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工芸は現代アートになる  Ⅱ

Argentina.jpg

前回「工芸は現代アートになる」で、実にサラッと娘たちと公園の帰りに回って見てきたのだが、、、
本日、女子美のアートギャラリーでギャラリートークがあるというので、改めて行ってみた。

「素材に働きかける」過程で獲得する自分ならではの技術とそれによる創造の醍醐味とを力説されていた。
工芸とは、、、一口に素材への果敢な「働きかけ」と言えるのでは、、、と思った。
結果、素材から思いもよらぬ様々な新しいテクスチュアも生成されている。

「女流画家協会展70回記念」その2含む)のギャラリートークは、女子大生のアルバイトであった為か、ちょっと有り得ないトークにかなり意気消沈した(例え何であれ破天荒で面白いのなら不思議な元気を貰えたりするが)。
今回は、女子美の学生に教えている先生方の作品展であり、トーク(解説)もその先生方(作者)であった為、安心して聴くことが出来た。実際、喋りに澱みがなく内容も聞くべきものがあった。特に技法について、、、。
ややマイクがクリアに言葉(声ではない)を拾いきれていないことで、話が掴みにくいところは少なくなかったが。

サンドブラストを使用して作るガラス工芸の制作方法についても作家の工藤直先生から直にお話を伺えた。
作品からも想像できるが、大変神経を使う、微細極まりない集中した作業を要することがよく解った。
ガラス工芸は、その表現形式が大きく2つに分かれ、ガラス素材へのアプローチも技法も異なり、奥も深い。
わたしも、そろそろそういった「入り込む」作業に没頭したくなった、、、そうなるとブログやっている余裕はなくなるが。
勉強になった。そして羨ましいという感情が芽生えた。
近いうちに何かやってみたい、、、。
ついでに、娘達が女子美に入りたいと想っていることを伝えると、「ええ、お待ちしています」と笑顔で言われた。
「小2です」とつけ加えたら目を丸くして、工芸科の案内の冊子を頂いた。
すぐに、彼女らに観せたい。(お姉さん達が見たこともない道具でいろいろとおおきな作品作りをしている写真がいっぱいある)。

まず、今回改めて先日見た作品を確認すると、「AQUA」というおおきなリボンの羽衣状の複雑に構築された作品は、絹糸とステンレスの素材で作られていた。
柱~コラムに多色染めの多層織による、作者は「ミニチュア建築」と呼称していた。
複雑に絡み合うリボンによる構造体だ。
なる程。色も自然色素で淡くパステル調で大きい割に圧迫感はない。(逆に重力に逆らう上昇感すらある)。
独特の密度と空気感が作者の言うとおり感じられる。

刺繍はかなりテクスチュアの陰影の強いものがあった。
力強い表現だ。
前回、然程きに留めずにそのまま通過してしまったが、光の乱反射による色調の変化すら認められた。

染と織は違いますよ、と何度も念を押されたが、今回我々には通常出来ぬ、作品の裏返しを観せてもらった。
これは作者だから可能なことだ。
確かに、染は表だけが作品であるが、織は裏も表である。
当たり前だが、実際に精緻で重厚な作品で見てみると、その裏側の表具合を実感する。

友禅など、制作過程において何人もの専門家を経た果てに完成を見る反物も女子美では、授業で最初から最後まで制作されるらしい。
ひとりの先生が全ての過程を指導するそうだ。ある意味、これは凄いことだ。
最終的にどの部分の専門職になるにせよ、全過程を見通せるようになっていることは、とても有効なことだと思われる。

岡本直枝氏による「歩歩」は、前回足だけの生き物のオブジェに見えたというような間の抜けた感想を述べていたが、、、
麻、羊毛をフェルティング、ニードルによって、グイグイと縫い合わせ絡ませ濡らして揉み、素材との格闘の末、生まれる「力」を表したものであるという。
確かにこれをスタティックに見るなんてどうかしている。大人しい置物には見えない。
繊維の強靭さとその素形力~謂わば素材の力を舐めてはいけない。
司会の渡邉美奈子氏(AQUAの作者)からもキーワードとして何度か提示された「縮充」の成せる業でもあろう。
作者の「縮充」という技法~作業により更にパワーをアップした素材の強靭さは、素形力と反発力の狭間~均衡でパンパンになっており、いつか爆発する気配も秘めている。
そんな足のオブジェだ(爆。

これも前回、卵の割れた殻が幾つも繋がったようなオブジェと評していた、何でもオブジェと言っておけば良いものではない、その作品は「さかいめの標本」というものであった。わたしは、内部をテーマとしたものかと瞬間的に思ったものだ。
これは、陶芸に形式上必然的に起きる~属性とも言える、中空構造による内側と外側の「さかいめ」を「線」として可視化しようとした試みであったらしい。それで複数の殻を連続的に接着して「線」を際立たせようとしたのか。
「さかいめ」がテーマであった。
確かに何のさかいめにも、めくるめくロマン~幻想(思想)がある。
現実には、「線」という抽象は無く、卵の殻の厚みがあるだけだ。
その厚みは取り敢えず現実においても、さかいめとしてあり、場合によってはベルリンの壁であったりもする。

最後に、うちの娘が驚いたマーブリングが浮いている作品である。
今回その素材をしげしげ観察して驚いた。
勿論、紙にマーブリングしたものをハサミで切り取ったのではないことは、分かってはいたのだが、どうやって作ったのかまで調べることもなく、前回は帰ってしまった。
その素材は、シルクオーガンジー(固い風合いと光沢が特徴の軽く透けた生地)と絹糸、金糸に金箔である!
これで、繊細でフラジャイルなあの絶妙な波紋造形が形作られていたのだ。
連ね並べ重ねて作られたそうだが、具体的には作っているところを見なければ分からない。
「支持体に空間を意識した動き」を与えるように作られているようだ。
支持体とは絵画では絵の具、音楽では音(音素)、木彫なら木である。
ここでは、その繊維群であるか、、、。
かなり微分された表現である。

「素材」に関わる事は優れて身体的な経験にほかならない。
このような取り組みが、こころを癒し解放する契機となる面も押さえておきたい。
(そういったメッセージをメールで送られた作者の方もいた)。


工芸の面白さと可能性を強く感じる展示会となった。

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