猫の恩返し

2002年
森田宏幸監督
柊あおい『バロン 猫の男爵』原作
主題歌つじあやの「風になる」
スタジオ・ジブリ
原作者が「耳をすませば」と同じ人で、同じ猫が出てきたりする(笑。
猫繋がり、、、確かあの作品で主人公が作家志望であったから、彼女が作家になってこれを書いたのか?
はっきり言って、わたしは猫がかなり好きである。今は近くにカメしかいないが、、、
それで親しみをもって観れるかと思ったが、ムタ以外にさほど猫を感じる猫はいなかった。
皆、猫っぽい姿をした人である。(擬人化が強すぎる)。
声:
池脇千鶴、、、吉岡ハル(女子高生)
袴田吉彦、、、バロン(またはフンベルト・フォン・ジッキンゲン男爵、事務所の所長)
渡辺哲、、、ムタ(またはルナルド・ムーン、大食いの太った白猫)
斉藤洋介、、、トト(バロンの友人のカラス)
山田孝之、、、ルーン(猫の国の王子)
前田亜季、、、ユキ(ハルと馴染みのある白猫)
濱田マリ、、、ナトル(ハルを招待した猫王の第二秘書)
丹波哲郎、、、猫王(ハルに一目惚れする)
ここでも有名な俳優ばかりだ。
2002年の作品にしては、昔の漫画じみている。かなり大まかな印象を受ける。
なめらかさやスムーズさや絵の緻密さ、ディテールの細密さ、テンポ、、、などに今のアニメと比べて生理的な違和感を感じる。
これはこれで、見慣れてくるとそこに入り込めるのだが、最初はやけに古い漫画っぽさが気になった。
話は、ハルが、助けてしまった猫の(王の)ある意味、猫らしい自己中な恩返し、、、ではなくむしろ、のほほんとまったり生きるのもいいかななどと思っていたハルのこころの隙を突いた、誘拐である。
文字通り恩を仇で返している、これは猫王のハルへの恋なのか?
これを丹波哲郎がやっているのである、、、猫の世界ではなく霊界が心配になる(笑。
吉岡ハルというラクロス部に入っているのんびりした(遅刻常習犯らしい)女子高生が主人公。
ある日、猫の国の王子・ルーンがダンプに轢かれそうなところを間一髪で助けてから、彼女は不思議な事件に巻き込まれてゆく。
助けたその夜に「猫王」が従者をたくさん従え(黒沢明の映画みたいに)、直々に礼に現れ恩返しに来たと何やら目録を持ってきた。
あなたには、これから良いことばかりがおきますよと秘書が伝えて去ってゆく。
ハルという娘は基本的に、何が起きても驚かないタイプらしい、、、(笑。
そして明くる日、猫なら歓ぶ妙なお礼の品々が送られ、ナトルという秘書の伝えるところでは、彼女を猫の国にお招きしたいと、、、。
生半可、彼女も興味を示したところにさらに続けて王子のお妃に迎えたいというではないか。
これが猫の本質か、、、はたまた、、、。
現実逃避型の夢見がち少女であっても、いくらなんでも荒唐無稽な申し出であることには気づいた。
そのときその様子を窺っていたかのように響いてくる綺麗な天の声に従い「猫の事務所」を訪ね助けを求めることにする。
彼女は言われた通り、太った白猫ムタに出逢い、彼の後を追い猫の事務所へと迷い込む。
このパタンは 「バケモノの子」の「渋谷」からふと「渋天街」に入ってしまうのに近い。
(近いといっても、描写の質がまるで違うが)。
この小さな事務所の部屋に入る女の子のイメージは、そのまま不思議の国のアリスへのオマージュでもあろう。
その事務所にまで、ナトルという能天気な秘書が彼女を迎えにやって来る。
ハルは、バロン、ムタ、トトとユキに見守られながら、ナトルの強引な招待に従い、取り敢えず猫の国にお邪魔してみる。
トトが屋根の上の銅像なのに、事務所が作動すると言葉を話す生き物に変わるが、ここに出てくる猫たちもみなハルと同等に普通に話す。
しかし、他の動物なら違和感があっても、猫やカラスだと、それほどない。
彼らはかなりの知的生命体であるからだ。
話自体が実に荒唐無稽なのだが、不思議に猫相手なら、そこに拘る気がしない。
特に、バロン(フンベルト・フォン・ジッキンゲン男爵)のキャラクターは敢えて言えば、シャーロック・ホームズや007の上をゆくスマートさである。
ムタ(ルナルド・ムーン)も「ブタ」と勘違いされながら、口は悪いがその体型通りの親しみのあるキャラで頼りになる存在。
どれも類型的で、話も特に珍しさや新しさもひねりもない、ストレートで楽しめるだけの内容になっている。
もう、猫の国からの脱走劇など、ひたすら目を楽しませるといった感じの展開であり、考える要素などひと欠片も無い。
所謂、昔からあった漫画の良いところばかりで作られている、と言うべきかも知れない。
観た後で、わりと爽やかな気分になった。
(もう少しディテールが丁寧な作りだったらな、、、とは思ったが)。
「風の谷のナウシカ」、「天空の城ラピュタ」、「もののけ姫」、「千と千尋の神隠し」のような大作の醸すドラマチックな感動からも、「思い出のマーニー」や「借りぐらしのアリエッティ」や「コクリコ坂から」のように、ひたむきで澄み切った気品を漂わす作品からも程遠いものであるが、こういうさらっと楽しめる作品を時折、無性に見たいと思うものだ。
こってりしたものばかりでは、疲れるではないか、、、。
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