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GOMA28

Author:GOMA28
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白い恐怖

Spellbound001.jpg

Spellbound
1945年
アメリカ

アルフレッド・ヒッチコック監督

サルバドール・ダリが演出に関わっており、音響には「テルミン」も使われている。
夢が重要なファクターであれば、シュールな効果に期待は膨らむ。

イングリッド・バーグマン、、、コンスタンス・ピーターソン博士
グレゴリー・ペック、、、エドワァズ博士(新院長)、ジョン・バランタイン
レオ・G・キャロル、、、マーチソン(前院長)
マイケル・チェーホフ、、、ブルロフ(コンスタンスの指導教授)


『魅了された』

フロイドの精神分析(夢判断)の手法を武器に真相に迫るピーターソン博士を演じるイングリッド・バーグマンであるが、彼女の知性美のオーラ極まる映画である。

これが終戦の年に製作された映画とは、驚きである。
カメラアングルも面白い。牛乳を飲む当人目線でのカメラ~コップから白への繋がり、、、などちょっと笑えてしまう。
白そして縞の線の伏線がやがてスキー場のゲレンデへ、、、。
スキーを滑っている際の合成画面だけは、時代を感じさせ残念であった。
あそこのシーンだけは、ロングショットかクローズアップで上手く表現~演技して、中途半端な距離感は持たせないようにした方が良かったと思う。

噺は、精神病院の院長を長年勤めてきたマーチソン博士が更迭され、新たに著名な著書を幾つも出版しているジョン・バランタイン博士が院長の座に就く日から始まる。
非常な堅物で仲間内でも有名であったピーターソン博士であるが、彼を見るやいなや恋に落ちてしまう。
しかし、そのバランタイン博士は、白地に線の入ったものを見ると急に発作に襲われ取り乱してしまうのだ。
ピーターソン博士は更に、筆跡から彼が別人であることにも勘付いてしまう。
ここからスリリングなサスペンスドラマが展開してゆく。

ピーターソン博士は、ジョン・バランタインの強迫的罪悪感の分析を彼が途中で何度も投げ出し逃げようとするにもめげず、追いすがって徹底的に行う情熱的かつ理性的な女性である。患者側からすれば、真実など分からぬままで病気の奴隷となっていたほうが楽なことが多い。
「何故、自分自身から逃れようとするのか。」
「真の姿を知りたくないからだ。」
「ヒトは別の重い病気にかかってそれを忘れようとする。」
印象的なセリフが多い。(どれも無駄はなく細やかに伏線となってゆく)。

この場合、そのままにしておけば、彼は殺人犯とされてしまう。
彼女としては、分析を続け彼を治して、罪の意識から開放してあげたい。(さもないと一生そのトラウマからは逃れられない)。
警察も動いており、一刻を争う事態に追い込まれている。
ピーターソン博士は理論と感性・直感の両者を信じて一途に突き進む。
(バークマンはこういうブレない知的な役柄が実に似合う)。
分析だけでなく推理も冴えており、探偵みたいな感覚もあるし行動力も凄い。
(ジョンは恋人というより息子みたいに手を引っ張られ連れて歩かれている(笑)。

ただ、最初は高名な精神分析界の学者であるエドワァズ博士に惚れた部分は大きいと思うのだが、彼女はあくまでも正体の分からぬ場合によっては殺人犯かも知れぬその男に全く変わらぬ思いを寄せることができたのか?
「あなたは誰?」と問いを発したとき、想いが覚めるより研究者としての知的好奇心・探究心が発動した部分は大きいだろう。
そしてジョンが悪い男ではないと直覚していた。(所謂、女の勘だ)。
信じる力は大きい。やはり、ここか?
彼女は実際にジョンが記憶を喪失したときの状況を再現してその時を思い出させる療法に出た。
もしその時殺人をしていたら、かなり危険な事態ともなりかねない。
ジョン自身も自分が犯人であることを認め諦めようともしていた。

彼の場合は発作が起こると自らを失い危険な状態に陥る。
相当に根深い、幼年期のころの強いトラウマがあるのだ。
結局、彼の抵抗(防衛)をかわしながら分析を詰めるうちに、ジョンとエドワァズの関係は明らかになる。
エドワァズと一緒にゲレンデを滑っていたジョンは、彼の所属していた医療部隊が銃撃を受け火傷を負ったときのPTSDの治療をエドワァズから受けている患者であった。しかし雪のゲレンデで、エドワァズが崖から転落してゆく様子と子供の頃誤って事故で弟を死なせてしまったシーンとが重なって大きなショックとなり、彼はエドワァズ博士に同一化してしまったのだ。その際、自分自身の記憶は封印された。ただ、無意識的に意図的に弟を死なせた子供の頃からの記憶から逃れるためにエドワァズ殺しで埋め合わせようとしていたのだ。一種の合理化である。
彼女の分析のお陰で、彼はエドワァズには一切手をかけてはおらず、子供の頃に死んだ弟も事故であったことをシーンとしてありありと彼は思い出す。

分析終了。
彼と彼女は無実と確信したのだが、警察からその件は事故ではなく殺人だと告げられ、逮捕されてしまう。
死体には銃で撃たれた跡があったのだ。
この急展開に酷く落胆はするが、彼女ピーターソン博士は諦めなかった。
その後、彼女は院長がエドワァズ博士と旧知の仲であることを会話の中で知り、矛盾に気づく。
彼マーチソン博士は引き継ぎの際、ジョン・バランタインをエドワァズ博士として普通に迎え入れていたではないか!
おかしい。ここで彼女は確信し、マーチソンを問い詰める。
マーチソンは院長を更迭された恨みから後任のエドワァズ博士をスキー場で背後から射殺したのだ。

最後のピストルを構えられた時の冷静な理路整然とした彼女の説得はこれまた大したものだが、一番ハラハラさせられた。
マーチソンは彼女に向けた銃口を自分に向けるしかなくなる。

Spellbound002.jpg
目の描かれたカーテンを引き裂く。
ダリの絵が夢の世界の表象となる。
このシュールな夢シーンからは、ヒッチコック監督の実験的な映画に挑む野心を感じた。
ダリを起用とは贅沢だ。

無駄のない、締まった映画であった。

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