ジャッカルの日

The Day of the Jackal
1973年
アメリカ
フレッド・ジンネマン監督
フレデリック・フォーサイス原作
エドワード・フォックス、、、ジャッカル
マイケル・ロンズデール、、、クロード・ルベル警視
デルフィーヌ・セイリグ、、、モンペリエ男爵夫人
シャルル・ド・ゴール大統領暗殺を企てる武装組織「秘密軍事組織(OAS)」が雇ったプロの暗殺者「ジャッカル」とクロード・ルベル警視との情報を巡る鬼気迫る闘いのドラマである。
まずアルジェリア戦争に端を発する。
これはフランスのアルジェリア支配に対する、アルジェリアの独立運動というような一枚岩的な闘争ではなく、アルジェリア内での親仏・対仏の紛争、ヨーロッパからの入植者と先住民間の民族対立、パリ政府と軍部との内紛も絡む複雑な対立構造を抱えたフランスにおけるパリ中央政府の奮闘の物語とも言える。
特に軍のエリートを中心に構成されたものがOASと言えようか。
彼らの活動を支えた意識は、愛国心である。アルジェリアは「フランス固有の国土」である!と、、、。
(最近、似たような言葉をあちこちで聞くが、、、)。
戦争などによるフランス経済の疲弊もあり、ドゴールは、アルジェリアの民族的独立を認める決定を下す。
それに怒ったOASのテロ活動が相次いだ。
しかし当局もスパイを組織に潜入させ、動きを未然に防ぎ情報を持ち出し、組織の弱体化を進めてきた。
OASも顔が知れ渡り、内通者が後を絶たない状況下で、何とかドゴール暗殺を成功させるため、国外から優れた暗殺者を金で雇うことに決めた。
彼らが雇ったのは、コードネーム”ジャッカル”というイギリスから呼び寄せた男であった。
射撃の腕前が特に優れ、これまでにも要人暗殺に関わってきたという。
彼は、OAS首脳の依頼をサラッと受けるが、法外な報酬も要求してきた。
見るからに緻密な計算の働く冷酷非道な雰囲気を秘めた男だ。
(ちょっと、アランドロンのサムライを想わせるニヒルさもある)。

ここで、特注で作らせる銃器がクールである。
そのスマートで精巧な造り。
それを渡され手際よく組み立てるジャッカル。
これには、ちょっと恍惚とする部分がある。
わたしも手に取って組み立ててみたい、、、。
スイカを撃ってみたい、、、という誘惑に駆られるものだ。

更に、車が白いアルファ・ロメオ(ツーシーター、オープン)である。
それに乗ってフランスに渡ってくる。
趣味も良い。
そして、車が警察に割れている、という情報で、素早く森の中でボディを青くスプレーで塗り替えるところも、なかなかウキウキする。
わたしは、この手のメカ物に弱いのだが、この特製の銃とアルファ・ロメオの走りっぷりに魅了された。
この映画、リズムがよい。静謐でタイトなテンポが緊迫感をいや増しに増してゆく。
フランスでもっとも優秀な捜査官であり、全権を託されたクロード・ルベル警視ともっとも優れた暗殺者のジャッカルとの、情報を辿り推理を働かせ機転を利かせて行動のタイミングを取るといった息詰まるゲームのような一騎打ちの様相を呈する。
このクロード・ルベル警視は老獪で鋭く、的確な判断が冴え渡り、各国にもつネットワークが厚い。
どのような情報もたちどころに集められる力が彼のアドバンテージだ。
しかし、極秘捜査であることから、どうしてもジャッカルの後手に回るもどかしさに悩む。
だが、彼が上手く利用してきたモンペリエ男爵夫人を殺害したところから、彼を殺人犯として完全公開で捜索することが叶う。
ここで、一気に捜査が加速しジャッカルが追い詰められるかと思ったが、思いの他ジャッカルは手強かった。
彼は偽造書類や偽造メカだけではない。次々に異なるパスポートを造り違う人間に変わってゆくのだが、、、。
変装の名人であった。
ひとは、見た目に弱い。
まさか片足の老いた障害者が、ドゴール演説式典を横切ったからといって、身分証明書の提示で何気なく通してしまう。
先入観で深追いしない。
この怪しさに気づくのは、クロード・ルベル警視であった。
(スチール製の杖であろう。その仕込みにこそ注意を払わねばなるまい)。
その怪しい男を通した警官とともにその向かった先に急ぐ。
彼はあまり走るタイプには見えないが、この時だけは疾走し、ホテルの最上階、小窓の僅かに開いた部屋を目指し駆け上がる。
かなり息は切れている。無理もない。歳だし太ってもいる(ギクッ。
そこでドアを銃弾でこじ開けるが、ジャッカルはその直前一発撃っていた。だがドゴールが偶然挨拶したため弾が逸れた。
そして後一発を改造銃にこめる矢先であった。
警視にとっては実にラッキーなタイミングであり、ジャッカルは最後の最後につきから見放されたのだ。
最初に来た警官は別の銃で仕留めたが、警視の銃で撃ち殺される。
次々に他者にスリ替わりながら暗殺を続けてきたジャッカルであったが、イギリスの本籍と思われたものも他人のものであった。
結局、彼がイギリス人であるかどうかもはっきりしない、何者か皆目検討のつかないままに、葬られた。
何者でも無い者として、、、
彼をひとり見送ったのは、クロード・ルベル警視であった。
恐らく彼にとって人生最大の強敵であったはず。
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