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シラノ・ド・ベルジュラック

Cyrano de Bergerac

Cyrano de Bergerac
1950年
アメリカ

エドモン・ロスタン原作
マイケル・ゴードン監督

ホセ・ファーラー、、、シラノ(近衛騎士)
マーラ・パワーズ、、、ロクサーノ(シラノの従妹)
ウィリアム・プリンス 、、、クリスチャン(ロクサーノの恋人)

恐ろしくよくできた映画であった。(惜しむらくは、最後をもう少しあっさり場面を削って終わらせて欲しかった)。
それにして、この時代の名画は凄い。
見事な恋愛コメディーであった。


恋愛にこれほど詩の才能を求められるとは、平安時代の貴族みたいだ。
彼らの「文」には愛を流暢に語る和歌が添えられ(和歌だけだったり)、その作詩力が大きく響いたという。
こういうのって、結構面白いではないか。
詩だけならわたしも必死に書いてみたい!
ついでに挿絵なんかも描いてみたりして(笑。
かなり凝るだろうな、、、。(相手はさておき)。
いや、自分のことはさておいて。


剣においては天下無双。学問、詩作の才能も敵(政敵)すら認めるほどの、文武両道ぶり。
そのうえプライドが高く、唯我独尊。権力を嫌い、誰にも従うことはしないシラノ・ド・ベルジュラック。
剣での闘いがかなりの尺で数回にわたりタップリ見られるが、最近のアクション映画の銃撃戦などより遥かに迫力がある。
詩の暗唱なども如何にも詩人らしい、、、。

だが、彼にも弱点がひとつ。
ひたすら想い続ける女性がおり、彼女に対しては究極の献身ぶり、というより滅私奉公ではないか(古。
恋愛のひとつの局面はエゴだ、とわたしは思うのだが、、、それは微塵もない。
自分の鼻をことの他、気にしている。
自意識過剰のひとつだ。
自分が過剰に気にするから、周りも気にしてしまう。
「蓼食う虫も好き好き」というし。一端、何かで魅力を感じ好きになってしまえば、まさに「痘痕も靨」である。
実際、彼が劇場で詩を詠みながら大立ち回りをした後、ある女性が忽ちシラノに恋をしているではないか、、、。
自分が端から(鼻から)、女性に相手にされないというのは、単なる思い込みなのだが。


彼女の好きな相手とはいえ、何も恋敵にここまで親身に協力しなくとも、、、。
所謂トリモチ役は遥かに超えている。
シラノ・ド・ベルジュラックも人が良い、とかいうものではなく、、、
もはや、自分をその男と同一視しているレヴェルか。
そう思うが、、、。
これは漢気というにも程がある。
この辺のやりすぎが、かなりユーモアとペーソスに塗れる。
毎日手紙を代筆して戦地から危険を冒して彼女の元に送るとか、、、。
妙に律儀に真面目に熱心にやるほど、、、。

しかもその相手の男、かなりの馬鹿であり協力する値打ちはない。
ただの木偶のぼうである。
彼女に醒めさせるという手もあろうに。
その方が圧倒的に正しいことは分かってはいるが、彼女の幻想と自分のコンプレックスからそれができない。
しかしどうせ、自分が一途に思う相手と結婚する男なら、もう少しましなのを選んでからにするべきだろう。
この男の独力ではロクサーノにすぐに見透かされるのは目に見えている。
メルトダウン―自然消滅だ(爆。

どう考えても詩は自分が詠むべきだ。
言葉はいきものだ。
世界は言葉だ。
他人の詩を詠むとしても、まず自分のものにしてから自分の言葉で詠むしかない。
この二人羽織腹話術は無理。
盛り上がるほど何かのコントに思えてくる(苦。
しかし、このロクサーヌ、闇の中で詩を詠んでいる主がシラノだと、その声から分からぬか、、、?
もしかすると彼女とこの傀儡男は割れ鍋に綴じ蓋か。

しかし、クリスチャンも最後に漢気を示す。
自分を通して彼女はシラノの精神をこそ愛しているのを、ようやく見抜く(遅。
彼はシラノの代わりをかって出て、敵陣の視察に行って帰らぬ人となる。
この展開は予め分かってしまうが、よいところだ。


14年目。いつもより少し遅れてシラノはロクサーヌのいる僧院を訪ねる。
かなり夜も更けている。彼は暴漢の待ち伏せに会い瀕死の重傷を負っていた。
クリスチャンからの最後の手紙を、何故かシラノがその詩の調べにふさわしい詠み方で滔々と暗唱する。
「その声聞き覚えがあるわ!暗いところでよく読めるわね、、、」って彼が手紙は全部書いて、詠んできたって。
最後の最後に気づくロクサーヌも何とも、、、。(あれから14年目である)。

詩を詠みながら崩れるように倒れて死ぬなんて、まったくダンディな漢だ。
結局、悲劇で幕は閉じるが、、、


シラノのこの妥協のない生き様は、大いに見習いたい。


シラノ・ド・ベルジュラックは、やはり根っからの詩人だ。
手紙や愛の台詞作りも妥協を許さず、創作自体が自己目的となる。
(生における姿勢も同様)。
これは、芸術家にとっての必然である。
現実の恋愛を追い越し、究極のイデアを追い求める形になる。

こういうものだと謂うしかない。

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