カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

ブリッジ・オブ・スパイ

Bridge of Spies

Bridge of Spies
2015年

アメリカ

スティーヴン・スピルバーグ監督
マット・チャーマン(英語版)、コーエン兄弟脚本
『ファーゴ』は面白かったが、これも細やかな描写で人物が真に迫っていた。
トーマス・ニューマン、、、音楽

トム・ハンクス、、、ジェームズ・ドノヴァン(弁護士)
マーク・ライランス、、、ルドルフ・アベル(ソ連諜報員)


わたしが観たトム・ハンクスの中で、一番良かった。
彼は寒々と荒涼とした硬直し続ける現実に温かみを持ってしなやかに溶け込んでいた。
更にその相手役のマーク・ライランスのアイロニカルで達観した佇まい。
飄々としているが、確かな芯をもち、その人間的魅力で忽ちドノヴァンを惹きつけてしまう。
恐らく長い年月を只管耐えに耐え、異国で祖国のために息を殺して諜報活動を続けてきたことから形成された性格でもあろう。
彼は冷静沈着な諜報員である前に絵画と音楽(ショスタコーヴィチ)をこよなく愛する芸術家でもある。
ふたりの間には冷戦を超えた友情が芽生える。
「不安はないか?」(ドノヴァン)、、、「それが役に立つのか?」(アベル)このやり取りが数回あったが、象徴的なものである。
この役者が間違いなく物語を重厚なものにしていた。
2人の他の役者も皆、不自然な役柄を感じる人はいなかった。
当然、脚本、演出がよく出来ている為であろうが。


1957年冷戦中米ソのスパイによる諜報活動が盛んに行われていた時期の事実に基づく話である。
アメリカ偵察機撃墜事件「U-2撃墜事件」の舞台裏を明かしたものという。
逮捕したソ連の画家を装った諜報部員アベルと撃墜されたU-2のパイロット更にドイツの壁近くで連行されたアメリカの学生の1対2の捕虜交換をジェームズ・ドノヴァンが国のメンツと策謀渦巻く中、成功に導き無事に帰国するまでの話である。(ドノヴァンはアベルの弁護人でもあり、死刑を懲役刑の減刑させている元敏腕検察官である)。
アメリカ、ソ連、ドイツ(東ベルリン)3国間の非常にスリリングで緊張感ある交渉が展開されるが、実際の話に忠実であることでその重みは増す。
その時の立役者であるジェームズ・ドノヴァンの難問に対するフレキシブルなアプローチに魅了されてゆく。
スピルバーグ=ハンクスでは『ターミナル』よりかなり陰影の濃い大作となった。

交渉の場となった東ベルリン、、、。非常に荒涼とした雪景色が交渉の厳しい現実を更に際立たせる。
そこにドノヴァンは、政治事情からアメリカ政府やCIAから何の保護もなく、民間人として独り立ち向かう。
極寒の街角はギャングと衛兵で何処も危険。
アベルの家族だと言ってドノヴァンの前に現れた3人の人物の白々しいこと。
交渉相手だと思っていた相手がすり替わる。その素性も嘘。
三つ巴の思惑の交錯する中で、利害の一致点を目敏く抽出してそこを突く。
その一撃が冴えているかどうかだ。
ここにおいて、成功と失敗は天と地の差となる。
「冷戦」という戦時中の攻防のスリリングで重苦しい物語であった。


アベルの絵は古典的なリアリズム絵画であるが、技量は確かなものであった。
(この精緻で隙のない観察と技量がその対象の精確な把握にとって重要な能力でもあろう。そのチェック作業として絵を描いていたのかも知れない。これがもし表現主義などであれば、本業の諜報活動は破綻するだろう。描く対象が自分の底知れぬ内界となってしまうため)。
肖像画家として充分にやっていけるレベルだが、実際あれ程の腕前だったのか。
ドノヴァンが肖像画をプレゼントにもらっているのだから恐らくそうなのだろう。
ドノヴァンのコーヒーは、常に砂糖2つとミルク入りのネスカフェというのも面白い。
あの交渉の粘り強さと、1対2交換に拘り抜いたところは、この少し自閉的な性格から来ているのか。
(しかしあの逆境にあって、なかなか1対2は打ち出せないものだろう。この押しの強さは、スティーブ・ジョブスをも思い浮かべた。やはり何かをやり遂げる人は少なからずその面は窺えるものだ)。
アベルの言うように「不屈の男」なのか。多分そちらだろう(笑。


最後のアベルが国に連れ戻される時、ハグされず、ただ車の後ろ座席に乗せられたところを心配そうに、グリーニッケ橋を独り離れず見守るドノヴァンの姿にこちらも共振していた。
エンドロールに入る前、家族がドノヴァンがどれほどの重責を担っていたかを少しでも理解できたことにほっとした。
エンドロールの中で、アベルが本当の家族と再会し共に暮らせるようになった事が分かりまたもほっくりした。
音楽も厳粛で品があり、映像にマッチしていた。


やはりハッピーエンドは気持ちが良い。
この成果をジェームズ・ドノヴァンの個人的資質に見るか「アメリカの良心」ととるかは、兎も角、、、。
(アメリカの良心を是非このように感じたい気持ちは、世情から言っても昇まるのだが)。
しかし、やはり国(共同体)ではなく、個人が何が正しいのかをしっかり認識できることが肝心である。
監督の思いは充分に伝わってきた。

せっかく助けたパイロットがその後、ヘリコプター事故で亡くなったというのが、何とももったいない、、、。



関連記事

COMMENT

EDIT COMMENT

非公開コメント

プロフィール

GOMA28

Author:GOMA28
絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
基本的に、日々思うことを綴ってゆきます。悪しからず。
コメント、メッセージ頂ければ嬉しいです。

*当サイトはリンクフリーです。

検索フォーム
ブロとも申請フォーム
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Movie
PC