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メランコリア 神の死

Melancholia001.jpg

宇宙を自己認識するたったひとつの主体が完全に消え失せ、実質いや現実に宇宙は消滅する。
その意識ー知性ー夢とともに。
宇宙を想い描く唯一の精神が神もろとも死滅する。

キルスティン・ダンスト、、、ジャスティン(コピーライター・アートディレクター)
シャルロット・ゲンズブール、、、クレア(ジャスティンの姉)
キーファー・サザーランド、、、ジョン(クレアの夫の富豪の科学者)

Melancholia
すでに”メランコリア”については2度も書いている。
だが、また観てしまった(笑。
「宇宙にはわたしたちの他には誰もいない」わたしも全く同じ考えだ。
誰もいない。
何者も。
「トリスタンとイゾルテ」(ワーグナー)のみが、余りに空虚に荘厳に全編にかかり続ける。
究極の宗教性を覚える。


第一部 ジャスティン

窮屈な田舎の小路を巨大な真っ白いリムジンで乗り付ける。
結婚式披露宴で客を2時間待たせる新郎新婦。
整然としたマリエンバート的庭園に、18ホールのゴルフ場を完備したどうでもよい大邸宅。

あの星は何?
彼女はいち早く気づく。いや身体で感づく。
「あれはアンタレスだよ、、、」

実は、ジャスティンのこころはもう身体に落ち着いていなかった。

豪邸の中は、、、
気の滅入るやり取り。
過剰な芝居がかったやり取り。
ダラダラ続く抱擁。
言葉が淀む。腐っていく、、、。
手順も流れも時間もボロボロに砕け散る。
広告業界にいる彼女―ジャスティンは言葉の世界の人間であるからか、、、
言葉から真っ先に崩壊してゆく事を悟っている。
パーティは、世界は、滅茶苦茶。
エントロピーは増大し続け、、、。

「土地を買ったよ」
(今更何を、、、)。

ジャスティンは書斎の抽象画をすべてブリューゲルなどの画家の絵にすげ替える。
すでに彼女はちゃんと歩くととさえ出来ない。
怖いの、、、。誰より早く事体を恐怖する。
身体が収まりきれない。からだが言うことを聞かない。

ESAもNASAもJAXAまだ、何も確認できないのか、、、
(公表出来ない。それもあろう)。

上司も地位も伴侶も彼女にとってはもう全くどうでもよかった。
エントロピー最大、、、。

「アンタレスが無くなっている、、、」



Melancholia003.gif


第二部クレア

人里離れた場所のために幻想性も昂まる。
「わたし時々あなたがひどく憎くなるの」姉クレアがジャスティンに対し。
これまでの世界ー規範において、そしてこの終末ー事体の受け入れにおいて、、、。

「天体は衝突しない。通り過ぎる」夫の気休めは、不安を駆り立てるばかり。
ジャスティンは送り出されたが戻ってくる。
何処に行けるというのか。
もはや、行くところなど在りはしない。
すでに彼女の感覚は変わってしまっており、味覚も無くなっていた。
とても献身的でしっかりした姉クレアであったが。
周囲も人の世話を焼いている場合ではないことに気が付く。

次第に姉妹の立場は逆転する。
使用人も無断欠勤する。
夫も自殺する。
真相は明かされてゆく。

ジャスティンは、或る夜確信を得た。
巨大な天体「メランコリア」は衝突して地球を呑み込む事を。
わたしたちは完全消滅する。
宇宙を知り感ずるものは何も無くなる。
同時に宇宙は無くなる。
完全な虚無に耐える。
いや主体の消滅における理性ー感情の受け入れ、の問題である。

「他に生命は無いの?宇宙のどこかに。そこに転生は、、、」最後の望みにかけるクレア。
「わたしには分かる。生命は地球にしか存在しない」ジャスティン。
「他には無いの」
彼女はとりすがろうとする全ての幻想を否定する。

クレアは激しく動揺し、子供を抱き狼狽えるが、ジャスティンに諭され、子供とジャスティンが木の枝で組んだシェルターに入る。(もはや何の象徴性も持ち得ない)
取り乱しながらも、受け入れようとするクレア。
しかし、迫り来る恐怖は抑えられるものではない。絶望に顔を歪ませる。
ジャスティンは完全に達観して静かな境地に入っている。
父にソックリな幼い息子もすでに目を閉じ、、、

3人で手を繋いで生命―知性の完全な最期を迎える。


Melancholia002.jpg



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