PICKUP
ザ・ミスト
末期の目
美しき冒険旅行
レヴェナント: 蘇えりし者
バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
シャイン
トイレのピエタ
カッシーニ グランドフィナーレ
ゴッド ファーザー
それでも恋するバルセロナ
シチズンフォー  スノーデンの暴露
透明な身体性
森羅万象を描く デューラーから柄澤齊へ
ヴィデオドローム2 ~イスラム国 ~アノニマス
魔術師
ブラック・スワン Black Swan
見えない重力を描く Ⅱ
美の翳りに寄せて
LUCY ルーシー
ミツバチのささやき
娘ふたりと女子美へ☆彡
父 パードレ・パドローネ
写真についてーⅡ
去年マリエンバートで
午前零時の奇蹟(シュル・レアリスム覚醒の時間)
パーフェクト・デイ ~ルーリード ~ローリー・アンダーソン ~スーザン・ボイル
未来派の画家~ウンベルト・ボッチョーニ
Balthus ~ バルテュス展行ってまいりました。
「ゴールドベルグ変奏曲」 バッハ  ~グールド ~P・オトゥール ~ニーチェ
大昔のスケッチ(詩画集のための試作)
すでに世界は終わっていたのか ~ ヒエロニムス・ボスその1
スヌーズレン002
情報リテラシー  ~華氏911 ~不都合な真実
南伸坊「歴史上の本人」
プラトーン
カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

宮廷画家ゴヤは見た

Goyas Ghosts001

Goya's Ghosts
2006年

ミロス・フォアマン監督・脚本
ジャン=クロード・カリエール脚本
ソウル・ゼインツ製作アメリカ・スペイン合作

ステラン・スカルスガルド、、、フランシスコ・デ・ゴヤ
ナタリー・ポートマン、、、イネス・ビルバトゥア/アリシア
ハビエル・バルデム、、、ロレンゾ修道士

「カッコーの巣の上で 」「アマデウス」の監督である。

まさに「宮廷画家ゴヤは見た」である、、、。
よく分かる邦題ではあるが、「家政婦は見た」と何となくダブり居心地が悪いのだが、、、。

映画を観るとき、、、。
映画でしか表せない世界を見事に表出しているものにいつも感動するが、この映画はまさにそれであった。
異端審問がどうとかいうより、最後の場面の恐ろしい何者をも寄せ付けない寂寞感には参った。
主役3人の凄まじい演技にも圧倒される。
ナタリー・ポートマンは毎度のチャレンジ精神が冴え、ひとり実質3役の荒業をやってのけている。ステラン・スカルスガルドのゴヤは、異様にゴヤの「自画像」の雰囲気に似ており確かな説得力があった。ハビエル・バルデムの、、、何と言うか「アマデウス」におけるサリエリのような狡賢い立場もよく演じられていた。

ゴヤというだけあり、ヒエロニムス・ボスベラスケスの作品まで、、、絵がよく見られる映画である。
油絵の例の2枚は言うまでもなく映画用のものだが。(撮影後にどうしたのだろう?Web上に出したらプレミアものだったかも)。
”Natalie Portman”の肖像画などかなりの値がつかないか(笑。(ファンにはきっと売れる!)
ロレンゾ修道士のニヒルな肖像はホントに燃やしたのか?コピーを燃やしたのか、聞いてみたい。
勿論ゴヤの版画が結構映画の中で観られる。
「ロス・カプリチョス」は版画画集でわたしも夢中になって観た方だ。
昔のことだが中学校の美術の先生がゴヤに関して、熱弁を奮って解説・批評してくれた。
(高校ではほぼ受験勉強カリキュラムで面白くも何ともなかったが、中学の授業は拾い物がかなりあった)。
聴力を失ってからの名作のいくつかについて、この映画にも出ていた「マドリード、1808年5月3日」のような政治性の高い傑作には触れず、「着衣のマハ」と「裸体のマハ」の違いなどをとても詳細に語ってくれ、勉強になったものだ。
油絵の美しい女性像(権力者にはかなり辛辣ではあるが)と版画「ロス・カプリチョス(気まぐれ)」などの透徹した写実との対比も面白い。そう「黒い絵」も凄いものだった。(思い出した。後で見よう)。
シニカルで深い闇を孕んだ存在の厚みを感じる人物である。


ここでは彼は、ゴヤの生涯みたいなドラマの主人公ではなく、いつも事態を一歩引いて観察し描きとる側の立ち位置におり、物語のナレーション(超越者)もしている。彼に肖像を描いてもらったイネスとロレンゾの激変する時代に翻弄される果敢ない姿が交錯しつつ淡々と描かれてゆく。

スペイン独自の「異端審問」、ナポレオン率いるフランス軍の進撃(侵略)、スペイン独立戦争、、、。
ここでイネスは、富豪の美しい普通の娘から、豚肉を食事で食べなかったということだけで「異端審問」にかけられる身となる。ゴヤや彼女の父の懇願でロレンゾ修道士が彼女に面会するが、結局ロレンゾの子を身籠っただけで、15年を経てナポレオンの進軍によって牢から出される。彼女にとって時は止まり、ロレンゾを痛ましくも素直に信じ続けているが、理性は消え去っていた。かつての美貌もろとも、、、。
娘アリシアは幼くして教え込まれた異端者としての母の姿をそのまま継承し(または実は、反動形成?でもあろうか)、逞しく生き抜こうとする健かな娼婦となっていた。
策謀と日和見で、聖職者でありながらイネスを汚して捨てたうえに信仰も捨てフランスに逃亡するも、ナポレオンの権威に縋り舞い戻り、自ら復活・強化させた「異端審問」と聖職者を断罪する権威に就く。しかしナポレオンの正体に気づいた民衆によって捕らわれる、、、有り得ない程の激しい人生の浮き沈みを体験するロレンゾというパーソナリティ。
それにしても一体彼は何を求めていたのか。単なる権力か。それがどれだけ覚束無い代物か刑にかけられる時には悟っていたはずだ。きっと群衆の中から、正気を失ったイネスが自分の名前を叫ぶ声を聴いたとき、もうやめようと思ったのだろう。
その光景を高みのバルコニーから笑って眺めている王の並びには何とアリシアがいるではないか。国王付きの将校にでも取り入ったようだ。
何と皮肉なものか。
ここでまた、偽りの悔い改めをして生き長らえても、ロレンゾのその先に見えるものなど既に何もなかった。


彼の屍体を手押し車で運ぶところをイネスひとりが手を握り、付き添ってゆく。
彼女の腕には誰の子供か分からぬ赤ん坊が抱かれている。
(彼女にとっては、その子がアリシアなのだ)。
その後を、無力に打ち拉がれながらも、見守りながら追うゴヤ。

この絶大な重みは、この映画特有のエクリチュールで可能となったものだ。

関連記事

COMMENT

EDIT COMMENT

非公開コメント

プロフィール

GOMA28

Author:GOMA28
日々思うことを綴ってゆきます。
絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ることもあります。
悪しからず。
コメント、メッセージ頂ければ嬉しいです。

*当サイトはリンクフリーです。

検索フォーム
ブロとも申請フォーム
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

QRコード
QR
最新トラックバック