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黒い罠

Touch of Evil

Touch of Evil
1958年
アメリカ

オーソン・ウェルズ監督・脚本

チャールトン・ヘストン、、、ラモン・ミゲル・ヴァルガス(メキシコ麻薬捜査官)
ジャネット・リー、、、スーザン・ヴァルガス(ミゲルの妻)
オーソン・ウェルズ、、、ハンク・クインラン(アメリカの凄腕老刑事)
マレーネ・ディートリヒ、、、ターニャ(酒場の女、ハンクの愛人)
ジョゼフ・キャレイア、、、ピート・メンジース(ハンクの相棒刑事)
エイキム・タミロフ、、、ジョー・グランディ(グランディ一家の幹部)

オーソン・ウェルズと言えば、わたしにとっては「第三の男」「市民ケーン」である。「審判」も良かったが、、、。


この「黒い罠」(悪の感触)、、、
わたしが観たのは、NHKで放送したカット版の方であった。(何故修復版を流さないのか?)
オーソン・ウェルズ死後に発表されたディレクターズカット版ではない。
ハリウッドがウェルズに無断で、フィルムを勝手に編集し96分版にして公開してしまった。
オーソン・ウェルズは大激怒し、以降ハリウッドから離れる。
そのフィルムは彼の詳細なメモを元に修復家のリック・シュミドリンによって再編集がなされた。
是非その111分版(1998年)を観てみたい。

しかしこの作品もあちこちカットされたとは思えない出来栄えであった。
ゴダールやトリュフォーはこの最初の上映版を絶賛していたそうだ。
確かに観てみると分かる。
再編集版と見比べるのが楽しみになった。
(近いうちにブルーレイのディレクターズカット版を手に入れたい)。

ここでも充分にオーソン・ウェルズ流のカメラ撮影を感じることができる。
最初のオープンカーが出てきて爆破されるまでの撮影からまさにウェルズの面目躍如だ。
俯瞰のロングショットからすぐに切り替わる非常に低い位置に設定されたカメラによる臨場感。
そこで、これから巻き起こる事件の関係性を明示し期待感を与える滑り出し。
ジャズもピッタリフィットしていた。
爆破される車の助手席の女性の一言「何かずっと時計の音がするのよ~」というのもコミカルで軽快な流れを繋いでゆく。
セリフのテンポもよく、話の展開が素晴らしい。
彼独特のアクの強い白黒の陰影も健在でありそれが緊張感を増す。

アメリカとメキシコ国境地帯での事件。
街の名士とその愛人を車ごとダイナマイトで爆殺したのは誰か、、、メキシコ側で爆弾は仕掛けられたが、爆発したのはアメリカであった。
アメリカの凄腕刑事と彼を信奉する捜査官たち、メキシコの敏腕麻薬捜査官とその新妻のアメリカ人、そこへアメリカとメキシコを股にかけるメキシコ人暗黒街の顔利きとその手下、、、これだけ確認しても物語の不安定さと一触即発の危機感は募る。
境界~越境の問題が常に絡みつつ物語は進展する。

ミゲルは妻を安全と思ったアメリカ側のホテルに移し、捜査をハンクと協力して行うが、不信な部分に気づいてゆく。
過去のハンクの捜査記録を見ても、証拠の捏造によって犯人をでっち上げ死刑に持っていった疑いが幾つも出てきた。
ミゲルの正義感を嫌うハンクは、こともあろうにグランディを利用する。
グランディ一家の暗躍により罠に嵌まり、罪を着せられ危機に追いやられるスーザン。
口封じも兼ねグランディをも手にかけるハンク。その殺害の罪すらスーザンに着せる。
ハンクという男、大した玉でありその抱え持つ闇の重量には圧倒される。
ミゲルはそれに引き換え、後手に回りオロオロする場面が多い、、、。

Touch of Evil003

何ともアクの強いウェルズ演じるドロドロした跛足の悪徳刑事である。
その異形の巨漢の迫力は圧巻である。
また、他の配役も実に堂々としたものだ。
その最たるものに、マレーネ・ディートリヒ演じるターニャがいる。
その貫禄で画面を引き締める。(ウェルズのハンクが画面を重みで弛ませた分)。
そしてチャールトン・ヘストンのミゲルもダンディで存在感は充分だが、どこか肝心な場面で頼りない。
(これは脚本・演出上のものだが)。
ジャネット・リーのスーザンの人物像は、他の主役級の俳優から見ると然程、厚みが感じられなかった。
ジョゼフ・キャレイアのピートにつては、実に悲哀があり切ない心境がありありと描かれていた。
ジョー・グランディの小悪党ぶりも殺されっぷりも含め、なかなか小気味よいものであった。

忘れ物の杖から、悪事の全てが露呈する。(ホテルの扉に忘れ物注意の貼り紙があった)。
それを見破ったのはハンクを最後まで守ろうとしていたピートであった。
そして、ハンクは自分を一番心配していた親友のピートまで撃ち殺し、その罪をミゲルに着せようとする。
彼がただ只管、虚無で太った黒い塊に見えてくる。
銃口をミゲルに向けたとき、ピートの今際の際の銃弾が彼を撃ち抜く。
ターニャが橋の上から彼の骸に向け「大した男よ、、、」と一言漏らす。
結局、ハンクがあげた犯人が自白し本当の犯人であったことが判明する。

何とも言えないニヒリスティックな余韻に浸った。
そして、余りに渋い、、、。
渋すぎる面々であった。
そしてその中に真の怪物の姿を見た感がした。
Touch of Evil004



しかし何でこれ程の監督がハリウッドに厄介者扱いを受けるのか、、、?
まずもって難解である?ということから、監督に無断でフィルムを切り刻むというハリウッドこそ理解不能である。



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絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
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