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顔のないヒトラーたち

IM LABYRINTH DES SCHWEIGENS LABYRINTH OF LIES

IM LABYRINTH DES SCHWEIGENS LABYRINTH OF LIES
2014年
ドイツ
ジュリオ・リッチャレッリ監督・脚本

アレクサンダー・フェーリング、、、 ヨハン・ラドマン(検事)
アンドレ・シマンスキ、、、トーマス・グニルカ(ジャーナリスト)
フリーデリーケ・ベヒト、、、マレーネ(ヨハンの恋人)
ヨハネス・クリシュ、、、 シモン・キルシュ(画家、アウシュビッツの生き残り)

「嘘と沈黙の迷宮」
こちらでよいはずだ、、、何故ならヒトラーではなく普通の人の共通感覚の問題が問われているのだから。
その隠蔽衝動も含め。

昨日見た映画と対極にある、重厚で稠密な映画であった。
(あの映画が、極めてチャチなものに思えた)。
戦争そしてファシズムに対する本質的な批評力をもった作品であった。

やはり恐ろしいのは、情報のコントロールである。
何よりも情報リテラシーが肝心となろう。
1950年代、法曹界の人間でさえ「アウシュビッツ」を知らないドイツ人が多かった、という事実には本当に驚いた。
この分では、ドイツのように戦後の総括をしていない日本の隠蔽している事実がどれほどのものか、疑わざる負えなくなる。

新米検事ヨハンは、アウシュビッツの真実を知るに付け、上層部の圧力にもめげず正義を追求する(悪を裁く)熱意に火がつく。
初めて任される大きな仕事に意欲をもって、膨大な資料を相手に精力的に取り組む。
主人公は、柵のない「潔白」世代であることも幸いして、アウシュビッツの戦犯の検挙を次々に進める。
彼の奮闘が功を奏し戦後、過去を隠して様々な職に就き、普通の善人となって社会に溶け込んでいる戦犯が炙り出されてゆくのだった。
しかし彼らは皆、戦後忽然と普通の人に変わったのではなく、アウシュビッツにおいても極普通の人であった。
普通の人間達の行った極悪非道で残虐極まりない行為に過ぎなかった事実も彼は確認してゆく。
(それまで彼は、特別な悪人が最悪の犯罪を戦争の名のもとで犯してきたと感じていた)。

さらに彼はナチスと無関係な正義の人間であると信じて疑わなかった父が党員であった事実に深く動揺し、恋人にも当たり散らし彼女を傷つけてしまう。その上、彼の正義の根拠を齎したジャーナリストが戦時中、アウシュビッツにいたという告白をもって、全ての確信と基盤が揺らいでしまう。
何も信じられないと。
誰も彼もが今やナチに見える、、、。

ヨハンは一時、仕事を辞め、絶望して路頭に迷う。
身の振り方も分からず、救いを求めるように、双子の幼い娘をナチスの医者に惨殺され心臓を病む画家シモンを見舞う。
ヨハンはシモンの代わりにアウシュビッツへと、グニルカとともにシモンの亡き娘たちの霊に祈りを捧げに赴く。

アウシュビッツは、歴史を知らなければ、見た限り穏やかな牧草地にしか見えなかった。
ヨハンは、グルニカに「自分も当時兵士であれば、彼らと同じことをしていたかも知れない」。
恐らく初めて自己対象化―解体する。
彼は、それまで自分を一方的に正義であると疑わなかった人間だ。
しかし父や信じた友の背景を知るに及んでアイデンティティが崩壊する。
何も覚束なく、寄る辺ない状態に陥っているヨハンにグルニカは語る。
「罰することを考えるな。被害者とその記憶にだけ思いをはせろ。アウシュヴィッツの裁判が無ければ、そのうちただの牧草地となり忘れ去られてしまうんだ」。

自己解体してからの主人公の姿が清々しい。
(彼はやはりここに来るまで、かなり頭の固い単純な正義を振りかざすだけの男であった)。
彼の表情に迷いは無くなり、、、
実に暖かみのある顔になっているではないか。
誰が何に属していて、それが善か悪かの枠の問題ではない。
誰かを裁く前に、どんな悲劇が起きたのかをはっきり世界に知らしめなければならない。
そして、それを二度と反復してはならない。
(日本はこれをやらなかった為、とても危なくなって来ている)。



収容所の生存者211人が、二度と思い出したくない悲惨な出来事を苦痛を堪えながら語ってゆく。
証言者たちのおかげで、19人の元親衛隊員を起訴し、17人を有罪に持ち込んだ。
しかし、20ヶ月の裁判中に自責の念を表する者はひとりとしていなかったという。
勿論、あのアイヒマンもそうであった。

彼らは命令をより効率的に効果的に実行するため、彼らの最善を尽くしていたに過ぎなかったのだ。



キャスト、演出、音楽全て文句なしの傑作であった。
時間の経つのを忘れて引き込まれた映画であった。

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GOMA28

Author:GOMA28
絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
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