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サムライ

Le Samouraï

Le Samouraï
1967年
フランス

ジャン=ピエール・メルヴィル監督・脚本
アンリ・ドカエ撮影
フランソワ・ド・ルーベ音楽

アラン・ドロン、、、ジェフ・コステロ(殺し屋)
ナタリー・ドロン、、、ジャーヌ(情婦)
カティ・ロシェ、、、ヴァレリー(ナイトクラブのピアニスト)


全てがストイックな映画であった。
削ぎ落とされている。
アラン・ドロンの表情も。
そして色調まで、、、。
洗練されたお洒落な行為と所作で成り立ち、ニヒリスティックな感じは全くない。
それぞれの人物も2日間だけ切り出されたコンテクスト上に作動している。
その前後の日付(来歴)は全くの暗闇に消えている。
もしかしたら、突然スイッチが入って動き出した人形の世界かも知れなかった。
「去年マリエンバートで」同様に、、、。
であるから、この映画に「何故」は意味を成さない。
何も語らない。
コステロのように。

本当に言葉がなく、説明やナレーションなどのある映画~物語の対極のものだ。
映像と音楽だけで全てを表そうとする。いやそれで表せるもののみで生成されてゆく。
特に、郊外のガレージにコステロが車を入れると、そこの主人が素早く一言も語らずナンバーを取り替え、拳銃を渡す。
その機械状の流れの中で、コステロは作業が終わると機械的に主に金を渡し、自動的にまた街へと出て行く。
このようなシーンを他の映画で見たことはないのに気づく。
(他の映画が如何にことばに頼っているか、、、)。

ジェフ・コステロと彼のカナリア1羽だけの部屋、帽子のツバと白手袋に拘り、そして決まって盗むエレガントなシトロエン。
趣味が良いというか、物が無い方が何かされた時にも気づきやすい。
あんなに素早く部屋の異変に気づくのだ。
普通は窓のカーテンに隠れるように取り付けられた盗聴器などにそうは注意は向かない。
わたしだと、あの盗聴器に偶然たどり着くまでに5年はかかる。(その頃には、すでに必要とされていないはず)。
(なんせ物が多すぎるのだ)。

あのようなライフスタイルには憧れる。
鳥は飼いたくないが、あの何もなさは素晴らしい。
いつか、何もない場所に至りたい。
勿論最後は、何も持っては逝けない。

何も持たないということは、死の近傍で生きるということだ。
殺し屋としていつでも死ぬ覚悟が象徴的にその場所に表れているのかも知れない。
ある意味、悟りを開いた聖者の佇まいである。
人に死を運ぶ商売である。そのくらいの厳粛さはあってよいか、、、。


しかし、その世界に悪夢も重なる。
やたら多い鍵から合うものを只管探し続ける。シトロエンに合う鍵を、、、。
それは、地下鉄の乗り換えを延々と繰り返す逃亡にも同様に。
これは、完全と孤独を追求する悪夢の光景だ。
熱に魘される悪夢に似て、、、。

暗黒のなかに、、、これは悪夢なのか現実なのか、、、あの反復は目眩を誘う。
足音だけがいつまでも甲高く響きわたる。
鍵の束から合鍵をいつまでも探すのかも知れない。
反復と不安そして孤独。
殺し屋~サムライとしての属性(いや本質)の成せる業か、、、。

有名な「サムライの孤独ほど深いものはない。ジャングルに生きるトラ以上にはるかに孤独だ。」
最初に出てくる監督のことばで、自分の身も重ね合わせているらしい。
覚悟を決め、孤独を恐れず作った映画であったのかも知れない。


所謂、フレンチ・フィルム・ノワールの孤高の傑作である。


アランドロンプロジュース(ブランド)の香水の名前が確か”サムライ”だったと聞くが、、、。

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