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アメリカン・ビューティー

American Beauty

American Beauty
1999年
アメリカ

サム・メンデス監督
トーマス・ニューマン音楽
アラン・ボール脚本


ケヴィン・スペイシー、、、レスター・バーナム(広告代理店~辞めてハンバーガーショップ店員)
アネット・ベニング、、、キャロライン・バーナム(レスターの妻、不動産業を営むキャリアウーマン)
ソーラ・バーチ、、、ジェーン・バーナム(レスターの娘、女子高生)
ミーナ・スヴァーリ、、、アンジェラ・ヘイズ(ジェーンの同級生)
クリス・クーパー、、、フランク・フィッツ大佐
ウェス・ベントリー、、、リッキー・フィッツ(大佐の息子)

「薔薇」、、、胸の詰まる息苦しい作品であった。間違いなく傑作ではあるが。
感情の昇まりに必ず薔薇が舞う。
レスターが娘の同級生アンジェラに一目惚れした時、、、
薔薇の花弁が舞い、丹念に妻が庭に育て、レスターの妄想の中、アンジェラが薔薇のバスタブに浸かる、、、そして頭を撃たれて死んだレスターの血も薔薇に負けずに赤い。


「美の溢れる世界で怒りは長続きしない。美しいものがあり過ぎると、それに圧倒されボクのハートは風船のように破裂しかける。そういう時は体の緊張を解く。するとその気持ちは、、、雨のように胸の中を流れ、感謝の念だけが後に残る。ボクの取るに足らぬ人生への感謝の念が、、、」
ビートルズの”Because”でエンディングへ、、、。
”Because”まさにぴったりであった。

1999年の作品とは思わなかった。
とは言え、何年度の作品かと言われても答えようのない普遍性を感じる。
この映画が湛える人間存在が根源的に抱え込む外界との不和~違和の揺れが生々しく実感できるからだ。
わたしにとって今現在の現実~問題である。

まずリッキー・フィッツの存在感が秀逸なのだ。
周囲の凡庸な連中からサイコ男のように扱われているが。
(実際、薬の売人もしているが)。
硬質でセンシティブですべてを透過する視線が鋭い。
それは不気味な存在感を醸すとは言え、常にそういうものだ。

しかし、この映画全体が実にセンシティブであり、ヒリツク感性で交錯している。
誰もがどうしようもなく~ディスコミュニケーションにあり~ズレていてそのズレ(誤解)が致命的なものであったりする。
常に家族同士であっても世間のなかにおいても緊張を強いられている。
これは世界中の何処へ行っても同じことだろう。
勿論、アメリカの特殊事情ではないし、家庭崩壊の問題や価値観の相違から起こる顛末を見せる映画でもない。
常に孤独でズレ~誤解と取り繕いの内に生きる人間の物語であり、それがどんな契機であろうと自分の生を取り戻そうとする人間の物語である。

リッキーのあの真っ白い整然とした部屋と自分の撮ったお気に入りのビデオ、、、
「宙を舞う白い袋、、、」
「遊びをねだる子供のように、それはボクにまとわりついた。15分の間。その日ボクは知った。全てのものの背後には、生命と慈愛の力があって、何も恐れることはないのだと。」
「それを忘れないために撮影した。」
彼は執拗にジェーンを撮影する。
ジェーンに、風に翻弄されながらも何か確かなものを掴もうとしていることを彼は察知したのか。
American Beauty002

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レスター・バーナムのもうやーめた。というのは、実に分かる。やめることで、新たに始められるというもの、、、。
虚栄心の強い妻に疎まれ、娘には恥ずかしいと馬鹿にされ、勤続14年の会社からは「自己評価」を迫られリストラ対象になり、これで自分と他者~外界との関係を見直す、又は一度リセットして考え直そうとするのは、至って自然であろう。
そんな矢先にアンジェラという息を吞む存在が現れる。
自分の美に過剰な自信を持つ少女であったが、実はナイーブさを押し隠していた孤独な少女でもあった。
彼女は彼の虚を突くトリガーであったか。ある意味それでタガが外れたといえる。単純に筋トレを始める(笑。
更に、娘と同年齢のリッキーの毅然とした生き様にも影響を受ける。(一気に、若返る(爆)。
リッキーに誘われてマリファナもやり始める。自分の気持ちを率直にぶちまけ活き活きしてくる。
そんな自分に漸く生きる力が芽生えてきたときに、誤解から撃ち殺される。
そういうものか。丁度家族の写真を幸せそうに眺めて自分のなかに眠ていた愛情を噛み締めていた時に、、、。

American Beauty003


しかし彼は真に幸せそうな死に顔をしており、リッキーも彼を笑顔で優しく見つめる。(ビデオでなく)。
死に際しての、レスターの内なる声、、、。
「美の溢れる世界で怒りは長続きしない。美しいものがあり過ぎると、それに圧倒されボクのハートは風船のように破裂しかける。そういう時は体の緊張を解く。するとその気持ちは、、、雨のように胸の中を流れ、感謝の念だけが後に残る。ボクの取るに足らぬ人生への感謝の念が、、、」
この独白がリッキーの撮った風に舞う白い袋のビデオを背景に語られる。
とても爽やかで素敵な環境ビデオにも思える部分で、音楽もとてもマッチしていた。

そうなのだ。忘れてはいけない肝心なこと。
われわれは、この世の美しさをこそ見出して生きてゆく者なのだ、、、。
レスターのように!枠を打ち壊し、無様であろうが、なんであろうが。
そう、彼の妻も、娘のジェーンも盟友リッキーも、アンジェラもきっと彼を見習いそうするはずだ。

そして、、、”Because”
この世界は回っているから、ボクのこころも乱される。
風が強いからボクの考えも乱されるんだ。
愛は古くて同時に新しく、愛はすべてで愛とは君のこと。
空が青いからボクは泣くんだ。
何故って、空が青いから、、、




風に舞う白い袋に、ヒリツク美を感じることは確かにある。
複雑極まりない運動だが、そこに世界の深淵を思い知らされ、時に慈愛に満ちた何らかの意思を感じることもある。
そんな微分的な美にこの世は溢れている。
科学も芸術もこの美の神秘に深く囚われてきた。
リッキーはビデオカメラを感覚を微細にする装置として手放さず、この境界~詩的関係を触知していたのだ。

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