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空気人形

kuuki001.jpg

2009年
是枝裕和監督
業田良家原作

奇跡的な傑作!
この映画に出会えたことは、幸運であった。
空気人形こそ本当のエイリアンだった!

~こころをもつことは、切ないことでした~
これは恐らく、「こころについてのこころ」をもってしまったことだ、、、。
嘘をついてしまったことに戸惑う、、、そんなこころ
(「原生疎外」に対する「純粋疎外」、、、吉本隆明流に言えば)。
こころはだれでももっているが、、、。

ペ・ドゥナ、、、のぞみ(空気人形)
板尾創路、、、秀雄(空気人形の持ち主)
ARATA、、、純一(レンタルビデオ店員)日曜美術館でお馴染み、、、
オダギリジョー、、、園田(人形師)

シリウス~プロキオン~ベテルギウス
あなたもあるとき、わたしのための風だったかも知れない。

この詩を知っているか、、、老人が語りだすがはじめのひとことで詰まる。「命は、、、」
のぞみがその後を引き継ぐ、、、
「命は、、、そのなかに欠如を抱き、それを他者から満たしてもらうのだ
自分だけでは完結できないようにつくられているらしい
しかし互いに欠如を満たすなどとは、知りもせず知らされもせず
ただばらまかれている無関心の間柄
世界とは多分この他者の総体、、、」(こんな感じだったか、、、)

人形は「世界」を持ってしまう、、、まさにこころを持つとは、他者のいる世界を持つこと
(実際、わたしの近隣にも他者を感知する感覚の欠如した表向きはヒトがゴロツイテいる)

わたしの世界観は、のぞみのものとは根本的に違うが
世界はわたしにとって、ただ過剰を求めて押し広がるものだ
ただひたすら過剰を求めて
耐え難いほどシンプルに(膨張宇宙のように)

それは取り敢えずよいとして、、、

「だれかの代わりでもいい」
のぞみは恋する
普通の女の子より慎ましく健気に
純一は応える
君にしかできないことをお願いしたい
わたしにしかできないこと?

「私の中は空っぽなの」のぞみ
「ぼくだってそうさ」純一
「あなたとわたし初めて遭った時から似ていると思った」
のぞみの語る空っぽさと、純一の実存としての空っぽさの表現が、物理イメージとして食い違った
広場で出逢った老人も心配するな、周りも空っぽな人間ばかりじゃと語っていた
のぞみは、ほとんどみんなが空気人形であると信じた

君の空気を抜きたい
たしかにそれしかない
しかし彼女はそのまま受け取ってしまう
彼女も純一がしてくれたように、彼の空気を抜き、自分の気―愛で彼を満たしてあげたかった
彼女は純一の詮を探すがどこにも見当たらない
口から息を一所懸命入れるが入ってゆかない
「わたしの息は入らなかった」
彼女が空気を抜こうとナイフで切った彼のお腹からは血が止まらなかった

ヒトと人形の違いが「燃えるゴミと燃えないゴミの違い」というのは、謂い得ている(笑

仕方なくのぞみは純一の亡骸をビーニール袋に入れて燃えるゴミに出す
彼女は、自分の空気を抜きつつ、燃えないゴミ置き場に横たわる
過食症の若い女がマンションの窓から彼女を見おろし「綺麗!」とため息をつく


「戻ってきたときは皆、違う顔をしているんだよ、最初はおんなじだったのに」(園田)

これ、以前読んで知っていた
上野オリエント工業にコムアイ(水曜日のカンパネラ)が訪ねた際に、製作担当者(この映画では園田)が、ラブドールは、「お客様のもとで物質的なものから精神的な存在に変化するということは自然なことかなと。有史以前から偶像崇拝は世界中で様々な形で存在していました。山であったり、その土地であったり、動物であったり、樹木だったり、岩だったり。マリア像も仏も土偶も、それぞれ定義として括るには難しい部分がありますが、そこに込められた意味や想いには近いものがあったのではないでしょうか。この『想い』の部分に於いてドールの存在を同列に考えることも可能かと思います。」と語る。
実に感慨深い。この映画を観てからであると。

コムアイも「ここの子たちが、どこか寂しそうに見えるのはショールームから出て誰かに嫁にもらわれたいのかも。勝手だけど、天命を全うさせてあげたいって思いました。ラブドールってもはや一つの性別のように思えますね。柔らかくて、すーっと人に馴染むことのできる、人間にはできない最強の人格。今日、改めて彼女たちに会って、知らない人と親密な会話を交わしたような、そんな気分になりました」と返す。一つの性別(新たなジェンダー)とは流石コムアイ炯眼である。しかしのぞみの場合、エイリアンになったとも言える
本当に「ことば」の僅かなイメージ―想像力のズレであった

「その子と一緒に時間を過ごした時は、見守られている感じがして、彼女となら同居もできそうだなって思った。本当の女の子だったらいろいろ気になることが出てくるんだと思うんだけど、この子ならわかってくれるって安心感と、放っておいてくれる信頼感が不思議とありましたね」
のぞみは、途中からそれを自ら演じるしかなくなる
秀雄が元の人形に戻ってくれ、俺はヒトというもんが面倒なんや、と懇願されるが可逆性はない

こころについてのこころをもってから
彼女は引き裂かれて生きることになった

「お帰りなさい」
「きみが観た世界は哀しいものだけだったかい
美しいきれいなものも少しはあったかな?」
園田が聞く

頷く彼女に彼は「いってらっしゃい」と寂しげな笑顔で送り出す
「行ってきます」

「作ってくれてありがとう」
「こちらこそありがとう」


彼女はしかし「天命を全うする」ことはできなかった
彼女はもはや動けぬ体で、ごみ溜めから息を吐く
精気、精霊、プネウマ、スピリット、エスプリ、ガイスト、、、やはり「魂」と呼びたい
それを彼女の認識した世界に向けて吐き続ける
そのまま萎んでしまうまで、、、

最期に純一にしてあげられなかったことを
誰も気づかない世界に向けて
したかった
のか


これほど胸の締め付けられる、重量感を感じない映画はこれまで観た事なかった
重力値の低い場所で極めて稠密な質量を抱え込んだ感覚を味わった

のぞみのペ・ドゥナが余りに儚く美し過ぎるエイリアン(空気人形)であった
「クラウドアトラス」の彼女もよかったが、こちらの方が圧倒的に抽象的でリアルであり、限りなく切ない
ARATA(井浦 新)のナイーブで篭った演技も優しくフィットしていた

kuuki002.jpg




他のキャストも適役かも知れないが、余りに癖が強すぎると感じた
最近、やたらと柄本佑に出逢うのが、気になる

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GOMA28

Author:GOMA28
絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
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