デイ・アフター・トゥモロー

The Day After Tomorrow
2004年
アメリカ
ローランド・エメリッヒ監督・脚本・原案・製作
デニス・クエイド 、、、ジャック・ホール
ジェイク・ギレンホール 、、、サム・ホール
イアン・ホルム 、、、ラプソン教授
エミー・ロッサム 、、、ローラ
ジェイ・O・サンダース 、、、フランク
セーラ・ウォード 、、、、ルーシー
アージェイ・スミス 、、、ブライアン
「近い将来」
「13F」、「インデペンデンス・デイ」の監督である。しかし、「ハリウッド・ゴジラ」の監督でもあった、、、(苦。
13Fは傑作であったと思う。
「バンテージ・ポイント」のデニス・クエイドと「遠い空の向こうに」のジェイク・ギレンホールが父子を演じる。
どちらも良い役者でそれらの作品も強く印象に残っている。特に「遠い空~」、、、フォン・ブラウンをヒーローとして目を輝かせる少年の物語には泣けた。
しかし、わたしは余り映画好きではない為、途中で少しでも抵抗を感じてしまうと、止めてしまう。
映画を見ること自体に苦痛を覚えることが多い。
だがこの映画については、壮大な雪、氷、風ばかりの「氷河期」の世界であるため、何故か気持ちよく見ることが出来てしまった。
地球環境、資源、経済、政治問題をセットに組んだ上で、親子・隣人愛を描いた作品である。
だが、何をおいてもわたしは「氷河期」という一種の恍惚が好きなのだ。
それだけで、この映画の空気と白銀に馴染み、気に入ってしまった。
(わたしは、学生時代「氷河期」をテーマに戯曲をひとつ作った。探せば出てくる、、、(笑)。
VFXは今見ても見事であり、シーンによっては、エポック・メイキングなものもある。
例えば、巨大なタンカーが音一つなく、ビルの立ち並ぶ市街地に旧約聖書の『創世記』的な出現をする。
この時の人々の畏怖の念に表情を強ばらせ無言でその巨大なモニュメントを見つめるシーンは印象的だ。
そう、氷河期こそ全てが白く埋もれてしまうかと想うと、有り得ないものが忽然と出現するのだ。
恐らくここで、この事態の宗教性がもっと顕になってもよかった、、、。
自由の女神についた氷の形(氷柱)も見事であった。
ひたすら荒涼として残酷で美しい光景がいっぱいに広がっていた。
これだけで酔えるものだ。
前半、地球の気象の激変を鋭く見抜いた気象学者ジャック・ホールのアメリカ政府との孤独な闘いが描かれる。
その変化の原因はともかく、引き起こされた事態は全世界的に途轍もなく危機的なものである。
世界の首脳たちにもそれを力説するが、政治家は尽く目先の経済問題しか念頭にないため彼を黙殺しようとする。
その後、彼を理解するラプソン教授が数少ない彼の支えとなってゆく。
だが、次第に地球環境が彼の力説した通りの状況に近づき、政府も彼の提唱した気象モデルを頼り、方針を固める。
大統領もジャック・ホールの説を受け入れ、対策を講じ命令を下す。
アメリカ北部の人間は外には一切出ず、室内で火を焚き寒気の収まるまで篭る。
南部の人間はメキシコに難民として受け入れてもらう。(今米政府はそんなことは想像だにしていまいが、いつそんなことが起きるかなんてわからない)。
しかし、大統領一行はニューヨークで吹雪に囚われ全員死亡してしまう。
後半は、ジャックに対しもっとも反対し敵意を抱いていた副大統領が大統領として指揮を執る。
だがすでに彼はこの壊滅状況を前に傲慢さを打ち砕かれ、認識を改めこころを入れ替えている。
ジャックは、この時点では私人として息子のためだけに生きる父として行動してゆく。
息子に必ず迎えにゆくと約束をしていたのだ。
すでに公人としてやるべきことは終えていた。
息子のサム・ホールとその仲間の高校生たちは極低温下のニューヨークにまだ足止めとなっている。
ここで果敢に彼らは生き延びようと闘い続けていた。
傷から感染した肺結核を起こしたローラを助けるため、巨大なロシア船から薬を探しにゆくが、始めの頃、動物園から逃げた狼がそこにやってきていたのだ。
危機を乗り越えながら耐え忍んで待っていると、図書館まで大変な労苦と犠牲をはらいつつやってきた父親とついに再会が叶う。
ニューヨークにまだ人が生きているという情報が緊急本部にもたらされヘリがやってくる。
上空から見下ろす彼らの目に、ビルの屋上に登り沢山の人たちが救助を待っている様子が捉えられる。
人類の希望の光が射してくる。
大統領の自戒の念を込めた声明文がTVから世界に向けて流される。
ここには強がりは一切なく、協調と感謝が述べられている。
(特に途上国に対して。何といってもメキシコにおいた臨時政府からの放送である)。
そして、化石燃料使用についての反省も。実はこの人、副大統領時に京都議定書の調印を拒否している。
エネルギー問題と環境問題に関して、同時に発展途上国に対する政策も含めこのように考え始めなければならない、今の時代そのものであろう。
この時、空気があんなにすっきり澄み渡っているのを初めて見た。
と人工衛星の飛行士が言っていたが、きっとそうだろう。
凍結した後とは、そんなものである。
ひたすら美しいはずだ。
(少し気象が戻るのが早すぎるのだが)。
感性で観る映画である。
一連の温暖化現象に関しての説の細かい事を気にせずに観る作品である。
途中で、一時メキシコ側がアメリカ難民を拒否して締め出そうとする場面が面白かった。
今そこに壁を作ろうというのだが。
常に自分たちが優位な立場でいられるかどうか、、、ひとつ大きな気象変動が起きたら、誰もがどうなるか分からぬ危ういところに立っているのは確かだ。
- 関連記事
-
- レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード
- ワールド・オブ・ライズ
- デイ・アフター・トゥモロー
- 最高の人生のはじめ方
- シャイン