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反撥

Repulsion001.png

Repulsion
1965年
イギリス

ロマン・ポランスキー監督・脚本

「水の中のナイフ」「ローズマリーの赤ちゃん」「袋小路」どれもとても印象深い。
「袋小路」では特にフランソワーズ・ドルレアックの美しさが際立っていた。
凄い姉妹がいたものであるとつくづく思う。
もっとも姉の方は美人薄命であったが、、、。

雰囲気的には「ブラック・スワン」に近いものを感じた。向こうがこれに近いのだが。
デヴィッド・リンチに通じるものは勿論、濃い。

カトリーヌ・ドヌーヴ、、、キャロル・ルドゥー (美容院で働く)
イアン・ヘンドリー、、、マイケル(姉の妻子持ちの恋人)
ジョン・フレイザー、、、コリン(キャロルに一方的に言い寄る男)
イヴォンヌ・フルノー、、、ヘレン・ルドゥー (姉)


この狂気のディテールの描きこみは、まさにシュールレアリスムだ。
心的状況を克明にリアルに描写することで、異様な時空の歪みが出てくる。
カメラワークも秀逸だ。遠近法を加速させた扉から扉への視線とか、、、最初の目の接写などまるでこちらがブニュエル?
最後のとても意味ありげな(意味を持たせているが)キャロルの子供のころの写真のアップ、、、。
演出が饒舌。コンセントを入れずにアイロンがけしているところなど、、、細やかな狂気の描写。

まずキャロルの潔癖性が発端の症状として始まる。
彼女は姉の家に住んでいるが、姉の不倫の恋人がそこに寝泊まりしていることに対する嫌悪感が募っていた。
病理的には何とも言えないものだが、奔放な姉と愛人の恋愛関係が現実に彼女に引き起こした影響は小さくはない。
リビドーの強烈な突き上げと性に対する(その対象~男の醸す生理的な)嫌悪が綯交ぜになり、それを内面化して内向してゆく。
無表情にしきりに無意識に鼻をこする。
無気力と無感覚が彼女を支配してゆく。

美容院で客に怪我を負わせて、外に出られなくなるにつれ、症状は重くなる。
アパートの室内は荒れて行き、ジャガイモからは芽が出て、(ウサギの)肉料理はテーブルに放置されたまま腐臭を放ってゆく。
この引き籠りと無秩序ぶりは相当重度になっているが、姉は恋人と旅行に出て行ってしまっている。
独りで放置されると症状の悪化はおそらく加速するだろう。

カトリーヌ・ドヌーヴの端正で硬質な美が狂気を孕むと、かなり不気味で怖い光景を生む。
冷ややかで無垢な感触が、悍ましさを増幅する。
連動して歪む時空がその相貌を顕にしてゆく。
部屋のスイッチを切ったかと思えば、壁に大きな亀裂が走る。
不安な足取りを多くの手が絡めとろうとする。
時計の音の異様な響き。
突然、現れ彼女に乱暴する男の幻影。

情緒を完全に失った真っ白な顔。
彼女に熱い思いを寄せるコリンがその情熱を滾らせ部屋にやって来た時の人形のような冷えた対応。
こちらを窺っていた向かいの老婆が部屋の扉を閉めると同時に、彼の頭を鈍器で滅多打ちにして殺す。
無表情で屍を引きずりバスタブに沈める。

部屋を内側から釘で打ち付け閉ざす。
外に出て逃げないのだ!そんな選択肢は彼女には最早存在しない。
内側に尚も深く閉じ籠ろうとする。
この心的な状況こそ恐ろしい。

突然ブザーが鳴り響き、家主が扉をこじ開けて入ってくる。
彼は家賃が収められていないことに激怒し乗り込んで来たのだった。
しかしキャロルがすんなり家賃を手渡すと、今度は彼女に言い寄ってくる。
仲良くなれたら部屋代はタダだと言って抱き着いて来たところを剃刀で首を切りつけ、その後は滅多切りにして殺す。
ソファの向こう側に遺体は落ちる。

荒れ放題の電話線も切断されたアパートに姉と不倫相手が旅行から帰って来る。
ベッドの下から全く生気を失ったキャロルが発見される。
しかし姉の愛人に抱きかかえられてゆく姿は妙に怪しい笑みと言い、これからどう変貌してゆくのかまた不安をわれわれに植え付けるものだ。


これもロマン・ポランスキーの、ただものではない作品であった。



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