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言の葉の庭

kotonoha001.jpg

2013年
新海誠監督

タカオ(靴職人を目指す高校生)
ユキノ(高校の古文の先生)


雨の日の美しくも瑞々しい恋(孤悲)物語であった。
「君の名は。」の監督の作品であることがよくわかる。
こころの琴線を同じように切なくかき鳴らす。

ここでも万葉集だ。

この監督はことばをとても大切にし、それに拘る。
良い監督は、皆そうだ。
そもそもことばを疎かにする者に、まともなものなど作れるはずもない!


「雷神の 少し響みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ」
雨の降る新宿の公園のベンチで出逢った女性がそう主人公の少年タカオに言い残し去ってゆく。
彼女はどこか苦しげで孤独な雰囲気を醸していた。
チョコレートとビール以外に味を感じないらしい、、、。
、、、雷が鳴り響き、曇り始めた、、、雨が降ればあなたを引き止められるのに、、、。

彼らは、決まって雨の日にそのベンチで出逢う。
雨の日にだけ出逢える、織女星と牽牛星みたいに。
確かに雨であれば、邪魔は入らない。(たまに晴れた日にそこを訪れるとまるで違う場所であった)。
そこはふたりのこの世であってこの世でない儚く絶対的な世界だ。
外部の時間は流れない。
ただ暖かい色彩と光に満ちている。

かなり後で気づくが、彼らは同じ高校の古文の先生と生徒であった。
タカオは雨の日の1元はサボることにしていたのだ。
(古文の先生ユキノは療養休暇中であったが)。
彼女がどういう理由で学校を休むことになったかタカオは随分遅れて知る。
(味覚障害もそれが原因で発症したか)。
そして彼女が学校を辞め去ってゆくのも目にする。


タカオは、靴職人を目指し日夜、独学で研究を重ね制作に取り組んでいた。
そのためのアイデアスケッチを暇なときはいつもしている。
梅雨が終わると、カラッと晴れた夏になる。
彼らは別々に淡々とした日常生活を送ってゆく。

タカオは、いつかの短歌の意味を知り、また雨の日に出逢ったユキノに返す。
「雷神の 少し響みて 降らずとも 我は留らむ 妹し留めば」
ユキノは最初、彼に短歌を詠んだとき、自己紹介も兼ねた気持ちであった。
だが、タカオは自分の進む道以外に関心の向く状況ではなかった。
今更お互いの立場を確認し合ったところで、それが何であろうか。
、、、雷が鳴り響き、雨は降らずとも、、、あなたが引き止めてくれさえすれば、わたしは留まる。

大雨が降り、ふたりはびしょびしょになってユキノの家で服を乾かす。
そこで、タカオが食事を作って食べて共にコーヒーを沸かして飲む。
お互いにこれまで生きてきた中で一番幸せな時だと自覚する。

だが、タカオがユキノにずっと抱いてきた好意を口にすると、彼女は実家の四国に戻るのだという。
タカオはそこをすぐに飛び出してゆく。
ユキノは彼の後を追い、お互いに初めて激しくぶつかり合う。


タカオはある日、愛らしいハイヒールを作り上げ、あの公園に持ってゆき、ベンチにそっと置く。
彼がユキノのために作った靴だ。
その靴は、歩くためのものである。
少しでも彼女が長く歩きたいと思えるようにと。
そして自分のためにも。

「2人とも歩く練習をしていた」のであった。
あの雨の日々に、、、。「雨」と「靴」にこめられた濃密な時間の意味を知る。

タカオは、「もっと遠くまで歩けるようになったら」ユキノのところに会いに行こうと思う。


宮崎駿や栗栖直也や細田守にない、、、とまでは謂わないが、現実と地続きに接続してゆくところがこの監督(作品)の素敵なところだ。
しかも現実の最も詩的な場所に。
いまここである最も詩的な場所に。

そこでは無論、歳の差なんて問題外である。
昨日のSFアニメを観た後であるからか、この淡々として極めて物理的に追求されたディテール描写の魔術が殊の他、爽やかであった(特に光学的な反射など)。
極限的世界の仮構から本質を描き出そうとする手法は思想の表出にとても有効なものだが、このアニメーション「言の葉の庭」の現実を詩的に異化してこのままからそのままへ展出してしまう方法には、目の覚める思いがした。


最後に流れるJ-Popは、悪くはないのだが、雨いや水にちなんだクラシックか現代音楽の方がしっくりしたと思われる。
ちょっと、あそこまで行ってヴォーカル入のポップとは、、、
余韻、余情にもっと浸りたかった、、、、。
あくまでもわたしの個人的な趣味の問題か、、、?
(岩井俊二ならぴったりのクラシックを入れてくるだろう)。


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