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エデンより彼方に

Far from Heaven001

Far from Heaven
2002年
アメリカ

トッド・ヘインズ監督・脚本
「ベルベット・ゴールドマイン」の監督だ。

ジュリアン・ムーア、、、キャシー・ウィテカー (ブルジョワ家庭の婦人)
デニス・クエイド、、、フランク・ウィテカー(キャシーの夫、ゲイ)
デニス・ヘイスバート、、、レイモンド・ディーガン(黒人の庭師)


50年代のブルジョアたちの社会を日常生活の視点から描いている。
その時代の衣装、風景、車には特に目が行く。この時代のアメ車の大きいだけの無骨で愛嬌のある姿は微笑ましい。
バーンスタインの音楽も雰囲気によく合っている。
演出ともによく計算された映画作品という印象を受ける。
何というか手堅い堅実な描写で禁欲的に進む。(大袈裟な描写・演出がないところに好感をもつ)。
この日常に、レイシズム、同性愛(ゲイ)に対する意識のあり方を絡めてゆく。
と言っても、この時代を克明に描けば、自然に入ってくる基本的要素か。

公民権運動は、キング牧師を中心に広まって来てはいるが、この映画の舞台となった57年はまだ厳しい状況。
64年7月ジョンソン政権下で人種差別撤廃をうたった公民権法が成立するため、キャシーとレイモンドが堂々と逢えるのはもう少し先になろう。
ここでは、夫のゲイの件も同時に扱う。
あからさまに性差別という形では出てはこないが、夫婦関係は壊れる。
これは仕方ない。差別ではなく、あくまでも夫婦間の生理、(性の)相性の問題だ。
勿論、ふたりの中にホモセクシャルに対する差別意識は横たわっているが、それ以前の逆らい難い生理的な嫌悪がある。
夫も自分の性に対しもがき苦しむが、夫婦ともに諦めの境地に至る。思想レベルの問題ではなく、話し合いで解決するものではない。文字通り、どうにもならない。

キャシー・ウィテカーはとかくこの時代に(限らず)、主婦として女として人として胸の内に収めきれない物事をきれいに話してしまえる、解放された知性を持つレイモンド・ディーガンに惹かれてゆく。
これは自然なことだ。レイモンドはその思想を行動でも堂々と実行しようとしている。
しかし、こういった事情~事実は共同体のうちにあって齟齬や軋轢からやがて迫害(追放)しか生まない。
親友と信じてきた女性もあからさまにキャシーを拒否してきた。
彼らは強く思い知る。
時代(パラダイム)の限界として。

ただレイシズムは、現在でもある。
更に復活をみて活性化しているように見えるが、単に潜在していたものが滲み上がっただけか。
特に感情的で感覚的な度合いの強い思念は、それ自体力のない言葉(道徳的なもの)で消し去ることは愚か押さえつけるのも難しい。
完全にそれを消滅させる次の場所=概念が準備されなければ、それは昇華しない。
消えたと思っても単に違う姿を纏っているだけの根強いものだ。
ちょうど、トランプの出現とともに、人種、性差別は一気に顕在化し吹き出ている。


抑えた感じの強い映画であったが、フランク・ウィテカーのあれだけの社会的ステイタスを持ちながらも、最後よく思い切ったものだと、ちょっと他のシーンにはない、この映画の枠を破る決断に思えた。
「好きな人と何処かへ行く」って、、、大丈夫か?
このフランクの今後こそ心配である。(感情的にはほとんど同情しないが)。
ふたりの子供はどうするのか、特に男の子の方はパパになついているではないか。

キャシー・ウィテカーとレイモンド・ディーガンの別れのシーンは、昼のメロドラマでも、もうふた捻りはもってゆくはず。
お互いに住むところが別の世界だと、、、。静かにふたりして手を振って駅のホームで分かれてゆく。
これを見せられて終わるとは、さすがに思わなかった、というより終わり頃は薄々気づいていたというのが正直なところだが、、、。

結局、キャシー・ウィテカーというブルジョア婦人が、性の問題とレイシズムを前に引き裂かれてゆく運命にも健気に耐えて生き抜こうとする気高さみたいなものを描いているのか、、、。
それもそうだし、黒人のレイモンド・ディーガンも苦境に立ってはいるが立派な男である。
新たな土地で、逞しくやっていけることは、想像に難くない。
ただ(元)旦那のフランク・ウィテカーが飛んでしまった分、かなり際どい着地を要求されるものと思われるが。
何処にどう降りるにせよ(笑。

Far from Heaven002






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