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情婦

Witness for the Prosecution002

Witness for the Prosecution
1957年
アメリカ

アガサ・クリスティ小説・戯曲『検察側の証人』原作

ビリー・ワイルダー監督・脚本

タイロン・パワー、、、レナード・ヴォール(未亡人殺しの容疑者)
チャールズ・ロートン、、、ウィルフリッド・ロバーツ(老弁護士・法曹界の重鎮)
マレーネ・ディートリヒ、、、クリスチーネ(レナードのドイツ人妻)
エルザ・ランチェスター、、、ミス・プリムソル(ウィルフリッド卿の付き添い看護婦)
ジョン・ウィリアムス、、、ブローガンムーア(ウィルフリッド卿のパートナー弁護士)

「検察の証人」である。
クリスチーネそのヒトである。
アガサ・クリスティにも少し馴染んでみたい。
小説とは別物ではあっても、その映画版の雰囲気でもしっかり楽しめるはず。


ビリー・ワイルダーと言えば、オードリーヘップバーンやマリリン・モンローを思い浮かべるが、「アパートの鍵貸します」も良かった。
「麗しのサブリナ 」「昼下りの情事」のヘップバーン絡みの作品がやはり好きだが、、、。

推理サスペンスの意味では、昨日の「ナイル殺人事件」を遥かに超えている。
これぞ、どんでん返しのお手本みたいな映画だ。
文句なしである。

チャールズ・ロートン扮する恰幅のよいウィルフリッド卿の弁護は実に爽快で鋭い。
(昨日の主役の探偵と体格も似ている。知恵のある人はみんなこういう体格なのか?)
ドクターストップのかかっている身で汗ばみながらも、薬を酒であおり強烈な弁護を繰り出すところは粋である。
おまけにタヌキである。
だが、その上をゆくクリスチーネには恐れ入った。
彼女の仕掛けたトリックにしてやられたウィルフリッド卿は、妻の証言は有効性に乏しい理由から自分を偽証罪で有罪にさせて夫(愛人)を守ったことに複雑な思いを抱いていた。
何故、そこまでするのか、という彼の問いに対して、愛しているからよ、とだけ彼女は答える。

レナードの方も大変な役者で、それまでは無実の罪(富豪の婦人の殺人)を着せられて責められ、ドイツ人妻に裏切られた終始実直でお人好しの悲劇の主人公を演じてきたが、いざ計画が上手くいき無罪放免となるとゴロツキの本性を剥き出した。

とは言えこのシーンで誰もの上をゆくオオダヌキは最終的にウィルフリッド卿であった。
クリスチーネが愛のために(昨日もジャクリーンがまさにそうであったように)大芝居を打ち、証言で偽証をしてそれを弁護士に自ら暴かせてレナードを助けるという自己犠牲のトリックを見事成功させたのだが、肝心のレナードは冷酷非情にもそのクリスチーネを捨て、愛人を作っており転がり込んだ遺産で彼女と旅行に行くという。
この変貌ぶりには、クリスチーネは元よりウィルフリッド卿もびっくり唖然であり、その愛人と共に法定に卿を迎えに来たミス・プリムソルもその成り行きに目を疑っている。
当然のごとく酷い仕打ちを受け打ちひしがれたクリスチーネの逆上と絶望は、計り知れない。
「ドイツで困窮していたところを救ってやっただろう」
「入った金をそれぞれにおすそ分けしてやろう」などと、悪びれもせず開き直るレナード。
そんなことはさせないとすがるクリスティーネを突き飛ばし、お前は共犯になりたいのかと言い放つ。

だがその修羅場をやけに大人しく見守っているなと思って注意していたら、何とこの弁護士殿、余程光るもの(反射)を使った遊びが好きなようで、証言の時に提示されたナイフを懐中時計を弄ぶような仕草でずっと燦めかせクリスチーネにその存在を誘うように知らせているではないか、、、つまり明らかに彼女の現在の動転した心境に則した行為の誘導をしている。
ある意味、飛んでもないことだ。弁護士の立場である。
だが、彼もまんまとレナードに騙された上に、よって立つ法を侮辱され(彼は法曹界の重鎮として尊敬を集めていた)、法の悪用により富と自由を手に入れつつあったことに堪忍袋の緒が切れるところにきていた。

だが、よくこんなトリックをアガサ・クリスティは考えるものである。
序盤から、彼が片眼鏡で人を照らして眩しがらせたりする妙なシーンの伏線を見せておいて、最後にこれである。
まるで、目的物を正確に反射で照らし出す練習をしていたかのようだ。

「それよりこの罪で!」と案の定、クリスティーネは手に取ったナイフでその悪党を刺す。
もう冷静を取り戻していたプリムソルは素早く男の脈をとり死亡を確認する。
殺されましたと伝える彼女に「殺したんではない。処刑したのだ」と返すウィルフリッド卿。
調度主治医の指導で、病気の療養に旅立つところであったが、プリムソルもすでに察しており、「旅は延期されますね。次の裁判の準備ですね。ブランデーをお忘れなく(薬を飲む際のココアの魔法瓶を彼がすり替えていることも心得ていた)」と返すところも、一筋縄ではない。
「大した女だ!クリスティーネを弁護する!」
と、颯爽と出かけてゆく。
この調子なら病気も治ってしまうかも知れない。

ただ、ひとつばかり、、、あれ程鋭いウィルフリッド卿がクリスチーネの変装を見抜けなかったのは、ちょっと不思議な気もした。
あの傷とかもどうであろう。
もしあの傷痕でコロッと騙されたのなら、彼女は特殊メイクのプロである。
しかし、これはあくまでも劇中のコンテクスト上でのこと。
映画を観るわたしは、たれこんだうらぶれた女性がクリスチーネの変装した姿だとは全く気付かなかった。
どうみても似てないからだ。この辺は実に微妙な線であろう。
監督としては、あれがクリスチーネの変装と観客に見破られては映画がその時点で破綻してしまう。
恐らく、演出上からも絶対見破られないように別の女優を使っていたはずだ。
物語の文脈上はあくまでもクリスチーネの変装ということであるが。
(それが明かされるのが最後の回想においてであり、真偽は確かめられない為、問題はない)。

それからもう一点、マレーネ・ディートリヒは美貌の他に美脚で有名であった為、それもどこかで披露しなければならない縛りが恐らく会社(製作)側からあったとしても、あのシーンでの脚の出し方は、ちょっと無理を感じたものだが、、、。
まるでそれ自体が舞台の演物に思えた。
別にそれはそれで、綺麗なものを見ることが出来、観客にとって文句は何もないはず。

主人公のウィルフリッド・ロバーツ卿、病気で病院から一時帰宅の自宅療養の身でありながら、極めて難しい裁判を闘い抜き、騙されるところは騙されながらも、鋭い弁論と経験にものを言わせた姑息な手や果ては弁護士を逸脱したトリックまで仕掛けるところなどにはヒトとしての誠実さと矜持とともに親近感を感じてしまう。
マレーネ・ディートリヒの硬質な魅力は充分に堪能できた。
タイロン・パワーは見事なヒトデナシを演じきったと言える。

これまで観た映画で、これ程インパクトのある、どんでん返しは経験したことがない。




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