クリムゾン・ピーク

Crimson Peak
2015年
アメリカ
ギレルモ・デル・トロ監督・脚本
「パンズ・ラビリンス」、「パシフィック・リム」の監督だ。「パシフィック・リム2」は作らないのか?あんな映画をまた観たい!
ミア・ワシコウスカ、、、イーディス・カッシング(小説家の卵、大金持ちの娘)
ジェシカ・チャステイン、、、ルシール・シャープ(トーマスの姉)
トム・ヒドルストン、、、トーマス・シャープ(準男爵で実業家、イーディスの夫)
チャーリー・ハナム、、、アラン・マクマイケル(イーディス昔馴染みの眼科医)
いきなり冒頭で、ベッドに横たわる幼いイーディスのところへ死んだばかりの母の幽霊が「クリムゾン・ピークに気をつけなさい」とおどろおどろしく警告しに来たところで物語は始まる。
なぞかけか、、、。
その経験が余程こころに残ったものか、長じて彼女は霊的体験を元に小説の執筆に専念する。
しかし彼女の作品をまともに評価してくれる人がなかなか現れない。
そんななか、彼女の小説に深い興味を示し賞賛してくれる男性(イギリス人の紳士)が現れた。
パーティーで洗練したダンスを披露し、2人は必然的に恋に落ちる、、、。
主人公の凛とした美しいしなやかさに対し、夫とその姉の背徳的で退廃的なゴシック的雰囲気が物語の基調を作る。
舞台は、屋根の抜け寒々とした如何にも恐ろしげなお城である。(お城に入ったのに雪が舞ってくるのだ)。
何と正統的なゴシックホラーであるか、、、様式美を極めるつもりか。
(海外のお城を買った日本人富豪がメンテナンスで破産寸前というのはよく聞くが、ここは、メンテする余裕がないようだ。わたしがイーディスなら、この様子を一目見たところで離婚して実家に帰る。100%間違いなく)。
荒れ果てた城も家具・調度品やからくり人形の類も凝りに凝っていた。
ミア・ワシコウスカには最初から惹きつけられると思ったら衣装が凄い。
メガネもよかった。(それから父上から貰ったタイプライターも素敵な逸品!)
相手のトーマス・シャープの開発している粘土掘削機もなかなか魅せてくれる傑作だ。
イーディス・カッシングがミア・ワシコウスカのせいか「不思議の国のアリス」の続編~暗黒編にも思えた。
飛んでもなく絢爛なゴシックの国のアリスだが、、、似合う。
これは、霊が人を怖がらせる存在ではなく、少なくとも城の住人にとって、基本的な要素なのだ。
ある意味、彼女らは城そのものを支える根幹の存在であり、哀しい宿命の象徴でもある。
ここで、霊は時と場所を選ばず這いずり回り蠢くが、犬や虫がそうするのと同等の在り方である。
では何がホラーかといえば、、、ヒトの情念~想念であろう。
霊現象もそのなかのひとつの光景か。
そもそもイーディス・カッシングはそれを小説に書いていたはずだ。

演出がかなりの度合いで衣装が果たしていることが解った。(さすがにわたしでも、、、)
ファッションに興味のある人が見ればインパクトは大きいと思われる。
非常に個性を際立たせるエッジの効いた衣装デザインである。
それぞれが、普通に豪華なのではなく、個性的に見事に決まっている。
これをコミカルにすると、アダムスファミリー、、、にはならないな。(いや、なるかも)。
只管、豪奢で怪しく退廃的な映像美に引き込んでゆく作りであり、独特の様式美を構築している。
ストーリーは、その映像を流す為の枠でもあろう。
情念渦巻く特異な愛憎劇であり、クリムゾンピーク(赤粘土)の真紅とドロドロの血と幽霊の赤いボディが雪白に殊更映える。
非常に細やかに、寒い雪空の中に、ひとひらの枯葉に、吹雪に、粘土に、幽霊に、靡くカーテンに、ささくれだった気配、悪意、霊気、殺気、死の予感が転写されてゆく。
ケレン味はなく、意外な展開とかスプラッターで過度な刺激はないに等しい。
(情け容赦ない殺傷シーンはあるが、、、ちょっと見ていて痛い)。
結局、この殺傷劇は基本的に幽霊などとは関係なく、ヒトの哀しい宿命の成せるものであった。
しかし怪しい母の幽霊から「クリムゾン・ピークに気をつけなさい」と10歳くらいで警告されたにしても、それが何のことか分かる状況に置かれなければ気がつくはずもないし、それでは遅い。本当に幽霊は彼女を危険から守る気があったのか?
それが怪しい。
わたしがあの立場でも、まず分かるとは思えない。
そんなその場にならなければわかろうはずもないメッセージではなく、イギリスから来た実業家には関わるなとか言ってもらったほうが、事前に回避可能である。
但し、それではお噺が始まらない、、、
兎も角、映像であった。
キャストもピッタリ・ゴシックであった。

- 関連記事
-
- ブリッジ・オブ・スパイ
- キック・アス
- クリムゾン・ピーク
- 借りぐらしのアリエッティ
- アイアムアヒーロー