
アメリア・ワーナー、、、ユナ・フラックス(イーオンの妹)
ピート・ポスルスウェイト、、、キーパー(飛行船レリカルのDNA管理者)
ちょっとキャットウーマンぽい感じでこちらも観てみたが、大変練り上げられたシリアスな作品であった。
見ごたえは充分である。
「一度きりの本物の人生を生きるために闘う」戦士の物語である。
2011年に致死性のウイルスにより人類の99パーセントが死滅という前提には、感覚的に違和感は持ってしまうが、舞台はそれから400年後の世界である。
ブレーニャという壁に囲まれた都市に生き残った人類は住んでいる。その外は汚染地域とされ隔絶されていた。
空には飛行船レリカルが浮かんでおり、都市に住む人間のDNAを上空で管理している。
一切発言の機会がないほど人々は管理されており、行方不明者が続出していた。
高度に発達した科学は徹底した管理に利用されている。
反政府組織モニカンの司令塔ハンドラーは口移しのカプセルを介し、脳内パルスによってイーオン・フラックスに統治者のグッドチャイルド家の転覆のための破壊活動を命じる。
強力な管理により必然的に生じるレジスタンス(モニカン)の一掃に政府は力を入れているのだ。
モニカンの監視施設の破壊任務では、その組織潜入から中枢システム破壊までの手並みが滞りなく鮮やかで、いかに彼女が優秀でクールな戦士であるかが分かる。
シャーリーズ・セロンの一連のシャープな動きで、彼女の凛々しさと美しさが一際冴える。
しかも柔軟性が尋常ではない。(クラシックバレイで鍛え抜かれたものだという。納得)。

統治者の議長トレヴァーは、かつてウイルスから人類を救うワクチンを開発したが、その副作用で自然妊娠ができなくなってしまった。その為、人々には仮想妊娠にクローン技術を用いて、子供を自然に授かったと錯覚させていた。
人類は、クローンで再生されて生きながらえてきたのだ。
今現在のトレヴァーは、オリジナルから数えて7代目だという。
その間、不妊治療法の開発を代々使命として受け継いできた。
その戦いの最中、結婚したばかりのイーオンの妹ユナが、体制組織(警察)にモニカンとされ射殺される。
そして司令塔ハンドラーから、イーオンに今度は議長トレヴァーの暗殺を命じられる。
彼女にとっては妹の敵であった。
しかし決死の覚悟で潜入して徐々に明かされてゆくことは、、、。
(潜入するまでの同志シサンドラとのアクションはまるでゲーム画面を楽しむようなスリリングなものである。潜入後のアクションも勿論、ゲーム感覚で冴えている)。
しかし同時に自分の意識に妙に引っかかってくる記憶が鮮明になってきて、それが任務の遂行でケリのつく問題ではないことが分かってくる。

トレヴァーは、不妊治療の薬を研究の末、漸く開発に成功していた。
これで人類は自然に生まれ死ぬことが可能となるはずだったが、それを恐れた弟に研究データを処分されてしまった。
しかも彼は兄を殺害して自ら議長となり、自分が永遠にクローンで生き続けようとしていたのだ。
中枢組織でのクーデター計画が着々と進んでいたのである。
弟はどうやら現状をユートピアとして死守しようとしていたのだ。
更に驚くべきことは、殺された妹はコミュニティ内で初めての自然妊娠であったことが判明し、まさにその為に殺害されたのだった。
弟のクーデター組織は警察を使い、すでにその後に自然妊娠しはじめた母体を尽く殺害してきたのだった。
研究成果は潰されたが、自然が元の生殖~妊娠サイクルを取り戻す兆候をはっきり示し始めていたのだ。
イーオンは、妹のDNAで生まれたひとりの赤ん坊を探し出す。
すんでのところで、警察に爆殺される前に彼女と両親を救う。
この後はイーオンたちとオーレン陣営との激しい銃撃戦が繰り広げられてゆく。
ここの銃撃アクションも凄まじい。サムペキンパー並みの撃ちまくりである。
そしてシュワルツネガー並に、イーオンには銃弾は当たらないが、展開はなかなかドラマチックなのだ。
結局、弟たちを全員射殺し、彼女は最後の仕事と言い飛行船レリカルの爆破に向かう。
そのなかの老科学者キーパーこそ、かつてオリジナルトレヴァーの妻であったキャサリン(今のイーオン)のDNAを弟が始末するように命令したにも関わらず、残し続けたその人であった。
それが必ず人類にとって救いとなるはずだと思ったからだと言う。
彼の判断が正しかったのか、、、それまで400年以上待ったが。
トレヴァーとイーオンに引き継がれた記憶が鮮明に蘇る。
初代がデートの約束をした頃の記憶まで、、、。
こういう記憶は美しい。

爆破されたレリカルが都市の壁をぶち破り墜落する。
人々は壁の外に希望を携え出てゆく。
「人は死ぬものよ。だから生きる意味がある。」
「亡霊みたいに生き続けるのはまっぴら!」
終始颯爽としたイーオン~シャーリーズ・セロンであった。
後味の良い作品である。
個体の経験を遺伝的に後の世代が受け継いでしまう例は確かにある。
例えば恐怖体験などは、確認されているものがあるという。
種の保存にも関連してくる要素であるだろうし、、、。
クローンは通常、考えられないことだとは思うが、この映画ではトレヴァーは代々その件(妻への想い)については写真も含め申し送りして伝達していったようである。では、イーオンが何故、朧げにも彼に出逢ったときから「その記憶」に引っかかり続けていたのか、、、これはまさしく「オブリビオン」と同じパタンではないか、、、と思うとふいにわたしは目頭が熱くなるのだった、、、。
人間にしかない想い。想いの強度である。
それを信じ、それに賭けて何が悪い。
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