PICKUP
ザ・ミスト
末期の目
美しき冒険旅行
レヴェナント: 蘇えりし者
バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
シャイン
トイレのピエタ
カッシーニ グランドフィナーレ
ゴッド ファーザー
それでも恋するバルセロナ
シチズンフォー  スノーデンの暴露
透明な身体性
森羅万象を描く デューラーから柄澤齊へ
ヴィデオドローム2 ~イスラム国 ~アノニマス
魔術師
ブラック・スワン Black Swan
見えない重力を描く Ⅱ
美の翳りに寄せて
LUCY ルーシー
ミツバチのささやき
娘ふたりと女子美へ☆彡
父 パードレ・パドローネ
写真についてーⅡ
去年マリエンバートで
午前零時の奇蹟(シュル・レアリスム覚醒の時間)
パーフェクト・デイ ~ルーリード ~ローリー・アンダーソン ~スーザン・ボイル
未来派の画家~ウンベルト・ボッチョーニ
Balthus ~ バルテュス展行ってまいりました。
「ゴールドベルグ変奏曲」 バッハ  ~グールド ~P・オトゥール ~ニーチェ
大昔のスケッチ(詩画集のための試作)
すでに世界は終わっていたのか ~ ヒエロニムス・ボスその1
スヌーズレン002
情報リテラシー  ~華氏911 ~不都合な真実
南伸坊「歴史上の本人」
プラトーン
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

英国王のスピーチ

The Kings Speech

The King's Speech
2010年
イギリス

トム・フーパー監督 ミュージカル版「レ・ミゼラブル」の監督だ。近いうちにこれについても書きたい。
デヴィッド・サイドラー脚本

使われたベートーベンの交響曲7番やピアノ協奏曲5番は、演出という点で完璧なシチュエーションで使われていた。

コリン・ファース、、、ジョージ6世
ジェフリー・ラッシュ、、、ライオネル・ローグ (植民地出身の平民の言語療法士)
ヘレナ・ボナム=カーター、、、エリザベス妃
ガイ・ピアース、、、エドワード8世

ともかくキャストが良い。
コリン・ファース(イングリッシュ・ペイシェント裏切りのサーカスリピーテッド、、、等々)も良いが、何といってもジェフリー・ラッシュである。「クイルズ」「 やさしい本泥棒」「鑑定士と顔のない依頼人」と圧倒的な存在感を見せつけられ、今回もまた、である。
ヘレナ・ボナム=カーター(シンデレラダークシャドウアリス・イン・ワンダーランド)にガイ・ピアース( アイアンマン3 メメント L.A.コンフィデンシャルプロメテウス、、、)と、、、芸達者揃い。特殊メイク(バートンもの)でない真面目?でノーブルなヘレナの演技もしっかり観れた(笑。

エリザベス女王の父に当たる人である。
女王はとてもご長寿であるが、ジョージ6世は52歳で亡くなっている。
途轍もなく苦労した人だということだけは、この映画を見て身に滲みて分かるが、その内実など想像もできない。

吃音に悩まされ、本来王を継ぐはずの兄の身勝手に振り回され、ひたひたと迫る第二次世界大戦を前にして即位となる。(それにしてもエドワード8世は人として許される範囲を越えている)
そして戦争スピーチが国王としての実質デビューとなった。
これ程の重責に耐えられる人がこの世にいるだろうか、と問いたい程の困難極まりない役回りを、吃音を克服しつつ切り抜けるのだ。
王室に生まれなければまだ逃げ道はあっただろうに、この人には何処にも逃げる場所がなかった。
第三者にこの重圧と苦悩の内など分かろうはずもない。
(しかし誰もがお互いの苦悩など原理的に知りえないものだ。何故なら遡行すればその源泉は無意識層にまで達しているため)。

またこの戦争の張本人でもある敵国のヒトラーが天才的な演説家であった。
その圧倒的な力とカリスマ性に比べて、ますます自分の吃音~表出力に悩み苦しんだはずである。

ローグが彼に聴く。
いつから吃音になったのか?生まれつき吃音の者はいない。
5,6歳からだと教えられている。
その頃の生育環境を問いただすと、精神的または肉体的な矯正と虐待とも言える経験を潜ってきていることが分かる。
また意識に上ってこない深い外傷経験も経ている可能性はある。
制限も躾も厳しく、子供時代に誰もがやってみたいこと、プラモデル作りなど我慢しなければならなかった。
(楽しそうに今になって、ローグの家で彼の子供の作りかけのプラモ作りをする姿は、ある意味不憫である)。
だが、人というものは、そういうものだ。
これは自分を振り返ってみても同然のこと。
多くの不条理な暴力の記憶が津波となって今でも激しく打ち寄せてくる。
しかも自分自身も判然とせず、未確認の因子に悩まされることも多い。絡みつくヘドロか?
誰もが度合いの問題で今現在を生きていると考えられる。


ローグがいみじくも言っている。
「彼は自分自身の影に怯えている。」
彼が歌に乗じて喋ったり、咄嗟に怒って怒鳴る言葉には何の滞りもないのだ。
改まり話そうと意識した瞬間に、必ず詰まる。
ローグは徹底して彼流の治療を試みる。
それは全く対等の関係で築かれるものであり、自分をドクターとは呼ばずにライオネルと呼べと遠慮もなく告げ、ジョージについても陛下、又はサーと呼んでくれといっても、バーティと呼ばせろと、あくまでも親しい名前で呼び合うことを要求する。
これはかなりの頑固者だ。最初からジョージは抵抗感を募らせる。

ローグが彼に対して、施した治療過程はほとんど見られなかったが、身体的に訴えかける療法に重きを置いたものだと思う。
怒りなど、その境にある表出行為をはじめ、そのあたりを上手く意識的な表出へと向けていったはずだ。
ローグが、オーストラリア移民で医師免許も持たないアウトサイダーであったことも、きっと幸いしたと思われる。
また、御用医者が沢山いたであろうに、そのような存在を探し当てた妻のエリザベス妃の功績は大きい。
ここでは崩れそうな場面で、彼女は夫を暖かくさりげなく支えている。

ドイツに対する宣戦布告のメッセージを読む場面は最大の見せ場であるが、ここでのベートーベンの音楽の使い方が最高である。
彼らの友情の絶対的な信頼のもと、それは厳かに始まった。
その間ずっと息を殺して緊張して聴き入る妻と娘たちの気持ちは、本当に共感できるものである。
そのかいあって、9分に及ぶ大演説も成功裡に終わった。

"W"でつっかえたな、というローグの指摘に、わたしだと分かるようにわざと間違えた、と返す余裕をもっていた。
彼ジョージ6世は、確実に自信を得たことが分かる。
その姿には威厳が感じられる。
(この変化、役者が上手い。彼の吃音の演技の間の取り方も絶妙に変化してゆく)。


最後にローグがはじめてバーティではなく「陛下」と呼んだのは、もはや彼が自分の患者ではないという意味を示す。
そして、ジョージとしては、ふたりの娘に絶賛されたのが、何よりほっとしたのでは、、、。
ジョージ6世は、ライオネル・ローグに功績を讃えてロイヤル・ヴィクトリア勲章を授けた。
これ以降の戦争スピーチ全てにローグは立ち会うことになる。
ここからまた、ふたりの真の友情が始まるのだ。
厳しい大戦のなか、、、。
ジョージ6世は、抵抗運動のシンボルとなっていく。


キャストが良く音楽がマッチすると、見応えは大変増すものである。
特に間の取り方の至芸を、楽しむ映画でもあった。

The Kings Speech002



関連記事

COMMENT

EDIT COMMENT

非公開コメント

プロフィール

GOMA28

Author:GOMA28
絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
基本的に、日々思うことを綴ってゆきます。悪しからず。
コメント、メッセージ頂ければ嬉しいです。

*当サイトはリンクフリーです。

検索フォーム
ブロとも申請フォーム
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

QRコード
QR
最新トラックバック