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ブルックリン

Brooklyn002.jpg

Brooklyn
2015年
アイルランド・イギリス・カナダ

ジョン・クローリー監督
ニック・ホーンビィ脚本

シアーシャ・ローナン、、、エイリシュ・レイシー
エモリー・コーエン、、、トニー・フィオレロ(イタリア系の配管工、夫)
ドーナル・グリーソン、、、ジム・ファレル(故郷の青年)
ジュリー・ウォルターズ、、、キーオ夫人(女性寮の主)
ジム・ブロードベント、、、フラッド神父(エイリシュの母、メアリーと懇意)
フィオナ・グラスコット、、、ローズ・レイシー(エイリシュ自慢の姉)
ジェーン・ブレナン、、、メアリー・レイシー(エイリシュの母)
ブリッド・ブレナン、、、ケリー夫人(雑貨店店主)

素晴らしく優しく染みこんでゆく映画であった。
機微に通じた細やかな流れと振幅のある話で吸い込まれるように観てしまった。
脚本がまずもって素晴らしい。演出も撮影も言うことなし。衣装、美術も、、、。
久々に映画を観ることの歓びと恍惚感をたっぷりと味わえ、気持ちが清められた。
映画の文体そのものが流麗であったが、そのなかの主演女優の存在も圧倒的に輝いていた。
「ハンナ」でハードなアクションをやっていた女優であるが、、、凛としていて繊細で瑞々しく、主人公の成長に伴う変化と感情の僅かな揺れを巧みに演じていた。しかも、常に知的で上品で美しい。まだ若いのに凄い女優がいたものだ。
ミア・ワシコウスカに雰囲気の似た、才能溢れる女優である。

アイルランド人は元々、アメリカの建国自体に深く関わってきた人々であった。
その後もこういう風に、アメリカに(出稼ぎなどで)渡って行くのかと、、、感慨深いものであった。
幸い母の知り合いの神父の口利きもありエイリシュは良い職に就けたが、ブルックリンにはたくさんの職にありつけないアイルランド出身の労働者がいる現状を目の当たりにする。
キーオ夫人の下での寮生活はこの映画になくてはならない部分である。
どのシーンも楽しくユーモアが散りばめられ、寮友からも暖かく彼女が迎えられていることが分かる。
そして、大学の夜間部にも神父の計らいで入れてもらい、簿記の勉強に励むことが出来る。
彼女は周囲の善意の下、かなり恵まれた生活を送り、急速にアメリカの生活に馴染んでゆく。
それが化粧やファッション、身のこなしにも自然に滲み出てゆく、、、。

アメリカ(ブルックリン)とアイルランドをバカンスの海水浴場で対比させるところもお洒落である。
アイルランド人として水着に不安をもちながらもアメリカの海岸を体感し、いつしかアメリカ人(外国人)として故郷の海岸の良さを味わう。外から帰ってみれば、窮屈に感じた土地を改めて対象化する目が芽生え、その心地よさに離れがたくなってくるものか、、、。
Brooklyn003.jpg

エイリシュは最愛の姉の死で故郷に戻るが、親友の結婚式への参加もあり、簿記の資格をブルックリンで得ていたため、強引に姉の跡目の仕事もやらされる始末。傷心の母親もまだまだ放っておけないし、結婚した彼とはタイプの違う知的で洗練された男性にも心ときめくものがある。ズルズルそこに居続けているうちに、何やら故郷そのものと幼馴染の男性に惹かれているのが分かる。
ここで、こちらとしてもエイリシュは、この先どうするつもりなのか見えなくなってくる、、、。

そこで登場するのが、最初極めて痛い因業な雑貨店主振りを発揮していたケリー夫人である。
彼女をわざわざ自宅に呼び出し、ブルックリンで姪があなたが結婚届けを出そうとしていたところを見たと言うわよ。世の中って広くて狭いものよねえ、、、ときた。ここでエイリシュはパッと目が覚める。
なる程、こう来たか。「忘れていたわ。」「なんですって、忘れていた?」「ここがそういう所だっていうことを。」
「わたしの名は、エイリシュ・フィオレロです」とキッパリ言い放ち、彼女は毅然とそこを後にする。
その足でアメリカに帰る船を予約してしまう。そう、帰るのだ。
(考えてみれば、これが幸いしたと言える。このおばあさんもそれほどの鬼婆でもない。粗悪なゴロツキであれば本人に直接聞きたださず、誹謗中傷して回るのが普通だ。その分、この店主は良心的と言えよう)。

故郷を去る晩、結婚していたことをエイリシュは初めて母に伝える。
彼女は何故、着いて直ぐに伝えなかったのか。
やはり相手がイタリア系移民の教養のない労働者階級の男性であった引け目からだろうか?
しかし、とても良い人だと一言母に伝える。母はあなたが選んだのだもの、と納得する。それ以外に何かあろうか、、、。それで充分ではないか。

この物語の前半は全て、エイリシュがブルックリンのアイルランド系の人の集まるダンスパーティで、素朴で誠実なイタリア系青年トニーと出逢い、少しずつ確実に愛を育み、姉の死で暫く里帰りしなければならない際に、結婚を申し込まれ結婚後に旅立つまでが無駄なく雄弁に描かれている。

故郷と母に別れを告げ、船に乗っている彼女は、しっかりと自立した「アメリカ人」であった。
自分がかつてされたように、これからアメリカに渡るアイルランドの若い女性にアドバイスをする。
「入国時はアメリカ人らしく毅然とした姿勢で通るのよ。」

Brooklyn001.jpg

細やかな人間の機微に通じた丁寧に描かれた綺麗な映画であった。
本当に心地よい時間が味わえた。


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COMMENT

感服です…

この作品
監督の意図を
こうまで見事に受け止めてあげて下さって
ありがとうございます。

監督に代わってお礼を言いたいくらい(笑
繊細なレビューに感服です。

そして

メッセージにまた感激。
作品を通して
通じ合えた感覚を覚えました。

お風邪は如何ですか
心配しています。
くれぐれも
お身体大切になさって下さいね…。



Re: 感服です…


> 監督に代わってお礼を言いたいくらい(笑

それは、とても嬉しい限りで、、、。
SAKI様のブログ記事の切り込みには、感心しました。
こちらは、監督がたじろぐかも知れません(笑。

> 繊細なレビューに感服です。

映画そのもののスタイルに感服したためその表面をわたしなりになぞってみました。
それだけです。
少なくとも分析する類の作品ではないので。
映画を見る恍惚感を味わえた作品です。


風邪は喉をやられると長引きますね。
今回、つくづくそれを感じました。
少しずつですがよくなってはいます。
ご心配おかけしました。

また宜しくお願いします。

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Author:GOMA28
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絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ることもあります。
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